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二人の未來。
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「せんぱいっ!好きです、付き合って下さい!」
「ぼく、君のこと別に好きじゃないから嫌だ。」
告白を一瞬で強制的に終了し告白をしてきた相手に背中を見せて去っていく。
「じゃあ、僕もう行くね。」
今日だけでもう、四度目の告白だった。興味もない相手から毎日のように告白をされて、亜乃は、いい加減嫌気が差していた。そもそも人付き合い自体が苦手なのに同じ学校というだけで名前も知らなければ時には学年も違う相手に告白なんてされても、迷惑以外の何物でもない。それでも、毎回しっかりと直接断るのには理由がある。亜乃が想いを寄せている先輩の髙城から、『同じ断るにしても直接、相手に会わないと相手に失礼だよ?』と言われてから面倒な気持ちを押し殺して直接断ることにしている。
「あっ!亜乃ちゃん!ここにいたんだ!」
「あ、やばっ!」
校舎の裏から校庭に出てきた亜乃を見つけたのは、美術部の部長で亜乃が想いをよせている先輩の髙城れにだった。
「今日という今日は、絶対に逃がさないからね!」
「いやっ!今日も絶対に帰る!」
オレンジ色に染められた空の下、対峙する二人の間に風が吹く。ガンマン同士の早打ちのシーンさながらの空気感がその場を包む。
「文化祭で展示する作品、まだ完成してないの亜乃ちゃだけだよ?」
「入部する時にも言ったけど、ぼくは、名前貸すだけだから関係ない!」
「確かに、入部した頃はそれで良かったけど今は、亜乃ちゃんも先輩なんだし!少しは参加してくれないと、私も困る!」
「でも、ぼくは、行きたくない!」
「いや、今日は絶対に連れて行くから!」
両者一歩も譲らない状態がしばらく続く。
「あ、部長~!亜乃ちゃぁ~ん!こんな所に居たんですね~!」
校舎の方から黒縁メガネにおさげ髪の女子生徒がバタバタと慌ただしく走ってくるのを髙城は亜乃越しに確認した。髙城の視線が一瞬だけ自分から外れた隙に亜乃は、瞬時に体を左右に揺らしフェイントを掛けて髙城を避けてこの場から離脱しようとした。亜乃が髙城の横を通り過ぎようとした瞬間に亜乃の手首を内側にひねって背中に付ける。
「これで逃げられないね!」
「うっ、しくじった。」
「はぁ、はぁ、二人とも何してるんですか??」
校舎から二人の元に走ってきたのは、亜乃の同級生で副部長の井上さゆりだった。生徒も斑にいる校庭で技を掛けられ身動き取れなくなっている同級生と技を掛ける先輩の姿にこの場の状況を理解できずにいた。
「逃げようとする亜乃ちゃんをやっと捕まえたところ。」
「にしてもやり過ぎじゃないですか?亜乃ちゃん大丈夫??」
「う、痛い。」
「今日は、このまま部室に来てもらうからね!さゆも手伝って!」
「は、はい!」
大人しくなった亜乃を髙城と井上が部室へ連れて行く。
~部室~
「ふぅ~、やっと着いた!」
「ですね、亜乃ちゃん大丈夫?」
「帰りたい、、、。」
「展示用の作品が完成したら帰ってもいいから早く完成させてね?」
「う~ん。」
部室に置かれたパイプ椅子に座り長テーブルにうつ伏せになり項垂れている亜乃。
部室には、高城、井上、亜乃の他に三名の一年生が楽しそうに雑談をしながら絵を描いている。
「部長、井上先輩、おかえりなさい!亜乃先輩の捕獲お疲れ様です。」
「た、ただいま、」
「ん?なんか、この部屋熱くない?」
「確かに言われてみれば熱い気もするね、そういえば、さゆはなんで私を探しに来たの?」
