【完結】黄金の檻、緋の鎖

comacomainu

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秘密

4-1.

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サンザは、レオを抱いたその日のうちに妻のもとへ通うことを、いつしか日課のように続けていた。
そんなある夜に、ふと気がついた。
豊満な妻の身体に比べ、レオの身体はあまりにも細かった。
細い、というよりあの年頃にしては痩せすぎている。
その事実が、なぜ今まで気にならなかったのか、不思議なくらいだった。

初めて出会ったあの日、レオの腕や首に黒あざがいくつも浮かんでいたことを思い出す。
その記憶がようやく鮮明に蘇り、今頃になってようやく、レオというひとりの少年へと興味が向いた。

翌日、執務の合間にサンザはハーランを書斎に呼びつけ、レオの素性を問いただした。
ハーランは一瞬だけ躊躇うように口をつぐんだが、やがて観念したように答えた。

「……あれは、酒乱の父親から日々暴力を受けています。母親は身体が弱く、働けるのはレオひとり。朝から晩まで働かされているようです」

サンザは深く息をつく。あの痩せた身体も、あざの理由も、ようやく腑に落ちた。

「そうか。では、レオを後宮に住まわせるわけにはいかないか?」

あまりに自然な口調で告げたため、ハーランは思わず顔を上げた。

「殿下、レオは身分の低い貧困層の者です。それは、さすがに……」

「だが、呼び出す頻度はこれ以上減らせん。いずれ存在は周囲に知られる。ならば、目の届くところへ置いておきたいのだ」

サンザの言葉に、ハーランはいよいよ眉をひそめた。

「どうしてそこまであの者にこだわられるのか、理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

サンザはそこで初めて言葉に窮した。
これは自分にとってどう取り繕っても醜聞にしかならない告白になる。

「…レオを抱いたあとの高揚の名残りがなければ、妻を抱けないのだ」

ハーランの瞳が驚愕に大きく見開かれた。
意味を理解したものの、言葉が出ないらしい。
しばらくの間、沈黙が重く落ちた。
やがて彼は静かに目を伏せて、深く首を垂れた。

「……そのような、やむを得ない事情がおありなら、後宮の離れに部屋を用意いたしましょう。誰の目にも触れぬよう、内密に手配いたします」


*****

それから、ハーランはレオを連れ去るための巧妙な嘘を用意した。

「士官用宿舎の下働きをしてもらいたい」
「衣食住は保障する。給金も出る。許可を得ればいつだって家に帰れる」

レオの両親にはそう説明した。
手土産の高級な酒をちらつかせ、言葉巧みに懐柔して、遂にはレオを連れ去ることに成功した。

レオは後宮という美しい檻に閉じ込められた。
訪れるのはサンザと、事情を知っているハーランとその部下、そして数人のメイドだけだ。

「母さんが心配なんだ! どうか家に帰らせてください!」

レオがすがりついて懇願しても、サンザは離さなかった。

「お前は私に幸運を連れてくる。我が国の繁栄のために、ここにいろ」

サンザが淡々と繰り返す言葉は、レオにとってまるで呪詛のようだった。



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