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羽虫の羽音は聞こえない。
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ミルフィリアに虐められている、と嘘を並べたのはつい最近。
今までなら、誰も疑わずミルフィリアを陰で罵倒し、孤立させていた。
だが、今は誰一人自分の言葉を信じてくれないどころか、嘘を吐いてる自分は孤立させられている。
「アタシはヒロインなんだから……。悪役令嬢みたいに孤立させられるなんておかしいわ」
「気持ち悪い奴だな。アドン様、そばに居ると嫌な臭いが移りますよ」
学園の騎士科の下働きをしているノドスが目をすがめながら、エリスからアドンを遠ざけた。
「ノドス。アンタだってアタシを守るって何度も言ってたじゃない」
「はっ、誰がお前なんか。寝言は寝てる時に言え。こいつ、頭の中が完全にイカれてる。アドン様、側に居ると同類に思われますよ」
短く切り揃えられた茶色の髪が怒りの為に逆立って、金茶の目は肉食獣のような獰猛さでエリスを威嚇している。
「アドン、ノドス。廊下で騒がしい」
アルレスとオスカーがゆったり現れた。
「アルレス聞いて」
「煩い羽虫は無視しろ、と言っておいたが、聞いていなかったのか?」
「申し訳ありません」
アルレスに泣きつこうとしたエリスの存在など完全に無視して、アルレスは怒りに顔を赤くしている2人の方を見て、解散しろ、と手を振った。
「あら、羽虫なら、潰しても良いかしら?」
今まで居なかった筈なのに、アルレスの言葉に割り込んでくるものがいた。
「……メフレス・パズス大公爵。いつ此方に?」
アルレスは、少し驚きながら目の前に立つ、自分よりも背の高い男の名を呼んだ。
「さっき。アーモンが楽しいから来いって何度も言うから、遊びに来たの」
金色の猫の様な目に、濃い紫色の髪は片方で結ばれ、緩いカーブを描きながら腰あたりまで伸ばしている。
姿はほぼ人間と変わらないが、尖る耳で魔族であるとすぐに分かる。
「メフレス・パズス大公爵。他の者が困惑してますので、出来れば事前にご相談ください」
アルレスが丁寧な対応をしているから、息が出来ないほど色気を撒き散らすメフレス・パズス大公爵が誰なのか、その場に居る者達はだいたい理解したが、エリスだけはまるで理解していない。
「メフレスって言うのね。アタシ……」
エリスがメフレスに擦り寄ろうとしたが、メフレスもアルレスもエリスを見ないで会話を続ける。
「え~、アーモンは好きに出入りしてるのに」
メフレスは、妖艶な美女の様に拗ねて身体をくねらせているが、かなりがっしりした体型の男なのだ。
怒りに顔を赤くしていた2人も、突然現れたメフレスの、態度と容姿の差に目を丸くしている。
「アーモンはトーラス侯爵令嬢の友人ですから」
「なら、あたしも彼女のお友達になるわ」
メフレスの背筋が寒くなる程の美貌が、へにゃっと緩んだ。
「それはいいですね。トーラス侯爵令嬢も喜びます」
アルレスも、柔らかな笑みを浮かべて頷き、アドン達を連れ、メフレスをカフェへと案内した。
「なんであんな美形まで、あの女に」
アルレスだけでは無い。
美形が現れた後、あの場に居た者全てに話し掛けても無視され、1人取り残されたエリスが、怒りに任せて地団駄を踏んでも、誰も声を掛けない。
それどころか、すぐ側でエリスが騒いでいるのに誰一人、エリスの事を気にしないで廊下を行き来し、友人同士で笑い合っている。
「なんでアタシを誰もチヤホヤしないのよ」
話し掛けないの、と言うのではなくチヤホヤしろ、と言う者を誰が友人にするだろうか。
自分が間違った選択をしていることにエリスはまだ気が付いていない。
今までがあり得ない状況だ、と言うのが分からないのだ。
