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一章
ワシの事
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「イサギさん...」
セドがどうしてそんな表情をするのだろう、ワシより悲しそうな顔をしている。
「どうした、そんな顔をしなくても大丈夫だよ、半分はもう諦めているからね。」
するとぐっと拳を握り下を向くセド。
「俺、イサギさんの事何も知らなくて...正直この世界以外に別の世界があるなんて知らなかったです、イサギさんが嘘を言っていない事は信じていますので、今の話が本当なのも分かりました。知らない世界に一人放り出されてどんなに心細かったか、あんな事件が起こってどれだけ大変だったか、それを思うと何の力にもなれなかった自分が情けなくてっ!悔しいです!」
そう言って涙を堪えながら話すところを見ると、どんだけお人好しで優しいんだと思う反面、やっぱりワシの友達はいい奴だと不思議と笑顔になる。
「イサギさん...」
「ミリーさん」
「私、イサギさんには息子を助けていただいた恩があります。それを抜きにしてもたった短い期間一緒にいたイサギさんの人柄を見ただけで信頼できる人だと思っています。私、イサギさんが普通に話して欲しいって言っていたのを思い出したんです、あれは寂しかったからですよね?」
「バレたか」
そう言って苦笑いをする
「私がイサギさんに普通に話すくらいで寂しくなくなるならいくらでも普通に話すわ、私のこと、この世界でのお母さんだと思って接してくれて構わないと...そう思ったの」
「ミリーさん...」
何だか泣きそうになるじゃん、そう思って下を向く。
「この話はこの三人だけの秘密にしましょう。そしてイサギさんはもし外で黒髪を見られたら亡国の王族の隠し子だったと言う設定で通した方がいいわ。」
「それはどうして?」
「王族というだけで身の安全が保証されるも同然だからよ、今回の事件の様なケースは稀よ。出来るだけ身分はあった方が良いわ。」
ふむ、成程。
「わかった。そうするとしよう」
そう言って笑うとセドとミリーさんが安心した顔をした。
するとミリーさんが目を輝かせながら聞いてきた
「ところでイサギさんはどんなお仕事をしていたのかしら?」
「ワシは美容師と言って人の髪を切ったり染めたりヘアアレンジをしたりする仕事だったよ」
「え!?イサギさん結い師だっだんですか!?」
と驚いた顔でセドが言う
「結い師?」
「凄いわ、イサギさん、結い師だったなんて...中々出来る仕事ではないわ!」
「まぁ、あちらの世界では国家試験といって国が定めた試験を突破しなければなれない職業ではあったので、確かに難しいといえば難しいかもしれないね」
するとミリーさんがやや興奮気味に
「この国には片手で数える程度しか結い師は居ないのよ!しかも殆どが貴族の方専属なの!」
「え、じゃあ平民の人、ミリーさんたちみたいな人は?」
「自分で切るしかないの」
えーっ!まじで!?
「じゃあ髪の毛綺麗にしてあげるよ、ちゃんと道具もあるしね!」
「そんなっ!嬉しいけれど結い師に頼むお金がないわ...だから」
「遠慮しないで、ワシのただの善意だから。ワシの事を受け止めてくれたミリーさんやセドにお礼がしたい...って言うのは建前で」
「建前?」
「本当はそろそろ誰かの髪の毛弄りたいと思ってウズウズしてただけだからかな、この子、レオンの髪の毛も綺麗に切ってあげたいしね。」
そう言ってニヤリと笑うとセドやミリーさんはキョトンとした後に笑い出した
「勿論無料で切って整えてあげるのはミリーさんとセドとレオンだけで他の人からはキチンとお金を払ってもらうけど、割安で、でも平民からしたら少し高い金額を設定するつもり。」
「じゃあお言葉に甘えようかしら、ね、セド。」
「う、うん!」
「そう言えばミリーさんは敬語外してくれたけど、セドは外してくれないの?」
そう言ってワシはしゅんとした表情をする
「えっ!?あ、いや、そそそ、そんな!えと、あのっ、けけけ、敬語は無くすよ!もう敬語では話さないから元気出して!イサギさん!」
よしっ、言質はとったぞ。
「ありがとう、セド!」
そう言ってニコリと微笑む
「あらあら、イサギさんってば策士だことね!」
ミリーさんがコッソリと笑っているのが見える
「レオンの髪型だけど、こう言うのはどうかな?」
そう言ってワシはスマホの写真フォルダを開く。
あ、因みにこのスマホの中身、進化していて、使うたびにアプリが増えていったりしてる。
そしてこの写真フォルダの中身はどう言うわけかワシのお客さんがカットモデルしてくれた時の写真がズラッと入っていたのだ。
「えっ!何この魔道具!凄い!」
「本当だわ!」
「まぁ、持ち物についても追々話すよ、それよりこの髪型とかどうかな?マッシュショートカットって言うんだけど...」
