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9年後
35.アロナ・シューサーの思い
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アロナ・シューサーsid
ーバードナー公爵邸ー
「やあ、アロナ君。ギルナは元気にしているかな?」
「えぇ、父上は元気です。仕事が多いとたまに愚痴を溢していますが。」
「ははっ、そうか。今日はどんな要件かな?」
私は今イズの実家、バードナー公爵邸に来ている。
ことの真相を明らかにする為に。
「イズに...イズリルに会いに来ました。ちょっと確かめたいことがありまして...。」
そう言うとアリム・バードナー公爵閣下は後ろにいる執事と顔を見合わせ、困った顔をした。
「それが...すまないアロナ君、今イズはとこに伏せっていて一向に目を覚まさない状態なんだ。」
「...えっ!?そ、それはいつからですか?」
「そうだな、もう一週間はたつな。」
はぁ、とため息をつき頭を抱えるバードナー公爵閣下。
心なしか目にくまができていて疲れた顔をしている。
一週間前...メイル殿下が毒殺されかけ、倒れた日と同じだ。
「...あの、偶然かもしれませんが、メイル殿下が一週間前毒殺されかけ、一週間意識不明だったんです。」
「なにっ!メイル殿下はご無事で!?」
「はいっ、無事意識を取り戻しました。」
「はぁ、良かった。だが、それと何か関係があるのか?」
「実は、メイル殿下が夢でイズリルに会ったそうです。ロニーの話によれば他者の夢に入り込む魔術があるそうで...でも精神に作用するのであまり使われない魔術なのだそうですが...何かしら今回に限らずメイル殿下の暗殺未遂にイズリルが関わっているのではないかと。」
「イズなら出来そうだな...。」
「そこであくまでも仮説なのですが、今回のメイル殿下の毒殺未遂事件で医者が言っていました。メイル殿下の回復力がすごいと」
「回復力...?」
「はい、普通は後遺症なりなんなり残るはずだと...けれどこれまでの数々のメイル殿下の暗殺未遂、全て回復するのが早いのです。」
「ふむ...確かに言われてみればそうだな、私に来ている報告を見ても回復が早いと書いてある。」
「イズは、もしかしたら何らかの魔術を使ってメイル殿下の傷や毒など、さまざまなものを代わりに受けている...のではないかと。あくまでも仮説なのですが。」
「なっ!?そんな事出来るものなのか...?」
「分かりません。今日このことをイズに問いただしに行こうと思っていたのですが...」
「イズが目を覚まさない...と。」
「はい。」
ふぅ、これはいよいよこの線が濃厚になってきたかもしれませんね。
「セバス、オブシディアン殿を呼んできてくれ」
「はっ、かしこまりました。」
ん?オブシディアン?
「ハーバーが今日来ているのですか?」
「あ、ああ。今ちょっと事情があって公爵邸で預かっていてね。」
「そうなのですね」
ハーバー、ですか...
私はハーバーが少し、いや、かなり苦手なのですが仕方ありませんね。
コンコンッ
「旦那様、オブシディアン殿を呼んで参りました。」
「あぁ、入ってくれ。」
ガチャッ
9年ぶりに見たハーバーは何と言うか、王の様な貫禄があった。
「ハーバー、久しぶりですね」
「...お前は確か私のイズリルに親しげに話しかけていたアロナ・シューサーだったか...」
ひどい言われ様だな
「オブシディアン殿、イズは!イズはどのくらいで目が覚めそうなのか分かるだろうかっ」
「ふむ、そうだな、あれは本人次第だ、生きる気力があれば近々目を覚ますだろう、そうでなければ目は覚まさないかもしれないな」
「っ!ハーバー!どういうことですか!?イズは何か持病でも?それともメイル殿下の代わりにあのアレクシアの毒を!?」
「アレクシアの毒...だと!?それは本当かね、アロナ君!?」
「はい、メイル殿下の今回の毒殺未遂で使われた毒はアレクシアの毒ですっ」
「はぁ、まったく人間どもはこれだから...イズリルも報われんな。」
「オブシディアン殿、やはりイズは何かしら関わっているのか!?」
ハーバーは確実に何か知っていますね...でも
「貴様らに話す事は何も無い。イズリルの無事でも祈っているんだな。私はイズリルの部屋に戻る。」
それだけ言い残すとハーバーはこの部屋を出て行った。
「...あぁ、イズッ」
バードナー公爵閣下の心労も計り知れない。
今日のところは一旦引いた方が良さそうですね。
「バードナー公爵閣下、今日の所はお暇いたします。」
「あぁ、すまないね、アロナ君。」
「いえ、どうかご自愛ください。イズリルが目を覚ました時の為に。」
そう言って私はバードナー公爵邸を後にした。
この不確定な情報は誰にも話さない方がいいな
話してもキリエとロニーまでだ
「イズ...」
どうか早く目を覚まして下さい...
