二人の時間。

坂伊京助。

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久しぶりの二人。

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  「あぁ~!今日が〆切なのに全然っ、進まないよ~!」ボサボサの髪の毛をさらに乱れさるように頭を掻きながら机に向かい原稿とにらめっこをしている神内まい、売れっ子と言える程ではないもののイラストの仕事で生計は、立てている。現在は、アパートで二人暮らしをしていて相手は、八歳年下でカフェ店員をしている与田ゆうきだ。
「もう、またですか?一応、プロなんですからしっかりして下さい。」ソファの上でスマホをいじりながら呆れた口調で返す。「あ~!今、“一応”って言ったぁ~!!私は、列記としたプロですっ!」
「一応って言った事は、謝りますけど、プロなら期日をしっかり守るものじゃないんですか?」
「なんか、今日のゆうきちょっと意地悪じゃない?」
「そんなこと無いですよ、それにまいさん本当に切羽詰まってる時は自分の部屋に籠るのにまだ、リビングで作業してるってことは今回は、頑張れば大丈夫ってことですよね?」図星を突かれ分が悪くなったまいは、止めていた手を動かして作業を再開し始めた。

「よーっし!終わったぁ~~!!」天井に両手を広げ凝った体を大きく後ろに反る。まいは、ゆうきの言葉が返ってくるのを待っていた。返事の代わりにソファの方から小さな寝息が聞こえてきた、テーブルを離れて一歩一歩に細心の注意を払って近づいていく。「ゆうき~?」ゆっくりとソファを覗き込みながら静かに言葉をかけると、やはり返ってくるのはいつものような敬語での少し厳しい言葉ではなく、小さくて可愛い寝息だけ が聞こえる。まいは、ソファーを乗り越えてゆうきの隣に座ってさっきよりも近くで可愛らしいゆうきの寝顔を見つめる。 その可愛さに前身の力が息に抜けて深い眠りについてしまう。
 左肩に少し違和感を感じながら眠い目を薄く開けて違和感のする左肩の方を見るとまいが自分の肩に頭を乗せて寝ているのが目に入った。振動を与えて起こそうという考えが一瞬だけ頭に過ったがここ数日、まいが徹夜で仕事をしていたことを知っていたゆうきは、まいを起こさないように体の位置を固定することに決心した。しかし、いざ意識をすると無駄に体に力が入ってしまう。まいが起きていないかをゆっくりと確認しながら、右手でスマホを手繰り寄せて電源を入れてカメラを起動させてインカメラで自分越しにまいの寝顔を撮影する。写真は確認せずにスマホを手からソファーに滑り落とす。横で幸せそうに眠るまいの顔を見てゆうきは、改めてその綺麗さに関心していた。最近は、お互いに仕事が忙しくてすれ違ってばからりいて二人でゆっくりと過ごすのは今日が久しぶりだった。窓から夕陽の光が差し込み始めた頃、ゆうきは、肩を揺らしながらまいに声を掛けた。
「まいさん~、そろそろ起きて下さい、寝るんなら自分の部屋で寝てください。」
「ん~~、」まだ、寝ぼけているまいは、両手をゆうきの左手に絡ませてコアラのように抱きついてくる。ゆうきの左腕はまいの体に完全に包まれてしまっている。体温がじわじわと伝わってくる。ゆうきは、まいの寝顔に思わずもうしばらくはこのままでいようかとも思ったが、もう時間帯としては夕飯を作らなければいけない時間になっている。その可愛い寝顔を永遠に見ていたいという気持ちを必死に押し殺して、腕をゆっくりと引き抜きソファーを立つ。体重を預けていたゆうきが居なくなってまいの体は、だらりとソファーにと倒れ込んだ。完全に熟睡してしまっている姿にさっきよりも一層、愛おしさを感じながらゆうきは、夕飯の買い物に出かける準備を始めた。
「ゆうき~~、」出かける準備が出来た頃、ソファーの方から寝起きの少し掠れた声でゆうきの名前を呼んでいる。ソファーから少しづつ体が見え始める。
「あ、起きたんですね!私、ちょっとお夕飯の買い物に行ってきますから待っててください。」その言葉を聞くと同時に体を起こしてソファーの上に座ると寝起きで完全に開いていない目と乱れきった髪の毛のまいがゆっくりとゆうきの方を見る。
「私を置いていくの??」
「い、一緒に行きます?でも、疲れてるんじゃないですか?」まいの可愛すぎるその姿に抱きしめたくなる気持ちがどんどんと湧いてきたゆうきは、まいに近づき優しく頭を優しく撫でた。
「分かりました、一緒に行きましょう、待ってますから髪だけでも整えてください」
「うん、わかった。」フラフラとしながら洗面所に向かい始めるまいその危なっかしい姿を心配そうに見守ってるゆうき。
数分後、さっきまで寝起きでだらしない姿だったとは思えない程に大人な女性が目の前に現れる。
「お待たせっ!早くお買いもの行こうよ!」
「やけに、テンション高いですね?」
「そりゃそうだよ、二人でお買いもの行くなんて久しぶりでしょ?だから、テンション上がっちゃった!それとも、ゆうきは嬉しくないの?」まいは、道端に捨てられた子犬のような少し潤んだ瞳で問いかけてくる。
「そ、それは勿論、私も嬉しいですよっ!」想定していたよりも少し大きな声に少しまいは、驚いた。
「そんなに大きな声で言わなくてもゆうきの嬉しさは、ちゃんと私に伝わってるよ!」そういってゆうきに抱きつくまい。
「そうやって、改めて言われると少し照れます。」少し頬を赤らめ俯きながら答えるゆうき。
「照れてるゆうきも可愛くて大好きだよっ!」
「いっ、いいから早く行きましょう!」そういって半ば強引にまいを引っ張りながら玄関へと向かう。しゃがんでスニーカーの紐を結んでいるゆうきの後ろから覆いかぶさるようにして抱きつきながら耳元で声をかける。
「ねぇ、今日のごはん何?」
「今日は、カレーにしましょう。」
「やったー!ゆうきのカレー大好き!」

夕焼けに照らされながら二人は商店街に向かう、ゆうきは歩きながら静かにまいの手を握った。手を握られたまいは、少し強く手を握り返した。
    
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