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街デート…のはずなのに
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ヴァイスの転移魔法により、私達は今日、立ち入りが許されている街へと降り立った。
そこで事情を知る人間と軽く会話をして、勇者である事がバレないようにと念を押された。
どうやらこの国の人達の間では、勇者はすでに死んでいると噂されているらしい。
勇者を追放した皇帝としてもその噂は都合が良いみたいで、今更勇者が生きているのを知られるのは困るとか。
はぁ、ほんと勝手なんだから。
私達は顔を隠す様に、羽織っているローブのフードを深く被り、街の中へと足を踏み入れた。
「リーチェ、行きたい場所は決まってるかい?」
「うーん……せっかくだから、やっぱり市場に行きたいかな。可愛いアクセサリーも見たいし美味しい物も食べたいわね」
「そうだね。市場ならもう少し先にあるはずだよ。行こうか」
私とヴァイスは手を繋いで笑顔を交わし、人が賑わっている方へと進んで行った。
久しぶりの島の外、華やかな街の雰囲気に心が踊る。
何よりも私の隣には愛するヴァイスがいる。
彼が勇者の頃にも一緒に街の中を歩いて回った事はある。
だけど、こうして手を繋いで恋人として街デートを楽しむのは初めて。ふふ。私の彼イケメンでしょ?って自慢したいけど顔見せられないのよね。
まあいいわ。それより、彼に似合うアクセサリーが見つかるかしら?
私達はよく、旅先でお互いのアクセサリーをプレゼントし合っていた。
今、彼の両耳で揺れているピアスも私がプレゼントした物。強運の効果を持つと言われるターコイズが埋め込まれている。男の人にとっては少し大振りだけど、中性的で整った顔の彼にとても良く似合っている。
私が着けているネックレスやピアスも全て彼からプレゼントしてもらった物。
……私達、これでよく付き合ってなかったわね。
あの頃はとにかく傍に居られることが嬉しくて、特に関係をどうしようとかあまり考えてなかったわ。
しばらく歩くと隙間なんてないくらい露店が立ち並び、それに集まるように大勢の人達がひしめきあっていた。
足を止め、遠目にその光景を見つめた。
「この世界って、こんなにたくさんの人がいたのね」
「まあ、三ヶ月間僕と二人だけの生活だったからね。やっぱり人が多い方がいいかい?」
「いえ、そんな事は無いんだけど……とにかく、ヴァイスはしっかり顔を隠してね。あなたのそのイケメンが一番目立つんだから!」
私はヴァイスの顔を隠すようにフードをグイグイっと引っ張った。その時だった。
「誰かぁ!!その人捕まえて!!」
突然鳴り響いた叫び声。
一人の男が行き交う人達にぶつかるのも構わず、こちらに向かって物凄いスピードで走ってきていた。
えっ!?ぶつかる!!?
そう思った瞬間、私はヴァイスに肩を掴まれて一気に抱き寄せられた。私が立っていた場所を、男が勢い良く通り過ぎた。
「泥棒ぉ!!誰か捕まえてぇ!!」
泥棒ですって!?今の男が!?
「捕まえないと!!」
私が動こうとしたその時、ヴァイスの体から一瞬だけ淡い光が放たれた。
「うわあああああああ!!?」
聞こえてきた叫び声の方向へ目を向けると、さっきの男が派手に転んでいた。慌てて起き上がろうとするが、またツルっと足を滑らせて転んだ。
これってもしかして……。
私はこの現象を引き起こしているであろう人物にちらりと視線を向けた。
ヴァイスはいつもの柔らかい笑顔を浮かべて人差し指を口に当てている。
知らないふりしろって事ね。
「捕まえろ!!」
やがて異変に気付いて駆けつけてきた警備の人間が男を拘束し始めた。
人々がその様子を見守る中、一人の幼い少年がキョロキョロと辺りを見回しているのが目についた。もしかして迷子かしら?
次の瞬間、なんと少年は貴婦人の鞄から財布を抜き取り走り出した。
とっさに声を上げようとして私は踏みとどまった。目立つ行動は避けないといけない。
だけどあんな小さな子が盗みを働く所をみてしまったら、勇者の彼女として黙っていられない。
「あ、リーチェ!?」
突然走り出した私の後ろからヴァイスの声が聞こえる。
ヴァイスごめん!!
