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渡会が黙りつづけていると、非難めいた口ぶりになってしまったかと焦ったようで、徳村は渡会の額に自分の額を擦りつけてきた。
「いや、俺も悪かった。俺もお前とのこと、実は本気じゃないと思ってた。お前と別れる直前になるまで、自分の気持ちがはっきり見えなかった。ただの、いつでもヤレる都合のいい奴としか考えてなかった。でも、お前が他の誰かと抱き合うのかと思うと腹が立ってしょうがなかった。お前は俺のものだって、むかついてむかついて……」
なあ、と甘えた声で徳村が囁く。
「お前、大学、今年諦めろよ」
「……な、なんで突然…」
顔を俯け、逡巡した素ぶりを見せた徳村が、意を決したように伏せていた目を開いた。
「俺は就職決まって一人暮らしをするんだ。だからお前、一年浪人して、俺と暮らせ。そして来年、本命の大学を受けろ」
驚いてぽかりと口を開く渡会を横目に、徳村は続けた。
「離れてるとやきもきして勉強に身が入らねえけど、一緒に暮らせば俺の浮気を監視できるし、勉強にも集中出来るだろ。俺にしたっていつでもお前に触れるし、浮気防止に繋がるかもしれないし。いい案じゃん?」
「だ、だって、俺、私立の大学に願書……」
「お前が行きたいのは国公立だろ。側にいて応援してやるから、行きたいとこに行けよ。後悔したくねえだろ」
側にいて、応援してやるーー
夢の中にいるようだった。一生覚めないで欲しい幸せな夢。だけど、これが夢じゃなくて現実だと教えてくれたのは、夢の気分を味わせてくれた当の徳村だった。
徳村の手が背中をゆっくりと下り、双丘を下から上へと撫であげた。
「な。悪い、やっぱ我慢出来ないから、やらせて?」
申し訳なさそうに詫びるその姿に、怒るより笑いが出てしまった。渡会はぐずぐずになった顔を徳村の胸に押し付ける。
そして自分を特別だと言う男の首に手を回した。
「昌弥……」
呼ぶと徳村は渡会の耳に唇を近づけた。
「お前に名前を呼ばれると、暴走しちまいそうになる。殴っちまって悪かったな。痛かったろ」
「平気だ」
「口、切れたんだろ。痣にはなってねえみたいだけど」
「これくらいどうってことない」
徳村の指が尻の狭間に滑り込み、窄まりをくすぐるように撫でる。
さっきまで存分に弄られていたそこは柔らかく、徳村の指を抵抗なく飲み込んでいく。
一度に指を二本埋め込まれても、痛みは極わずかさえもない。
三本に増やされた指が円を描くようにゆっくりと動かされる。渡会の身体の中を掘り起こすように抜き差しされ、くちゅくちゅと湿った音がするのは、渡会の羞恥を煽るために徳村がわざとしているからだ。
「ゴムは……」
「いらない」
「でも……」
「今日は直接お前を食べるんだよ」
わがままな子供のように甘えた声で徳村は言う。
湿った赤い髪を撫でると、徳村は渡会の右膝の裏に手を入れて、高く持ち上げた。
持ち上げられた腰をぐっと落とされた瞬間、ズンと身体の奥底に徳村のものが打ち込まれた。
太く熱いそれが突き入れられた衝撃に、渡会はしがみついた男の首に顔を埋めて高い悲鳴を上げた。
「ひっ、あ、ああ、ああ……っ」
声を殺せない。今、徳村の家族の誰かが浴室の前を通ればきっと気付かれてしまう。
二人の腹に擦られて、渡会の性器が硬度を増す。触れられる前にイってしまうかもしれない予感がある。
こんな荒々しいセックスは今までされたことがない。
いつだって徳村からは余裕を感じていたのだ。
それなのに今の徳村はセックスを楽しむ余裕などまるでなく、初めてのセックスに溺れる少年のように、渡会の身体をひたすら貪欲に貪っている。
「ま、さや、昌弥……」
男が刻むリズムは次第に早まってきている。
キスが欲しい、そう思ったと同時に、渡会の心が届いたかのように徳村の唇が雨のように降ってきた。
「あ、はあ……いく、いく、勇司…っ…」
男の欲望に濡れた掠れ声を耳にして、渡会は泣きながら微笑んでいた。
徳村が初めて自分の名前を口にした。
なんてぞくぞくする声で俺の名前を呼ぶんだろう。
俺の中でいって、いって……
渡会は徳村の頭をぎゅっと抱き締める。
熱い飛沫が身体の奥深くで放たれるのを感じる。ドクドクと徳村が自分の中に流れ込む。
それとほとんど同時に、渡会も絶頂を迎えた。
弾む呼吸を整えながら、どちらからともなく唇を重ね合わせていた。
顔をほんの少しだけ離して、額をぶつけ、鼻先を擦りあわせて、また唇を甘く噛む。
ーーああ、堂々巡りだ。
それでも、戻りたい場所がここしかないと思ってしまった時点で、自分は同じスタート地点にまた立たされているのだと、渡会は気づいている。
徳村が渡会の頭に頬をすり寄せてくる。広い背中に両手を回しながら、渡会の頭に、ふとひとつの考えが浮かんだ。
春に新しく買うベッドは、ダブルベッドひとつにしよう。
