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07.婚約
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「だいたいの男の人は、見た目ですぐ決めちゃうから駄目よ。私と結婚してくれる物好きなんて、きっともう現れないわ」
「そんなことないよ。君は素敵だ」
その言葉を、今までどれだけの男性に言われてきただろうか。
だけど、アルの口から発せられる言葉だけが、こんなにも私の胸を熱く苦しくさせる。
彼の前では、こんな美貌なんて何の役にも立たない。
それなのに、彼は私に優しくしてくれる。彼だけが、私の内面をちゃんと見てくれる。こんな私を素敵だと言ってくれる。
そんな彼だから、私はだんだんと惹かれていった。
「じゃあ、アルが私と結婚してくれる?」
「それは駄目だよ。僕と一緒になっても、君に迷惑がかかるだけだから」
「そんな事ないわ。ねえ、アルは私の事を好きじゃないの? 私はアルの事が好きよ」
「え……?」
私の突然の告白に、アルの手から水桶が滑り落ち、派手な音を立てて中の水が飛び散った。
「大変! 足に落ちなかった!? 大丈夫!?」
「あ……ああ、大丈夫だ。君の方こそ、服は濡れなかったかい?」
「私も大丈夫だけど……。アル、あなた顔が真っ赤だわ」
「え……?」
アルは耳まで真っ赤になったその顔を、慌てながら私から隠す様に伏せた。
その姿がまた可愛くて、ちょっといじめたくなってくる。
私は彼の耳元へと顔を近付けた。
「ねえ、告白の返事してくれないの?」
「それは……嬉しいけど……でも、まだよく考えた方がいい。目が見えていない僕よりも、君の本当の姿を分かってくれる素敵な男性が現れるかもしれない」
もう。そんなの目の前にいるじゃない。こういう所も草食系男子の特徴よね。もう少し自信を持ってほしいわ。
「じゃあ、婚約ならどう? いつでも婚約破棄して良いっていう条件付きで」
「そんな簡単に……て、どうせ君の事だから、何を言ってももう無駄なんだろうね」
私の提案に、呆れた表情で返す彼だけど、少し嬉しそうにしているのを私は見逃さない。
「ふふっ……。じゃあ、私達は今日から婚約者って事ね!」
「それはいいけど、本当に良い人が現れたら、すぐに婚約破棄するんだよ?」
「ええ! だけど貴方にも良い人が現れたら、その時は遠慮なく言ってちょうだい」
もちろん、今度はそう簡単に手放すつもりはないけど。
「それはないよ。僕から婚約破棄する事は絶対にない」
「あら? そんな事言ってもいいの? もしも急に、あなたの目が見える様になったら大変よ? 『こんなゴリラ女だとは思わなかった! 婚約破棄だ!』とか言いたくなるかもしれないわよ?」
「それもない。君がどんな姿だろうと、僕は君の事を――」
そこまで言って、アルはハッと口を噤んだ。
くっ……! 今のは惜しかったわね。
「でも、そうだな。君の姿を一目だけでいいから、見てみたいな」
「ふふっ。見たらきっとびっくりするわよ」
「どうかな? 一応、僕の中で君の姿はイメージ出来ているんだけどね」
「あら、ちょっとどんな姿をしてるのか、言ってみてくれる? 答え合わせをしてあげるわ」
アルは天を仰ぐ様に目を閉じ、優しい笑みを浮かべながらゆっくりと口を開いた。
「そんなことないよ。君は素敵だ」
その言葉を、今までどれだけの男性に言われてきただろうか。
だけど、アルの口から発せられる言葉だけが、こんなにも私の胸を熱く苦しくさせる。
彼の前では、こんな美貌なんて何の役にも立たない。
それなのに、彼は私に優しくしてくれる。彼だけが、私の内面をちゃんと見てくれる。こんな私を素敵だと言ってくれる。
そんな彼だから、私はだんだんと惹かれていった。
「じゃあ、アルが私と結婚してくれる?」
「それは駄目だよ。僕と一緒になっても、君に迷惑がかかるだけだから」
「そんな事ないわ。ねえ、アルは私の事を好きじゃないの? 私はアルの事が好きよ」
「え……?」
私の突然の告白に、アルの手から水桶が滑り落ち、派手な音を立てて中の水が飛び散った。
「大変! 足に落ちなかった!? 大丈夫!?」
「あ……ああ、大丈夫だ。君の方こそ、服は濡れなかったかい?」
「私も大丈夫だけど……。アル、あなた顔が真っ赤だわ」
「え……?」
アルは耳まで真っ赤になったその顔を、慌てながら私から隠す様に伏せた。
その姿がまた可愛くて、ちょっといじめたくなってくる。
私は彼の耳元へと顔を近付けた。
「ねえ、告白の返事してくれないの?」
「それは……嬉しいけど……でも、まだよく考えた方がいい。目が見えていない僕よりも、君の本当の姿を分かってくれる素敵な男性が現れるかもしれない」
もう。そんなの目の前にいるじゃない。こういう所も草食系男子の特徴よね。もう少し自信を持ってほしいわ。
「じゃあ、婚約ならどう? いつでも婚約破棄して良いっていう条件付きで」
「そんな簡単に……て、どうせ君の事だから、何を言ってももう無駄なんだろうね」
私の提案に、呆れた表情で返す彼だけど、少し嬉しそうにしているのを私は見逃さない。
「ふふっ……。じゃあ、私達は今日から婚約者って事ね!」
「それはいいけど、本当に良い人が現れたら、すぐに婚約破棄するんだよ?」
「ええ! だけど貴方にも良い人が現れたら、その時は遠慮なく言ってちょうだい」
もちろん、今度はそう簡単に手放すつもりはないけど。
「それはないよ。僕から婚約破棄する事は絶対にない」
「あら? そんな事言ってもいいの? もしも急に、あなたの目が見える様になったら大変よ? 『こんなゴリラ女だとは思わなかった! 婚約破棄だ!』とか言いたくなるかもしれないわよ?」
「それもない。君がどんな姿だろうと、僕は君の事を――」
そこまで言って、アルはハッと口を噤んだ。
くっ……! 今のは惜しかったわね。
「でも、そうだな。君の姿を一目だけでいいから、見てみたいな」
「ふふっ。見たらきっとびっくりするわよ」
「どうかな? 一応、僕の中で君の姿はイメージ出来ているんだけどね」
「あら、ちょっとどんな姿をしてるのか、言ってみてくれる? 答え合わせをしてあげるわ」
アルは天を仰ぐ様に目を閉じ、優しい笑みを浮かべながらゆっくりと口を開いた。
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