「あっ!そうでした!エアコンが急に止まってしまって、それで先輩を探してたなんです!」
「だから、熱いんだこの部屋、今日はもう、帰っていい?」
「あ~、これ古いからね、とうとうダメになったか。」
「窓開ければ、とりあえず私たちは、平気ですよ!」
壊れたエアコンの下で腕を組んでいる髙城に元気よく一年生三人が、答える。
「え~もう、帰ろうよ~。」
亜乃は、相変わらず一切のやる気を見せない。窓から外の少し涼しい風が部室に入り込み、長テーブルで項垂れる背中を優しく撫でる。
「まぁまぁ、亜乃ちゃん、せっかく部室まで来たんだから今日は、描いていこう?」
「そうだよ文化祭まで日もないし、完成に一番遠いのは亜乃ちゃんなんだからね!」
「う~ん、分かったよ、描けばいいんでしょ?」
「よしっ!分かればよろしい!」
そうしてそのまま、亜乃はなんとか下書きだけは描き終えた。
~帰り道~
「う~、疲れたぁ、」
「疲れたは、こっちのセリフだよ!ね?さゆ?」
「私は結構、楽しかったです!」
「ぼくは、誰かのせいで凄く疲れた。」
「誰かのせいってそれはこっちの台詞なんだけどなぁ」
そう言ってれには、亜乃の耳たぶを軽く抓る。
「いててて、離してよ、今日は頑張ったんだからいいでしょ?」
「そうですよ先輩、亜乃ちゃんも反省してるみたいだし、それに自力でないにしろ今日はちゃんと部室まで来たんですから大目に見てあげましょう?」
「そうだ、そうだ!」
「さゆは、亜乃ちゃんに甘すぎるよ!」
「まぁ確かにそうかもしれないですね!私も先輩を見習いますっ!」
「えっ!?それは、ぼく的に凄く困るんだけど。」
「よしっ!さゆ一緒に頑張ろう!!」
「はいっ!頑張りましょう!!」
「えっ?いや、だからそれは困るんだけど?ねぇ、聞いてる二人とも?」
テンションの上がった二人は亜乃の事をスピードを上げて歩き始めた。
「ぼく、君のこと別に好きじゃないから嫌だ。」
告白を一瞬で強制的に終了し告白をしてきた相手に背中を見せて去っていく。
「じゃあ、僕もう行くね。」
今日だけでもう、四度目の告白だった。興味もない相手から毎日のように告白をされて、亜乃は、いい加減嫌気が差していた。そもそも人付き合い自体が苦手なのに同じ学校というだけで名前も知らなければ時には学年も違う相手に告白なんてされても、迷惑以外の何物でもない。それでも、毎回しっかりと直接断るのには理由がある。亜乃が想いを寄せている先輩の髙城から、『同じ断るにしても直接、相手に会わないと相手に失礼だよ?』と言われてから面倒な気持ちを押し殺して直接断ることにしている。
「あっ!亜乃ちゃん!ここにいたんだ!」
「あ、やばっ!」
校舎の裏から校庭に出てきた亜乃を見つけたのは、美術部の部長で亜乃が想いをよせている先輩の髙城れにだった。
「今日という今日は、絶対に逃がさないからね!」
「いやっ!今日も絶対に帰る!」
オレンジ色に染められた空の下、対峙する二人の間に風が吹く。ガンマン同士の早打ちのシーンさながらの空気感がその場を包む。
「文化祭で展示する作品、まだ完成してないの亜乃ちゃだけだよ?」
「入部する時にも言ったけど、ぼくは、名前貸すだけだから関係ない!」
「確かに、入部した頃はそれで良かったけど今は、亜乃ちゃんも先輩なんだし!少しは参加してくれないと、私も困る!」
「でも、ぼくは、行きたくない!」
「いや、今日は絶対に連れて行くから!」
両者一歩も譲らない状態がしばらく続く。
「あ、部長~!亜乃ちゃぁ~ん!こんな所に居たんですね~!」
