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EP3 復讐の黄金比8 錆びついた復讐
悍ましい出迎え
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「やっと……着いた」
あれからとにかく走り、病院へとたどり着いた夏輝とロセ。
夜であっても、勅使河原総合病院は常に二十四時間体制で夜勤のスタッフがいるはずだ。
それなのに、病院には灯がついておらずしぃんと不気味なほどに静まり返っていた。
「駐車場にはそこそこ車もあるし、救急車もある。でも、人の気配はしないね」
警戒しつつ、注意深く観察する。
「獣の気配はあるけれど」
ロセの言葉に夏輝は硬い表情をしたまま頷いた。
ラテアのような優れた五感を持たずとも感じられる。
そこかしこから獣の息遣いが聞こえてくる。向けられている殺気もまた多数。
敷地内に入った瞬間から囲まれていた。
(これは……即席で病院内の人間で創ったのか、それとももともと実験していた個体を解き放ったのか。どっちだろうね?どちらにしても胸糞悪い話ではあるけれど)
遅かれ早かれ、間違いなく二人は襲われるだろう。
いっそ自分から殴りかかってしまいたいと夏輝は考えるが、この均衡状態を崩して果たした瞬間間違いなく一度に全て襲い掛かってくる。
どうすべきか。通り抜けられるのか。ひそかに夏輝は背負った刀を想う。
「大丈夫、何とかなるよ。そう思っていないとやってられないでしょ?もう進むしかないんだから、色々ぐちゃぐちゃ考えたってどうしようもないじゃない。でしょ?」
そんな夏輝の迷いを見透かしたかのように、囁くようにロセが言葉を紡ぐ。
「……そう、ですね。このまま病院に入ろうと試みましょう」
獣が中でなく外を徘徊しているのならば、外で囲まれて戦うよりも病院内で一体ずつ倒した方がまだマシだ。
しかし、それは同時に病院内にいる人間をより高い危険に晒すということでもある。
(それでも)
結局ここで夏輝達が倒れてしまえばラテアを助け出すことはできない。
全てを何とか出来るご都合主義など存在しないのだから。
「うん、わかったよ夏輝君」
夏輝の言葉にロセは一つ頷いた。
そのまま病院の正門を通り、正面入り口へと走る。
「ぐぅぁるるるっ!」
走り出した瞬間、四方八方から獣が飛び出してくる。
獣と言ってもそのいでたちは獣というべきか戸惑うような外見だった。
なにせウサギの着ぐるみが四つ足で這いまわっており、ところどころ破れた場所から凡そ人間のものとは思えない様々な器官が飛び出ている。
夜の病院ということも相まって、完全にホラーだった。
(元は……多分人間。それも患者どころかスタッフまでだ)
何故そうわかるのか。それは器官と一緒に入院着やスタッフの者と思しき白衣が見え隠れしているから。
スタッフまでとなると、最早中の人間たちの安否は絶望的かもしれない。
獣たちの中には、夏輝達をスルーし外へと飛び出していくものも多かった。
それが命じられたものなのか、彼らの本能によるものなのかはわからない。
『抜けていった……やつらは朝陽たちが何とかしてくれるわ。早く病院内に!』
なんと呼ぶべきか迷ったのだろう。
トロンはやつら、と称し夏輝達を病院内へと急かす。
着ぐるみの化け物が四足で飛び掛かってくるのは見ているだけでもぞくぞくと背筋を冷たいものが這い上るだろう。
風を纏わせた鞘で飛び掛かってくる獣の腹を打ち、地面へと叩きつける。
「ロセさんっ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫。確かに直接戦闘は得意じゃないけど、雑魚に負けるほど弱くはないから」
一方のロセはと言えば、すらりと長いしなやかな脚で思い切り獣を蹴り飛ばしていた。
全く戦闘が駄目というわけではないようで、内心ホっとする。
そのまま何とか走り抜け、病院のエントランスまでなだれ込む。
しかし、中にも大量の着ぐるみもどきが徘徊していた。
「まあ、そうだよね……。地下への入り口は遠呂さんから聞いてるから迷うことはないけど……やるしかないか」
覚悟を決め、刀の柄に手をかけ、脚力強化の魔法を詠唱する。
先導し、ロセが安全に勧めるように活路を切り開かねばならない。
