【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月

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害虫駆除に来たのは。

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「あんたねー」

ミルフィリアが珍しく1人で裏庭を歩いていたら、突然エリスが怒鳴りつけたて来た。
ミルフィリアは優雅に会釈をし、足を止めてエリスを見るが、声は掛けない。

「あんたがバグだって知ってんのよ」

エリスが何を言いたいのかまるで理解は出来ないが、ミルフィリアはそれでも静かにエリスを見ている。

「なに、バグのくせにお高く止まってんのよ。シナリオが崩れるから、さっさと役に戻りなさいよ」

手を振り上げ唾を飛ばし叫ぶ姿は、淑女とは思えないほど無様だが、それを忠告する義理は無い。

だが、いい加減無作法なエリスの前に立っているのも気分が滅入りそうなので、どうしようか?と思っている所に

「トーラス侯爵令嬢、大丈夫ですか?」

と、叫ぶ声と丸い物体が背後から飛んで来た。

「トーラス侯爵令嬢。此方に」

突然の事にミルフィリアが目を丸くして振り返ると、バーニスと婚約者のリリアンがトマトを抱えて走ってきた。

「バーニス・ロウ子爵令息にリリアン・マルケ男爵令嬢」

学年は違うが、仲のいい2人のことはミルフィリアの耳にも入っている。

「良かったです。お怪我は?」
「大丈夫です」

リリアンが心配そうにミルフィリアを見てから、無事を確認してホッと息を吐いた。

2人はあっという間にミルフィリアをエリスから遠ざけ、2人の背後に立つバーニスはトマトを持って威嚇していた。

ミルフィリアはすぐにリリアンに庇われ見ていなかったが、バーニスは走りながらトマトを見事にエリスへ命中させており、顔や制服がトマトまみれになっていた。

「助けて頂いたのにこう言うのも何ですが、食べ物を粗末になさらないで」

完全にエリスが見えなくなってから、ミルフィリアがぽそっと呟いた。

「あっ、これは病気に罹り腐ってて食べられない物なので大丈夫です」
「肥料にもできず、害虫駆除に使うくらいしか無かったので、食べ物ではありません」

気持ちがいいくらい、2人ともきっぱりと言い切った。

その後、バーニスはアルレスに知らせる為、別行動となったが、すぐにユーリア達が駆け付けた。

「マルケ男爵令嬢。これが噂のトマトですのね」

エリスの事を口にしたくないユーリア達が口々に新品種のトマトの話を始めた。

「これは廃棄処分の物ですが、品種改良した物は温室で育ててます。数は少ないですが、今までの物より皮が薄く味は甘いものです。生でも食べられます」

ユーリア達の心情を理解したリリアンもトマトや温室の事を話し始めた。
農業に詳しくないユーリア達は曖昧な笑みを浮かべたが、ミルフィリアはがぜん食い付いた。

「素晴らしいことです。温室はまだ王都では見かけませんが、寒冷地の領地でも暖かい地域の野菜などを育てられるのでしょ」
「はい、そうなんです。今はまだ維持するのにかなりの魔力が必要ですが、冬に飢える事が無くせるかもしれない施設なんです」

ミルフィリアとリリアンの楽しげな声が品種改良などかなり専門的な知識が必要な会話で、分かる者はこの場に居ないが、2人の楽しげな様子をユーリア達はニコニコ笑って見詰めていた。

「ミルフィリア様。そろそろ戻りませんと、授業に遅れますわ」
「まぁ、もうそんなに?マルケ男爵令嬢、いえ、リリアン様。有意義な時間をありがとうございます。それと……」
「これは食べられないもので害虫駆除の件は、この国のものとして当然の行為ですので」

リリアンがミルフィリアに名前を呼ばれ頬を染めて喜んでいたが、害虫駆除、に対しては凛とした態度でカーテシーをした。

「害虫駆除……。後でお話しを伺ってもよろしいかしら?」

ユーリアの目が鋭くなる。

「勿論です。では、失礼します」

リリアンが先に輪から離れると、ミルフィリア達も教室に向かった。
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