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EP3 復讐の黄金比8 錆びついた復讐
手よどうか届け
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「なんじゃっ!?まさか、このガラスが打ち破れるわけ!?」
響く破砕音。
内部へとなだれ込み、勅使河原へは目もくれず装置を足蹴にし、ラテアの眠るガラス管を斬る。
隔てていた強化ガラスとは異なり、驚くほどあっけなく脆い。
中に満たされていた溶液が吹き出すのを意にも介さず、夏輝はラテアを受け止める。
「貴様ぁあああっ!」
勅使河原が怒号を上げる。
しかし、今度は夏輝の瞳に勅使河原の姿は映っていなかった。
「ラテア、起きて!しっかりして!」
呼吸と脈を確認する。問題ない。そのことに心底安堵する。
刀を背負いなおし、ラテアを抱き上げ、掴みかかって止めようとしてくる勅使河原を見向きもしないまま風で吹き飛ばす。
一刻の猶予もない。
勅使河原を無力化しなければならないのはわかるが、それよりも優先するべきは瑞雪とトツカの元へ戻り竜を止めることだった。
しかし、ラテアは目覚める気配がない。
「ラテア……そうだよね、そんなすぐに起きられないよね。グリーゾス、聞こえてる?お願い、お姉さんを止めて……!じゃないと、瑞雪さんたちが死んじゃうっ!」
勝手な願いだった。
それでも、頼るほかない。夏輝は叫ぶ。
夏輝が呼びかけるのとほぼ同時に、カっと瞼が開かれる。
「お姉さまが……!?ここに、来ていらっしゃるんですの?」
飛び起きるラテア。しかし、その身体を動かしているのはラテアではない。
「すみません、緊急事態そうですものね……。ラテアさんの中から全て見ていました。何も、できませんでしたが……。ラテアさんは、今深く魂を眠らされております。起きるのに時間がもう少しかかります。……ですから、本当はあまりしたくなかったのですけれど、わたくしが一時的に身体をお借りして動かしますわ」
「うん、わかった……!ありがとう、グリーゾス」
「いいえ。お姉さまを止めなければ、後悔するのはわたくしも一緒です。その機会を下さったことに感謝しかありませんわ」
眠っている、という言葉に安堵する夏輝。
そしてグリーゾスを呼び起こすことに成功したことにもまた胸をなでおろした。
ラテアを抱き上げたまま、夏輝は踵を返す。
倒れた勅使河原が死なない程度に風の刃を叩きこむ。血を吐きながらそれでも勅使河原は口汚く夏輝を罵る。
一切そこに恐れはない。
「トロン!月夜さんに勅使河原の確保の応援をお願いして欲しいんだ」
『わかったわ、すぐに!』
トロンが了承し、夏輝が走り出す。
最早勅使河原に構っている余裕はない。早く、早く瑞雪達の元へ戻らなければ。
通路に戻れば、瑞雪達を置いてきた方向から断続的に爆発音が聞こえていた。
(よかった、まだ戦ってる……!死んでない!)
響く破砕音。
内部へとなだれ込み、勅使河原へは目もくれず装置を足蹴にし、ラテアの眠るガラス管を斬る。
隔てていた強化ガラスとは異なり、驚くほどあっけなく脆い。
中に満たされていた溶液が吹き出すのを意にも介さず、夏輝はラテアを受け止める。
「貴様ぁあああっ!」
勅使河原が怒号を上げる。
しかし、今度は夏輝の瞳に勅使河原の姿は映っていなかった。
「ラテア、起きて!しっかりして!」
呼吸と脈を確認する。問題ない。そのことに心底安堵する。
刀を背負いなおし、ラテアを抱き上げ、掴みかかって止めようとしてくる勅使河原を見向きもしないまま風で吹き飛ばす。
一刻の猶予もない。
勅使河原を無力化しなければならないのはわかるが、それよりも優先するべきは瑞雪とトツカの元へ戻り竜を止めることだった。
しかし、ラテアは目覚める気配がない。
「ラテア……そうだよね、そんなすぐに起きられないよね。グリーゾス、聞こえてる?お願い、お姉さんを止めて……!じゃないと、瑞雪さんたちが死んじゃうっ!」
勝手な願いだった。
それでも、頼るほかない。夏輝は叫ぶ。
夏輝が呼びかけるのとほぼ同時に、カっと瞼が開かれる。
「お姉さまが……!?ここに、来ていらっしゃるんですの?」
飛び起きるラテア。しかし、その身体を動かしているのはラテアではない。
「すみません、緊急事態そうですものね……。ラテアさんの中から全て見ていました。何も、できませんでしたが……。ラテアさんは、今深く魂を眠らされております。起きるのに時間がもう少しかかります。……ですから、本当はあまりしたくなかったのですけれど、わたくしが一時的に身体をお借りして動かしますわ」
「うん、わかった……!ありがとう、グリーゾス」
「いいえ。お姉さまを止めなければ、後悔するのはわたくしも一緒です。その機会を下さったことに感謝しかありませんわ」
眠っている、という言葉に安堵する夏輝。
そしてグリーゾスを呼び起こすことに成功したことにもまた胸をなでおろした。
ラテアを抱き上げたまま、夏輝は踵を返す。
倒れた勅使河原が死なない程度に風の刃を叩きこむ。血を吐きながらそれでも勅使河原は口汚く夏輝を罵る。
一切そこに恐れはない。
「トロン!月夜さんに勅使河原の確保の応援をお願いして欲しいんだ」
『わかったわ、すぐに!』
トロンが了承し、夏輝が走り出す。
最早勅使河原に構っている余裕はない。早く、早く瑞雪達の元へ戻らなければ。
通路に戻れば、瑞雪達を置いてきた方向から断続的に爆発音が聞こえていた。
(よかった、まだ戦ってる……!死んでない!)
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