そう決意し、一歩を踏みだした瞬間獣が通路の壁を走りこちらへと飛び掛かってくる。
来るのと同時に一発の銃声が耳に届く。
「ロセ」
あれからとにかく走り、病院へとたどり着いた夏輝とロセ。
夜であっても、勅使河原総合病院は常に二十四時間体制で夜勤のスタッフがいるはずだ。
それなのに、病院には灯がついておらずしぃんと不気味なほどに静まり返っていた。
「駐車場にはそこそこ車もあるし、救急車もある。でも、人の気配はしないね」
警戒しつつ、注意深く観察する。
「獣の気配はあるけれど」
ロセの言葉に夏輝は硬い表情をしたまま頷いた。
ラテアのような優れた五感を持たずとも感じられる。
そこかしこから獣の息遣いが聞こえてくる。向けられている殺気もまた多数。
敷地内に入った瞬間から囲まれていた。
(これは……即席で病院内の人間で創ったのか、それとももともと実験していた個体を解き放ったのか。どっちだろうね?どちらにしても胸糞悪い話ではあるけれど)
遅かれ早かれ、間違いなく二人は襲われるだろう。
いっそ自分から殴りかかってしまいたいと夏輝は考えるが、この均衡状態を崩して果たした瞬間間違いなく一度に全て襲い掛かってくる。
どうすべきか。通り抜けられるのか。ひそかに夏輝は背負った刀を想う。
「大丈夫、何とかなるよ。そう思っていないとやってられないでしょ?もう進むしかないんだから、色々ぐちゃぐちゃ考えたってどうしようもないじゃない。でしょ?」
そんな夏輝の迷いを見透かしたかのように、囁くようにロセが言葉を紡ぐ。
「……そう、ですね。このまま病院に入ろうと試みましょう」
獣が中でなく外を徘徊しているのならば、外で囲まれて戦うよりも病院内で一体ずつ倒した方がまだマシだ。
しかし、それは同時に病院内にいる人間をより高い危険に晒すということでもある。
(それでも)
結局ここで夏輝達が倒れてしまえばラテアを助け出すことはできない。
全てを何とか出来るご都合主義など存在しないのだから。
「うん、わかったよ夏輝君」
夏輝の言葉にロセは一つ頷いた。
そのまま病院の正門を通り、正面入り口へと走る。
「ぐぅぁるるるっ!」
走り出した瞬間、四方八方から獣が飛び出してくる。
獣と言ってもそのいでたちは獣というべきか戸惑うような外見だった。
なにせウサギの着ぐるみが四つ足で這いまわっており、ところどころ破れた場所から凡そ人間のものとは思えない様々な器官が飛び出ている。
夜の病院ということも相まって、完全にホラーだった。
(元は……多分人間。それも患者どころかスタッフまでだ)
何故そうわかるのか。それは器官と一緒に入院着やスタッフの者と思しき白衣が見え隠れしているから。
スタッフまでとなると、最早中の人間たちの安否は絶望的かもしれない。
獣たちの中には、夏輝達をスルーし外へと飛び出していくものも多かった。
それが命じられたものなのか、彼らの本能によるものなのかはわからない。
『抜けていった……やつらは朝陽たちが何とかしてくれるわ。早く病院内に!』
なんと呼ぶべきか迷ったのだろう。
トロンはやつら、と称し夏輝達を病院内へと急かす。
着ぐるみの化け物が四足で飛び掛かってくるのは見ているだけでもぞくぞくと背筋を冷たいものが這い上るだろう。
風を纏わせた鞘で飛び掛かってくる獣の腹を打ち、地面へと叩きつける。
「ロセさんっ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫。確かに直接戦闘は得意じゃないけど、雑魚に負けるほど弱くはないから」
一方のロセはと言えば、すらりと長いしなやかな脚で思い切り獣を蹴り飛ばしていた。
全く戦闘が駄目というわけではないようで、内心ホっとする。
そのまま何とか走り抜け、病院のエントランスまでなだれ込む。
しかし、中にも大量の着ぐるみもどきが徘徊していた。
「まあ、そうだよね……。地下への入り口は遠呂さんから聞いてるから迷うことはないけど……やるしかないか」
覚悟を決め、刀の柄に手をかけ、脚力強化の魔法を詠唱する。
先導し、ロセが安全に勧めるように活路を切り開かねばならない。
そう決意し、一歩を踏みだした瞬間獣が通路の壁を走りこちらへと飛び掛かってくる。
来るのと同時に一発の銃声が耳に届く。
「ロセ」
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