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愛が深いほど
9-1.
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サンザは不眠が続いていた。
夜ごと浅い眠りの中で何度も目を覚まし、そのたびに胸の奥に沈む焦りが湧き上がってくる。
眠れぬ理由を分かっていながら、ままならない苛立ちがちりちりと火の粉をあげ、ただ無意味に暗い天井を睨みつけるしかなかった。
何をしてもうまくいかず、心は荒れ果てていた。
王妃や側室への渡りもひと月以上途絶え、彼女らの顔を思い浮かべても、胸がひとつも動かず、通う気力すら湧かなかった。
城内では「陛下は体調を崩されているようだ」と噂が囁かれ、その空気は侍従たちのぎこちない動きや、遠巻きに様子を窺う視線となってサンザにまとわりついた。
そんな折、側近から「レオを見つけた」と報告が入った。
枯れきった胸に、久々に熱が灯った。
心臓が自分の意思とは関係なく脈を早め、手元の文書の文字が滲んで見えた。
会える。触れられる。声を聞ける。
それだけで生き返ったような錯覚すら覚える。
自ら迎えに行こうと早馬を用意させていたまさにその時、今度は「見失いました」との続報が届く。
サンザの中で激しい怒りが膨れ上がる。
どうして消える。
どうして逃げる。
なぜ、お前は私をこんなにも翻弄する。
帰城したハーランは、甲冑を鳴らして床に跪き、続けざまにサンザに衝撃を与えた。
「レオが……媚薬を使って陛下に取り入っていた可能性がございます」
重い沈黙が落ちた。
失望はなかった。怒りもなかった。
ただ――思った。
だからどうした、と。
もしそれが真実だったとして、何が変わるというのか。
レオがいる。それだけで自分がどれほど救われたかを、誰にも理解させる気などない。
レオがたとえ百の策を弄していたとしても、自分が欲するものはただひとつだ。
「陛下……おそらくレオは、陛下を媚薬を用いて惑わせて――」
ハーランの言葉を遮るように、サンザは低く、嘲るように呟いた。
「惑わせただと? 笑わせるな。あれは……私のものだ」
憎いのか、愛おしいのか。もはや判別もつかない。
ただひとつ確かなのは――抱きしめたい、会いたい、その想いだけだ。
焼け焦げるほどに渇望している。あの身体を、あの温度を、自分だけのものにしたい。
あれは私だけのものだ。
苦しみは増すばかりだった。
王である自分に、これほどの焦燥と渇きを与えるレオを、愛しながらもひたすら憎んでいた。
そんな矛盾を抱えさせるあの存在を、どうしようもなく求めてしまう自分が、なによりも憎かった。
夜ごと浅い眠りの中で何度も目を覚まし、そのたびに胸の奥に沈む焦りが湧き上がってくる。
眠れぬ理由を分かっていながら、ままならない苛立ちがちりちりと火の粉をあげ、ただ無意味に暗い天井を睨みつけるしかなかった。
何をしてもうまくいかず、心は荒れ果てていた。
王妃や側室への渡りもひと月以上途絶え、彼女らの顔を思い浮かべても、胸がひとつも動かず、通う気力すら湧かなかった。
城内では「陛下は体調を崩されているようだ」と噂が囁かれ、その空気は侍従たちのぎこちない動きや、遠巻きに様子を窺う視線となってサンザにまとわりついた。
そんな折、側近から「レオを見つけた」と報告が入った。
枯れきった胸に、久々に熱が灯った。
心臓が自分の意思とは関係なく脈を早め、手元の文書の文字が滲んで見えた。
会える。触れられる。声を聞ける。
それだけで生き返ったような錯覚すら覚える。
自ら迎えに行こうと早馬を用意させていたまさにその時、今度は「見失いました」との続報が届く。
サンザの中で激しい怒りが膨れ上がる。
どうして消える。
どうして逃げる。
なぜ、お前は私をこんなにも翻弄する。
帰城したハーランは、甲冑を鳴らして床に跪き、続けざまにサンザに衝撃を与えた。
「レオが……媚薬を使って陛下に取り入っていた可能性がございます」
重い沈黙が落ちた。
失望はなかった。怒りもなかった。
ただ――思った。
だからどうした、と。
もしそれが真実だったとして、何が変わるというのか。
レオがいる。それだけで自分がどれほど救われたかを、誰にも理解させる気などない。
レオがたとえ百の策を弄していたとしても、自分が欲するものはただひとつだ。
「陛下……おそらくレオは、陛下を媚薬を用いて惑わせて――」
ハーランの言葉を遮るように、サンザは低く、嘲るように呟いた。
「惑わせただと? 笑わせるな。あれは……私のものだ」
憎いのか、愛おしいのか。もはや判別もつかない。
ただひとつ確かなのは――抱きしめたい、会いたい、その想いだけだ。
焼け焦げるほどに渇望している。あの身体を、あの温度を、自分だけのものにしたい。
あれは私だけのものだ。
苦しみは増すばかりだった。
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そんな矛盾を抱えさせるあの存在を、どうしようもなく求めてしまう自分が、なによりも憎かった。
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