校舎の方から黒縁メガネにおさげ髪の女子生徒がバタバタと慌ただしく走ってくるのを髙城は亜乃越しに確認した。髙城の視線が一瞬だけ自分から外れた隙に亜乃は、瞬時に体を左右に揺らしフェイントを掛けて髙城を避けてこの場から離脱しようとした。亜乃が髙城の横を通り過ぎようとした瞬間に亜乃の手首を内側にひねって背中に付ける。
「これで逃げられないね!」
「うっ、しくじった。」
「はぁ、はぁ、二人とも何してるんですか??」
校舎から二人の元に走ってきたのは、亜乃の同級生で副部長の井上さゆりだった。生徒も斑にいる校庭で技を掛けられ身動き取れなくなっている同級生と技を掛ける先輩の姿にこの場の状況を理解できずにいた。
「逃げようとする亜乃ちゃんをやっと捕まえたところ。」
「にしてもやり過ぎじゃないですか?亜乃ちゃん大丈夫??」
「う、痛い。」
「今日は、このまま部室に来てもらうからね!さゆも手伝って!」
「は、はい!」
大人しくなった亜乃を髙城と井上が部室へ連れて行く。
~部室~
「ふぅ~、やっと着いた!」
「ですね、亜乃ちゃん大丈夫?」
「帰りたい、、、。」
「展示用の作品が完成したら帰ってもいいから早く完成させてね?」
「う~ん。」
部室に置かれたパイプ椅子に座り長テーブルにうつ伏せになり項垂れている亜乃。
部室には、高城、井上、亜乃の他に三名の一年生が楽しそうに雑談をしながら絵を描いている。
「部長、井上先輩、おかえりなさい!亜乃先輩の捕獲お疲れ様です。」
「た、ただいま、」
「ん?なんか、この部屋熱くない?」
「確かに言われてみれば熱い気もするね、そういえば、さゆはなんで私を探しに来たの?」
「あっ!そうでした!エアコンが急に止まってしまって、それで先輩を探してたなんです!」
「だから、熱いんだこの部屋、今日はもう、帰っていい?」
「あ~、これ古いからね、とうとうダメになったか。」
「窓開ければ、とりあえず私たちは、平気ですよ!」
壊れたエアコンの下で腕を組んでいる髙城に元気よく一年生三人が、答える。
「え~もう、帰ろうよ~。」
亜乃は、相変わらず一切のやる気を見せない。窓から外の少し涼しい風が部室に入り込み、長テーブルで項垂れる背中を優しく撫でる。
「まぁまぁ、亜乃ちゃん、せっかく部室まで来たんだから今日は、描いていこう?」
「そうだよ文化祭まで日もないし、完成に一番遠いのは亜乃ちゃんなんだからね!」
「う~ん、分かったよ、描けばいいんでしょ?」
「よしっ!分かればよろしい!」
そうしてそのまま、亜乃はなんとか下書きだけは描き終えた。
~帰り道~
「う~、疲れたぁ、」
「疲れたは、こっちのセリフだよ!ね?さゆ?」
「私は結構、楽しかったです!」
「ぼくは、誰かのせいで凄く疲れた。」
「誰かのせいってそれはこっちの台詞なんだけどなぁ」
そう言ってれには、亜乃の耳たぶを軽く抓る。
「いててて、離してよ、今日は頑張ったんだからいいでしょ?」
「そうですよ先輩、亜乃ちゃんも反省してるみたいだし、それに自力でないにしろ今日はちゃんと部室まで来たんですから大目に見てあげましょう?」
「そうだ、そうだ!」
「さゆは、亜乃ちゃんに甘すぎるよ!」
「まぁ確かにそうかもしれないですね!私も先輩を見習いますっ!」
「えっ!?それは、ぼく的に凄く困るんだけど。」
「よしっ!さゆ一緒に頑張ろう!!」
「はいっ!頑張りましょう!!」
「えっ?いや、だからそれは困るんだけど?ねぇ、聞いてる二人とも?」
テンションの上がった二人は亜乃の事をスピードを上げて歩き始めた。
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