二人の時間。

坂伊京助。

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二人と本音と寝言。

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 今日は、朝から彼女の機嫌があまり良くない気がする。普段部屋で二人きりのときには、体温が分かる程に体をくっつけてくるのに今日は、なぜか私に背を向けてスマホをいじっている振りをしている。というのもさっきから電源の入っていない真っ黒な画面がチラチラと視界に入ってくる。
「ねぇ、リサ。」
沈黙を裂いた私の言葉に対しての返答は一切なく、相も変わらず真っ黒な画面を見つめている。
「さっきから、何見てるの?」
「別に、なんでもいいでしょ。」
やっと返ってきた言葉は少しの厳しさを纏っていた。
「リサ、怒ってる?」
「別に普通だけど。」
“普通”このワードが出てきた時は、必ず何かがある時と決まっている。リサはいつだって、私に対しては素直じゃない。でも、それは裏を返せば素直なんじゃないかとも思う。
「いや、普通じゃないでしょ、」
「うるさいなっ!普通だって言ってるでしょ!」
「ねぇ、何かあったなら聞くよ?話して?」
「だからしつこな、何も無いって言ってるでしょ。」
私の方も少し、ムキになってしまって完全にリサの機嫌を損ねてしまった。次の言葉が口から出る前にリサは、その場で体育座りをして両膝の間に顔を埋めたまま体を小さく前後に揺らし始めた。これが始まったらもう何を言ってもリサには届かない。もう、半ば諦めてリサの後ろで静かに項垂れていると。リサが小さな声で何かを喋っているのが聞こえた。
「確かに、、白石さんは綺麗だし、松村さんは可愛いけど、真夏のことが一番好きなのは私なのに、どうして気づいてくれないの。」
珍しくリサが完全防御態勢のまま私に話しかけてきている。にしても可愛すぎるこんなに可愛い生き物が自分の目の前にいるなんて信じられない。今すぐにでも抱きしめたいけど一応、相手は怒っている訳だし少しだけ我慢をしよう。
「まぁ、私の独り言なんて誰も聞いてないよね。」
自分の中で沸上がる感情を抑えることに夢中になっていると返答を期待していたリサが口を開いた。
「き、聞いてるに決まってるじゃん!」
真夏は勢いに任せてリサの体を後ろから優しく包んでそっと耳元でささやく。
「確かにさっきリサが言ってた通り、まいやんは綺麗だし、まっつんは可愛いけど、私が好きって気持ちを本気で向けられるのは、リサだけだよ?」
「また、調子の良い事ばっかり言って。」
「本当だよ、私の一番はリサだよ!」
「本当に?」
「うん、本当に!」
「あ、ありがと。」
「ううん、私こそ嫉妬してくれるぐらい私のことを好きでいてくれてありがとう!!大好きだよリサ!」
「私も好き、真夏のこと大好き。」
「ねぇ、リサ!」
そう言ってリサの顔を覗きこむと。小さく寝息を立ててリサは眠っていた。
「えっ!じゃあ、今までのって全部寝言なの?でもまぁ寝言でもリサが私のこと好きって言ってくれて嬉しいよ!ちゅっ!」
寝ているリサの頬に真夏の唇の痕が微かに移った。

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