「絶対に殺してやる」
唇を噛み、目を吊り上げる姿は、愛らしく保護欲を擽ぐる存在と対極の、魔女の様相だ。
今までなら、誰も疑わずミルフィリアを陰で罵倒し、孤立させていた。
だが、今は誰一人自分の言葉を信じてくれないどころか、嘘を吐いてる自分は孤立させられている。
「アタシはヒロインなんだから……。悪役令嬢みたいに孤立させられるなんておかしいわ」
「気持ち悪い奴だな。アドン様、そばに居ると嫌な臭いが移りますよ」
学園の騎士科の下働きをしているノドスが目をすがめながら、エリスからアドンを遠ざけた。
「ノドス。アンタだってアタシを守るって何度も言ってたじゃない」
「はっ、誰がお前なんか。寝言は寝てる時に言え。こいつ、頭の中が完全にイカれてる。アドン様、側に居ると同類に思われますよ」
短く切り揃えられた茶色の髪が怒りの為に逆立って、金茶の目は肉食獣のような獰猛さでエリスを威嚇している。
「アドン、ノドス。廊下で騒がしい」
アルレスとオスカーがゆったり現れた。
「アルレス聞いて」
「煩い羽虫は無視しろ、と言っておいたが、聞いていなかったのか?」
「申し訳ありません」
アルレスに泣きつこうとしたエリスの存在など完全に無視して、アルレスは怒りに顔を赤くしている2人の方を見て、解散しろ、と手を振った。
「あら、羽虫なら、潰しても良いかしら?」
今まで居なかった筈なのに、アルレスの言葉に割り込んでくるものがいた。
「……メフレス・パズス大公爵。いつ此方に?」
アルレスは、少し驚きながら目の前に立つ、自分よりも背の高い男の名を呼んだ。
「さっき。アーモンが楽しいから来いって何度も言うから、遊びに来たの」
金色の猫の様な目に、濃い紫色の髪は片方で結ばれ、緩いカーブを描きながら腰あたりまで伸ばしている。
姿はほぼ人間と変わらないが、尖る耳で魔族であるとすぐに分かる。
「メフレス・パズス大公爵。他の者が困惑してますので、出来れば事前にご相談ください」
アルレスが丁寧な対応をしているから、息が出来ないほど色気を撒き散らすメフレス・パズス大公爵が誰なのか、その場に居る者達はだいたい理解したが、エリスだけはまるで理解していない。
「メフレスって言うのね。アタシ……」
エリスがメフレスに擦り寄ろうとしたが、メフレスもアルレスもエリスを見ないで会話を続ける。
「え~、アーモンは好きに出入りしてるのに」
メフレスは、妖艶な美女の様に拗ねて身体をくねらせているが、かなりがっしりした体型の男なのだ。
怒りに顔を赤くしていた2人も、突然現れたメフレスの、態度と容姿の差に目を丸くしている。
「アーモンはトーラス侯爵令嬢の友人ですから」
「なら、あたしも彼女のお友達になるわ」
メフレスの背筋が寒くなる程の美貌が、へにゃっと緩んだ。
「それはいいですね。トーラス侯爵令嬢も喜びます」
アルレスも、柔らかな笑みを浮かべて頷き、アドン達を連れ、メフレスをカフェへと案内した。
「なんであんな美形まで、あの女に」
アルレスだけでは無い。
美形が現れた後、あの場に居た者全てに話し掛けても無視され、1人取り残されたエリスが、怒りに任せて地団駄を踏んでも、誰も声を掛けない。
それどころか、すぐ側でエリスが騒いでいるのに誰一人、エリスの事を気にしないで廊下を行き来し、友人同士で笑い合っている。
「なんでアタシを誰もチヤホヤしないのよ」
話し掛けないの、と言うのではなくチヤホヤしろ、と言う者を誰が友人にするだろうか。
自分が間違った選択をしていることにエリスはまだ気が付いていない。
今までがあり得ない状況だ、と言うのが分からないのだ。
「絶対に殺してやる」
唇を噛み、目を吊り上げる姿は、愛らしく保護欲を擽ぐる存在と対極の、魔女の様相だ。
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