二人の時間2。

坂伊京助。

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真夏のまなったん。スペシャル。

休日と出勤の二人。

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「あのさ、飛鳥、明日の事なんだけど、、。」
夕食も食べ終わり、二人はそれぞれでゆったりとした時間を過ごしていた。床に座りソファにもたれ掛り本を読んでいるのは飛鳥。その目の前に来て正座をして改まったように声を掛ける真夏。
「ん?何?えっ?明日?何かあったっけ??」
真夏の言っていることの趣旨を全く理解していない飛鳥に声の大きさを変えて訴える。
「いやっ何かって!飛鳥の誕生でしょ?」
「あー、そうだっけ?」
「もー、そうだっけじゃなくて、一緒に出掛けようって約束したでしょ?忘れたの?」
「忘れてはないけど、そうか、明日なんだね、」
飛鳥は、普段からあまり感情を表に出すタイプではない。しかしそれは、明日かなりの精一杯の照れかくしの方法でもある。それは知らない人から見れば、物凄くドライな人間に見えてしまうこともあるが、年上の真夏からしたらそんな一面も可愛く思える要素の一つだった。
「それで、そのことなんだけどね、」
「久しぶりに、外で待ち合わせして出かけるんだっけ?」
二人が付き合い始めて一年程してから同棲を初めてそれからさらに、三年くらいが経って近頃は一緒に出掛けることはあっても二人一緒に家から出かけることが当たり前になっていた。そんな時にせっかくの飛鳥の誕生日という記念に付き合い始めた頃のように待ち合わせをしようという提案をしてのは、真夏だった。でも真夏は飛鳥に何かを言いたい空気を感じさせていた。
「うん、、」
「それで、どこで待ち合わせする??」
「ごめん!急な用事が出来ちゃって明日は一緒に出掛けられないのっ!本当にごめん!」
「ふーん、そっか用事って?何?」
真夏の発言に対してやはり飛鳥はいつも通りの反応を返す。
「職場の人が体調崩しちゃったみたいでその穴埋めで行かなきゃならなくなちゃったの、」
「そっか、まぁ仕事じゃしょうがないね、頑張ってね!」
「せっかくの飛鳥の誕生日なのに本当にっ!ごめんねっ!」
「そんなに謝らなくてもいいよ、そもそも私、明日が自分の誕生日だってこと自体忘れてたわけだしさ、真夏はお仕事頑張ってきてね!」
「うん、、、ありがと。」
「そんなに露骨にテンション下がられるとなんか、私が悪いことしたみたいで困るなぁ、」
「ごめんね、この埋め合わせは絶対にするから」
「じゃあさ、私の髪切ってよ!明日は私、一日ずっと家にいるからさ仕事が終わった後でいいから私の髪切って!真夏が好きな髪型にしてくれていいからさ!ね?いいでしょ?」
「それで飛鳥が満足ならもちろん!」
「よしっ!じゃあ決定ね!あ~、楽しみだなぁ!」
~次の日~
二人で寝ても少し余裕のあるクイーンサイズのベッドでスヤスヤと眠っている飛鳥を起こさないように静かに抜け出す真夏。寝返りを打って隣に居るはずの真夏がいない事に気が付く飛鳥。
「あれ?真夏どこいくの?」
まだ寝ぼけている飛鳥が真夏の手を優しく握りしめる。
「どこって、仕事だよ?昨日、言ったでしょ?」
「あぁ、そうか、頑張ってね!」
「うん!ありがと、起こしちゃってごめんね?」
「そんなことより、ん!」
ベッドの上に寝そべったままの状態の飛鳥は目を閉じて、唇を軽く突き出している。
「え?」
「いってきますのちゅー、」
「いつもは嫌がるのにいいの?」
「今日は、誕生日だから特別。」
「もぅ、しょうがないなぁ、」
真夏の顔が飛鳥に近づき二人の唇が優しく触れ合う。そして真夏の唇を突き破るようにして飛鳥が舌を滑り込ませようとする。
「待って!」
慌てて顔を離して体を起こして声を上げる真夏。
「ん?なんで?」
「今はじめたら、キスだけで止められないでしょ?」
「ちょっとだけ、ダメ?」
「ちょっともダメ!」
「ケチっ、」
「そんな、可愛い顔してもダメなものはダメ!」
「じゃあ後、一回だけならいいでしょ?一回で我慢するから!」
「本当に一回だけだよ??」
「うん!」
真夏は再び目を閉じて飛鳥に顔を近づける。しかし、飛鳥の唇を感じたのは唇ではなく首筋だった。
「えっ、ちょっと飛鳥??」
「つけちゃったっ!」
真夏の首筋には、くっきりとキスマークが付けられていた。
「ちょっと!こんな目立つ所につけないでよ!誰かに見られてらどうするの?」
「誰かにって別に真夏は私の彼女なんだから別にいいでしょ?それとも何か問題あるの?」
「もぅ、それはそうだけど私が接客業なの知ってるでしょ?どうせ付けるならもっと目立たたない所にしてくれても良くない?」
「だって目立つ所に付ければ真夏が、一日中ずっと私のこと考えてくれるでしょ?」
「普段はクールなのに飛鳥って本当は結構、甘えん坊だよね?そんなことしなくても私はいつだって飛鳥のこと想ってるよ?」
「うん、ありがと。」
少し照れくさそうな表情をして俯く飛鳥と首筋に付いた可愛い恋人の小さな嫉妬心の痕を絆創膏で隠して真夏は仕事に向かった。
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