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二人と冬の朝。
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冬の朝は、空気すらも凍り付いているかの様に感じる。普段は気づくことも無い空気の流れの様なものを微かに感じることも出来る。そんな冬の朝の台所に薄ピンク色の綿菓子の様なルームウェアを着た寝起きの真夏がまだ眠い目を擦りながら朝食の支度を始めようとしていた。表面は鏡のように光って大きな窓から差し込む朝日が反射している。真夏は、その大きな窓の前に立ちカーテンを開いてその小柄な体を伸ばして体を後ろに大きく反らして暖かい日の光を全身で堪能した。高層マンションの最上階からは都会のコンクリートジャングルが一望出来る。ビルとビルの間の溝を多様な自動車や人々が行き交う姿を目にすることが出来る。一方、寝室のベッドの中で冬の童謡に出てくる猫の様に体を丸めているのは、真夏と同棲をしている麻衣である。寝ぼけながら真夏が寝ていた空間へ手を伸ばすがそこに愛おしい恋人のぬくもりだけがその場に残っている。
「ん?まなつ、どこ。」
眠い目を擦って視線を向けても、真夏の姿はそこには無い。ゆっくりとベットから身を起こして足を下ろした床はあまりに冷たくて思わず足を引き上げてしまう。麻衣は、
凍てつくような空気の廊下をゆっくりと一歩づつ、リビングに向かった。
「あっ、にゃんちゃん!おはよっ!」
昨晩のアルコールがまだ抜けきらずに若干、二日酔いと冬の寒さのダブルパンチによってボロボロに麻衣がやっとリビングの戸を開けると一足先に起きていた七瀬が台所に立ち、朝食を作っていた。
「あ、おはよ、早いね七瀬。」
「たまには、にゃんちゃんに朝ご飯を作ってあげようと思って!」
「そっか、ありがと。」
「にゃんちゃん、大丈夫?昨日のお酒まだ、残っちゃってる?お水飲む?」
「うん、頂戴。」
麻衣は、力無い足取りで七瀬を後ろから覆いかぶさる様に体重を預ける。
「ん?にゃんちゃん?どうしたん?」
「七瀬、好き?私のこと好き?」
「もちろん!好きに決まってるやろ?何かあったん?」
「ちょっとだけ、嫌な夢見た。」
「ん、夢?どんな夢やったん?」
「好きな人が突然居なくなっちゃう夢だった。」
「そうなんや、うちは、居なくなったりせんよ?」
「うん、そうだよね、だけど時々、不安になっちゃうんだよ、ごめんね七瀬。」
「なんで謝るん?にゃんちゃんは何も悪くないよ?」
「うん。」
「うち、元気なにゃんちゃんの方が好き!だから元気だして?」
「うん、ありがと。」
「そうや、元気が出るおまじない、教えたげようか?」
「え?おまじない?」
そう言って七瀬は軽快に体を半回転させて麻衣の方に向き直した。
「にゃんちゃん、すきやで!」
その言葉をが麻衣の鼓膜を振動させると同時に唇に柔らかさと微かな温かを感じ、一瞬、間を開けて心の奥底から七瀬の愛情を肌で直接感じ取ったことの嬉しさと不意に唇を奪われたということの恥ずかしさが一気に込み上げてきて、顔に熱を持つ。
「にゃんちゃんっ、顔真っ赤やで?可愛いっ!」
普段から自分の前では甘えてくる麻衣が、いつもに増してその甘えてきた上に恥ずかしがっている姿に今までにない可愛さを感じた七瀬は麻衣を優しく抱きしめた。
「ふ、不意打ちはずるいよ、、、。」
「じゃあ、次は面と向かってちゃんと唇奪っていい?」
麻衣を抱きしめていた腕を放して半歩程の距離をとろうとすると、背中に腕を回されて、僅かに後ろに傾けた重心を引き寄せられる。
「まだ、もうちょっとだけこのままで居たい。」
「うん、ええよ。」
冬の澄んだ空気が日差しと混ざってじんわりと暖まり、愛し合う二人の事を包み込む。真夏の事をまだ忘れることが出来ずにいた麻衣の心も静かに融けて七瀬との新しい生活へと一歩踏み出した。
「ん?まなつ、どこ。」
眠い目を擦って視線を向けても、真夏の姿はそこには無い。ゆっくりとベットから身を起こして足を下ろした床はあまりに冷たくて思わず足を引き上げてしまう。麻衣は、
凍てつくような空気の廊下をゆっくりと一歩づつ、リビングに向かった。
「あっ、にゃんちゃん!おはよっ!」
昨晩のアルコールがまだ抜けきらずに若干、二日酔いと冬の寒さのダブルパンチによってボロボロに麻衣がやっとリビングの戸を開けると一足先に起きていた七瀬が台所に立ち、朝食を作っていた。
「あ、おはよ、早いね七瀬。」
「たまには、にゃんちゃんに朝ご飯を作ってあげようと思って!」
「そっか、ありがと。」
「にゃんちゃん、大丈夫?昨日のお酒まだ、残っちゃってる?お水飲む?」
「うん、頂戴。」
麻衣は、力無い足取りで七瀬を後ろから覆いかぶさる様に体重を預ける。
「ん?にゃんちゃん?どうしたん?」
「七瀬、好き?私のこと好き?」
「もちろん!好きに決まってるやろ?何かあったん?」
「ちょっとだけ、嫌な夢見た。」
「ん、夢?どんな夢やったん?」
「好きな人が突然居なくなっちゃう夢だった。」
「そうなんや、うちは、居なくなったりせんよ?」
「うん、そうだよね、だけど時々、不安になっちゃうんだよ、ごめんね七瀬。」
「なんで謝るん?にゃんちゃんは何も悪くないよ?」
「うん。」
「うち、元気なにゃんちゃんの方が好き!だから元気だして?」
「うん、ありがと。」
「そうや、元気が出るおまじない、教えたげようか?」
「え?おまじない?」
そう言って七瀬は軽快に体を半回転させて麻衣の方に向き直した。
「にゃんちゃん、すきやで!」
その言葉をが麻衣の鼓膜を振動させると同時に唇に柔らかさと微かな温かを感じ、一瞬、間を開けて心の奥底から七瀬の愛情を肌で直接感じ取ったことの嬉しさと不意に唇を奪われたということの恥ずかしさが一気に込み上げてきて、顔に熱を持つ。
「にゃんちゃんっ、顔真っ赤やで?可愛いっ!」
普段から自分の前では甘えてくる麻衣が、いつもに増してその甘えてきた上に恥ずかしがっている姿に今までにない可愛さを感じた七瀬は麻衣を優しく抱きしめた。
「ふ、不意打ちはずるいよ、、、。」
「じゃあ、次は面と向かってちゃんと唇奪っていい?」
麻衣を抱きしめていた腕を放して半歩程の距離をとろうとすると、背中に腕を回されて、僅かに後ろに傾けた重心を引き寄せられる。
「まだ、もうちょっとだけこのままで居たい。」
「うん、ええよ。」
冬の澄んだ空気が日差しと混ざってじんわりと暖まり、愛し合う二人の事を包み込む。真夏の事をまだ忘れることが出来ずにいた麻衣の心も静かに融けて七瀬との新しい生活へと一歩踏み出した。
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