そうすれば、浮気なんかきっと出来ない。
ーーそんな風に意地悪く言えば、いったい徳村はどんな顔を見せてくれるだろうか、と……
END
「いや、俺も悪かった。俺もお前とのこと、実は本気じゃないと思ってた。お前と別れる直前になるまで、自分の気持ちがはっきり見えなかった。ただの、いつでもヤレる都合のいい奴としか考えてなかった。でも、お前が他の誰かと抱き合うのかと思うと腹が立ってしょうがなかった。お前は俺のものだって、むかついてむかついて……」
なあ、と甘えた声で徳村が囁く。
「お前、大学、今年諦めろよ」
「……な、なんで突然…」
顔を俯け、逡巡した素ぶりを見せた徳村が、意を決したように伏せていた目を開いた。
「俺は就職決まって一人暮らしをするんだ。だからお前、一年浪人して、俺と暮らせ。そして来年、本命の大学を受けろ」
驚いてぽかりと口を開く渡会を横目に、徳村は続けた。
「離れてるとやきもきして勉強に身が入らねえけど、一緒に暮らせば俺の浮気を監視できるし、勉強にも集中出来るだろ。俺にしたっていつでもお前に触れるし、浮気防止に繋がるかもしれないし。いい案じゃん?」
「だ、だって、俺、私立の大学に願書……」
「お前が行きたいのは国公立だろ。側にいて応援してやるから、行きたいとこに行けよ。後悔したくねえだろ」
側にいて、応援してやるーー
夢の中にいるようだった。一生覚めないで欲しい幸せな夢。だけど、これが夢じゃなくて現実だと教えてくれたのは、夢の気分を味わせてくれた当の徳村だった。
徳村の手が背中をゆっくりと下り、双丘を下から上へと撫であげた。
「な。悪い、やっぱ我慢出来ないから、やらせて?」
申し訳なさそうに詫びるその姿に、怒るより笑いが出てしまった。渡会はぐずぐずになった顔を徳村の胸に押し付ける。
そして自分を特別だと言う男の首に手を回した。
「昌弥……」
呼ぶと徳村は渡会の耳に唇を近づけた。
「お前に名前を呼ばれると、暴走しちまいそうになる。殴っちまって悪かったな。痛かったろ」
「平気だ」
「口、切れたんだろ。痣にはなってねえみたいだけど」
「これくらいどうってことない」
徳村の指が尻の狭間に滑り込み、窄まりをくすぐるように撫でる。
さっきまで存分に弄られていたそこは柔らかく、徳村の指を抵抗なく飲み込んでいく。
一度に指を二本埋め込まれても、痛みは極わずかさえもない。
三本に増やされた指が円を描くようにゆっくりと動かされる。渡会の身体の中を掘り起こすように抜き差しされ、くちゅくちゅと湿った音がするのは、渡会の羞恥を煽るために徳村がわざとしているからだ。
「ゴムは……」
「いらない」
「でも……」
「今日は直接お前を食べるんだよ」
わがままな子供のように甘えた声で徳村は言う。
湿った赤い髪を撫でると、徳村は渡会の右膝の裏に手を入れて、高く持ち上げた。
持ち上げられた腰をぐっと落とされた瞬間、ズンと身体の奥底に徳村のものが打ち込まれた。
太く熱いそれが突き入れられた衝撃に、渡会はしがみついた男の首に顔を埋めて高い悲鳴を上げた。
「ひっ、あ、ああ、ああ……っ」
声を殺せない。今、徳村の家族の誰かが浴室の前を通ればきっと気付かれてしまう。
二人の腹に擦られて、渡会の性器が硬度を増す。触れられる前にイってしまうかもしれない予感がある。
こんな荒々しいセックスは今までされたことがない。
いつだって徳村からは余裕を感じていたのだ。
それなのに今の徳村はセックスを楽しむ余裕などまるでなく、初めてのセックスに溺れる少年のように、渡会の身体をひたすら貪欲に貪っている。
「ま、さや、昌弥……」
男が刻むリズムは次第に早まってきている。
キスが欲しい、そう思ったと同時に、渡会の心が届いたかのように徳村の唇が雨のように降ってきた。
「あ、はあ……いく、いく、勇司…っ…」
男の欲望に濡れた掠れ声を耳にして、渡会は泣きながら微笑んでいた。
徳村が初めて自分の名前を口にした。
なんてぞくぞくする声で俺の名前を呼ぶんだろう。
俺の中でいって、いって……
渡会は徳村の頭をぎゅっと抱き締める。
熱い飛沫が身体の奥深くで放たれるのを感じる。ドクドクと徳村が自分の中に流れ込む。
それとほとんど同時に、渡会も絶頂を迎えた。
弾む呼吸を整えながら、どちらからともなく唇を重ね合わせていた。
顔をほんの少しだけ離して、額をぶつけ、鼻先を擦りあわせて、また唇を甘く噛む。
ーーああ、堂々巡りだ。
それでも、戻りたい場所がここしかないと思ってしまった時点で、自分は同じスタート地点にまた立たされているのだと、渡会は気づいている。
徳村が渡会の頭に頬をすり寄せてくる。広い背中に両手を回しながら、渡会の頭に、ふとひとつの考えが浮かんだ。
春に新しく買うベッドは、ダブルベッドひとつにしよう。
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