私は振り返る事無く少年の後ろ姿を追いかけ、薄暗い路地裏へと入って行った。
そこで事情を知る人間と軽く会話をして、勇者である事がバレないようにと念を押された。
どうやらこの国の人達の間では、勇者はすでに死んでいると噂されているらしい。
勇者を追放した皇帝としてもその噂は都合が良いみたいで、今更勇者が生きているのを知られるのは困るとか。
はぁ、ほんと勝手なんだから。
私達は顔を隠す様に、羽織っているローブのフードを深く被り、街の中へと足を踏み入れた。
「リーチェ、行きたい場所は決まってるかい?」
「うーん……せっかくだから、やっぱり市場に行きたいかな。可愛いアクセサリーも見たいし美味しい物も食べたいわね」
「そうだね。市場ならもう少し先にあるはずだよ。行こうか」
私とヴァイスは手を繋いで笑顔を交わし、人が賑わっている方へと進んで行った。
久しぶりの島の外、華やかな街の雰囲気に心が踊る。
何よりも私の隣には愛するヴァイスがいる。
彼が勇者の頃にも一緒に街の中を歩いて回った事はある。
だけど、こうして手を繋いで恋人として街デートを楽しむのは初めて。ふふ。私の彼イケメンでしょ?って自慢したいけど顔見せられないのよね。
まあいいわ。それより、彼に似合うアクセサリーが見つかるかしら?
私達はよく、旅先でお互いのアクセサリーをプレゼントし合っていた。
今、彼の両耳で揺れているピアスも私がプレゼントした物。強運の効果を持つと言われるターコイズが埋め込まれている。男の人にとっては少し大振りだけど、中性的で整った顔の彼にとても良く似合っている。
私が着けているネックレスやピアスも全て彼からプレゼントしてもらった物。
……私達、これでよく付き合ってなかったわね。
あの頃はとにかく傍に居られることが嬉しくて、特に関係をどうしようとかあまり考えてなかったわ。
しばらく歩くと隙間なんてないくらい露店が立ち並び、それに集まるように大勢の人達がひしめきあっていた。
足を止め、遠目にその光景を見つめた。
「この世界って、こんなにたくさんの人がいたのね」
「まあ、三ヶ月間僕と二人だけの生活だったからね。やっぱり人が多い方がいいかい?」
「いえ、そんな事は無いんだけど……とにかく、ヴァイスはしっかり顔を隠してね。あなたのそのイケメンが一番目立つんだから!」
私はヴァイスの顔を隠すようにフードをグイグイっと引っ張った。その時だった。
「誰かぁ!!その人捕まえて!!」
突然鳴り響いた叫び声。
一人の男が行き交う人達にぶつかるのも構わず、こちらに向かって物凄いスピードで走ってきていた。
えっ!?ぶつかる!!?
そう思った瞬間、私はヴァイスに肩を掴まれて一気に抱き寄せられた。私が立っていた場所を、男が勢い良く通り過ぎた。
「泥棒ぉ!!誰か捕まえてぇ!!」
泥棒ですって!?今の男が!?
「捕まえないと!!」
私が動こうとしたその時、ヴァイスの体から一瞬だけ淡い光が放たれた。
「うわあああああああ!!?」
聞こえてきた叫び声の方向へ目を向けると、さっきの男が派手に転んでいた。慌てて起き上がろうとするが、またツルっと足を滑らせて転んだ。
これってもしかして……。
私はこの現象を引き起こしているであろう人物にちらりと視線を向けた。
ヴァイスはいつもの柔らかい笑顔を浮かべて人差し指を口に当てている。
知らないふりしろって事ね。
「捕まえろ!!」
やがて異変に気付いて駆けつけてきた警備の人間が男を拘束し始めた。
人々がその様子を見守る中、一人の幼い少年がキョロキョロと辺りを見回しているのが目についた。もしかして迷子かしら?
次の瞬間、なんと少年は貴婦人の鞄から財布を抜き取り走り出した。
とっさに声を上げようとして私は踏みとどまった。目立つ行動は避けないといけない。
だけどあんな小さな子が盗みを働く所をみてしまったら、勇者の彼女として黙っていられない。
「あ、リーチェ!?」
突然走り出した私の後ろからヴァイスの声が聞こえる。
ヴァイスごめん!!
私は振り返る事無く少年の後ろ姿を追いかけ、薄暗い路地裏へと入って行った。
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