end
アリム・バードナーsid
アロナ君が部屋を退出し、セバスが玄関まで送り届け執務室に戻ってきた。
「イズは、また何か危険なことをしているのだろうか...」
「坊っちゃまの事ですからね、あるいは...」
「はぁ、あれ程危険な事はやめてくれと言ったのに...」
最近まともに眠れない、寝て起きた時イズの体が冷たくなって死んでいたらどうしようと考えてしまうからだ。
オブシディアン殿がいるから万が一はないかもしれないが、我が子が微動だにせずこんこんと眠り続けるなど悪夢以外の何者でも無い。
「どうか、どうか...イズがまた元気になって明るい笑顔を見せてくれます様、神よ、お願い致しますっ」
それから、半年が経った。
end
ーバードナー公爵邸ー
「やあ、アロナ君。ギルナは元気にしているかな?」
「えぇ、父上は元気です。仕事が多いとたまに愚痴を溢していますが。」
「ははっ、そうか。今日はどんな要件かな?」
私は今イズの実家、バードナー公爵邸に来ている。
ことの真相を明らかにする為に。
「イズに...イズリルに会いに来ました。ちょっと確かめたいことがありまして...。」
そう言うとアリム・バードナー公爵閣下は後ろにいる執事と顔を見合わせ、困った顔をした。
「それが...すまないアロナ君、今イズはとこに伏せっていて一向に目を覚まさない状態なんだ。」
「...えっ!?そ、それはいつからですか?」
「そうだな、もう一週間はたつな。」
はぁ、とため息をつき頭を抱えるバードナー公爵閣下。
心なしか目にくまができていて疲れた顔をしている。
一週間前...メイル殿下が毒殺されかけ、倒れた日と同じだ。
「...あの、偶然かもしれませんが、メイル殿下が一週間前毒殺されかけ、一週間意識不明だったんです。」
「なにっ!メイル殿下はご無事で!?」
「はいっ、無事意識を取り戻しました。」
「はぁ、良かった。だが、それと何か関係があるのか?」
「実は、メイル殿下が夢でイズリルに会ったそうです。ロニーの話によれば他者の夢に入り込む魔術があるそうで...でも精神に作用するのであまり使われない魔術なのだそうですが...何かしら今回に限らずメイル殿下の暗殺未遂にイズリルが関わっているのではないかと。」
「イズなら出来そうだな...。」
「そこであくまでも仮説なのですが、今回のメイル殿下の毒殺未遂事件で医者が言っていました。メイル殿下の回復力がすごいと」
「回復力...?」
「はい、普通は後遺症なりなんなり残るはずだと...けれどこれまでの数々のメイル殿下の暗殺未遂、全て回復するのが早いのです。」
「ふむ...確かに言われてみればそうだな、私に来ている報告を見ても回復が早いと書いてある。」
「イズは、もしかしたら何らかの魔術を使ってメイル殿下の傷や毒など、さまざまなものを代わりに受けている...のではないかと。あくまでも仮説なのですが。」
「なっ!?そんな事出来るものなのか...?」
「分かりません。今日このことをイズに問いただしに行こうと思っていたのですが...」
「イズが目を覚まさない...と。」
「はい。」
ふぅ、これはいよいよこの線が濃厚になってきたかもしれませんね。
「セバス、オブシディアン殿を呼んできてくれ」
「はっ、かしこまりました。」
ん?オブシディアン?
「ハーバーが今日来ているのですか?」
「あ、ああ。今ちょっと事情があって公爵邸で預かっていてね。」
「そうなのですね」
ハーバー、ですか...
私はハーバーが少し、いや、かなり苦手なのですが仕方ありませんね。
コンコンッ
「旦那様、オブシディアン殿を呼んで参りました。」
「あぁ、入ってくれ。」
ガチャッ
9年ぶりに見たハーバーは何と言うか、王の様な貫禄があった。
「ハーバー、久しぶりですね」
「...お前は確か私のイズリルに親しげに話しかけていたアロナ・シューサーだったか...」
ひどい言われ様だな
「オブシディアン殿、イズは!イズはどのくらいで目が覚めそうなのか分かるだろうかっ」
「ふむ、そうだな、あれは本人次第だ、生きる気力があれば近々目を覚ますだろう、そうでなければ目は覚まさないかもしれないな」
「っ!ハーバー!どういうことですか!?イズは何か持病でも?それともメイル殿下の代わりにあのアレクシアの毒を!?」
「アレクシアの毒...だと!?それは本当かね、アロナ君!?」
「はい、メイル殿下の今回の毒殺未遂で使われた毒はアレクシアの毒ですっ」
「はぁ、まったく人間どもはこれだから...イズリルも報われんな。」
「オブシディアン殿、やはりイズは何かしら関わっているのか!?」
ハーバーは確実に何か知っていますね...でも
「貴様らに話す事は何も無い。イズリルの無事でも祈っているんだな。私はイズリルの部屋に戻る。」
それだけ言い残すとハーバーはこの部屋を出て行った。
「...あぁ、イズッ」
バードナー公爵閣下の心労も計り知れない。
今日のところは一旦引いた方が良さそうですね。
「バードナー公爵閣下、今日の所はお暇いたします。」
「あぁ、すまないね、アロナ君。」
「いえ、どうかご自愛ください。イズリルが目を覚ました時の為に。」
そう言って私はバードナー公爵邸を後にした。
この不確定な情報は誰にも話さない方がいいな
話してもキリエとロニーまでだ
「イズ...」
どうか早く目を覚まして下さい...
end
アリム・バードナーsid
アロナ君が部屋を退出し、セバスが玄関まで送り届け執務室に戻ってきた。
「イズは、また何か危険なことをしているのだろうか...」
「坊っちゃまの事ですからね、あるいは...」
「はぁ、あれ程危険な事はやめてくれと言ったのに...」
最近まともに眠れない、寝て起きた時イズの体が冷たくなって死んでいたらどうしようと考えてしまうからだ。
オブシディアン殿がいるから万が一はないかもしれないが、我が子が微動だにせずこんこんと眠り続けるなど悪夢以外の何者でも無い。
「どうか、どうか...イズがまた元気になって明るい笑顔を見せてくれます様、神よ、お願い致しますっ」
それから、半年が経った。
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