［完結］私、物語りを改竄します。だって、女神様が全否定するんだもん

我らの主人が幸せであれば

「ケヴィン、お前はアデリーン様に恋心を持たなかったのか？」

王家の断罪を傍で見ているケヴィンにルーファスが話し掛けた。

ルーファスの疑問にケヴィンはキョトンとした顔をしながら少し考え込む仕草をした。

「全く持たなかったと言ったら嘘になるけど、一生の主人として敬愛はずっと捧げている」

初めて出会った日からアデリーンはケヴィンにとって敬愛する主人だった。
淡い思いは何度も胸を焦がしたが、敬愛する気持ちは薄れる事なくケヴィンの心を満たしていた。

だからステラからの思いを知り、ケヴィンのアデリーンへの淡い思いは消え、ステラとの未来に心が動いた。

「そう言うルーファスは？」
「俺？最初からこの人を好きになったらまずいって思ってた」

ルーファスの返事にケヴィンは眉をひそめたが

「だって綺麗すぎるし、ちょっと話しただけで俺の事理解するなんて神様みたいだろ。恋するなんて無理さ」

ルーファスと初めて会った日の事はケヴィンも覚えている。
花弁が舞い散る中、笑っていた。

「お嬢様には花がお似合いだから」
「花より綺麗なのにか？」
「花を見るお嬢様は更に美しいだろ」

惚気にも聞こえるケヴィンの返事にルーファスは豪快に笑った。

「筋金入りの溺愛だな」
「溺愛、か。それはダグラス王弟殿下に相応しい言葉だよ」

アデリーンに微笑みかけているダグラスの姿を見ながらケヴィンは笑い

「ちょっと独占欲強めだけどな」

と、付け加えた。

「なんにしても、我らの主人が幸せであれば文句は無いよ」

殺伐としている王宮で唯一、のんびりした会話は途切れる事は無かった。