「そうねぇ、でもせっかく髪の毛が長いからこのデザインも良いと思うわ!」
ミリーさんが指さしたのは多めのレイヤーが入ったレイヤーカットだった
「俺はこれとか?」
セドはウルフカットがお気に召した様だ
うーん、迷う。
「やっぱりレオンが起きてから決めてもらうのが良いかもね」
「そうね!」
「うん!それがいいね!」
そう言いながら皆んな優しい顔でレオンの寝顔を見つめる
セドがどうしてそんな表情をするのだろう、ワシより悲しそうな顔をしている。
「どうした、そんな顔をしなくても大丈夫だよ、半分はもう諦めているからね。」
するとぐっと拳を握り下を向くセド。
「俺、イサギさんの事何も知らなくて...正直この世界以外に別の世界があるなんて知らなかったです、イサギさんが嘘を言っていない事は信じていますので、今の話が本当なのも分かりました。知らない世界に一人放り出されてどんなに心細かったか、あんな事件が起こってどれだけ大変だったか、それを思うと何の力にもなれなかった自分が情けなくてっ!悔しいです!」
そう言って涙を堪えながら話すところを見ると、どんだけお人好しで優しいんだと思う反面、やっぱりワシの友達はいい奴だと不思議と笑顔になる。
「イサギさん...」
「ミリーさん」
「私、イサギさんには息子を助けていただいた恩があります。それを抜きにしてもたった短い期間一緒にいたイサギさんの人柄を見ただけで信頼できる人だと思っています。私、イサギさんが普通に話して欲しいって言っていたのを思い出したんです、あれは寂しかったからですよね?」
「バレたか」
そう言って苦笑いをする
「私がイサギさんに普通に話すくらいで寂しくなくなるならいくらでも普通に話すわ、私のこと、この世界でのお母さんだと思って接してくれて構わないと...そう思ったの」
「ミリーさん...」
何だか泣きそうになるじゃん、そう思って下を向く。
「この話はこの三人だけの秘密にしましょう。そしてイサギさんはもし外で黒髪を見られたら亡国の王族の隠し子だったと言う設定で通した方がいいわ。」
「それはどうして?」
「王族というだけで身の安全が保証されるも同然だからよ、今回の事件の様なケースは稀よ。出来るだけ身分はあった方が良いわ。」
ふむ、成程。
「わかった。そうするとしよう」
そう言って笑うとセドとミリーさんが安心した顔をした。
するとミリーさんが目を輝かせながら聞いてきた
「ところでイサギさんはどんなお仕事をしていたのかしら?」
「ワシは美容師と言って人の髪を切ったり染めたりヘアアレンジをしたりする仕事だったよ」
「え!?イサギさん結い師だっだんですか!?」
と驚いた顔でセドが言う
「結い師?」
「凄いわ、イサギさん、結い師だったなんて...中々出来る仕事ではないわ!」
「まぁ、あちらの世界では国家試験といって国が定めた試験を突破しなければなれない職業ではあったので、確かに難しいといえば難しいかもしれないね」
するとミリーさんがやや興奮気味に
「この国には片手で数える程度しか結い師は居ないのよ!しかも殆どが貴族の方専属なの!」
「え、じゃあ平民の人、ミリーさんたちみたいな人は?」
「自分で切るしかないの」
えーっ!まじで!?
「じゃあ髪の毛綺麗にしてあげるよ、ちゃんと道具もあるしね!」
「そんなっ!嬉しいけれど結い師に頼むお金がないわ...だから」
「遠慮しないで、ワシのただの善意だから。ワシの事を受け止めてくれたミリーさんやセドにお礼がしたい...って言うのは建前で」
「建前?」
「本当はそろそろ誰かの髪の毛弄りたいと思ってウズウズしてただけだからかな、この子、レオンの髪の毛も綺麗に切ってあげたいしね。」
そう言ってニヤリと笑うとセドやミリーさんはキョトンとした後に笑い出した
「勿論無料で切って整えてあげるのはミリーさんとセドとレオンだけで他の人からはキチンとお金を払ってもらうけど、割安で、でも平民からしたら少し高い金額を設定するつもり。」
「じゃあお言葉に甘えようかしら、ね、セド。」
「う、うん!」
「そう言えばミリーさんは敬語外してくれたけど、セドは外してくれないの?」
そう言ってワシはしゅんとした表情をする
「えっ!?あ、いや、そそそ、そんな!えと、あのっ、けけけ、敬語は無くすよ!もう敬語では話さないから元気出して!イサギさん!」
よしっ、言質はとったぞ。
「ありがとう、セド!」
そう言ってニコリと微笑む
「あらあら、イサギさんってば策士だことね!」
ミリーさんがコッソリと笑っているのが見える
「レオンの髪型だけど、こう言うのはどうかな?」
そう言ってワシはスマホの写真フォルダを開く。
あ、因みにこのスマホの中身、進化していて、使うたびにアプリが増えていったりしてる。
そしてこの写真フォルダの中身はどう言うわけかワシのお客さんがカットモデルしてくれた時の写真がズラッと入っていたのだ。
「えっ!何この魔道具!凄い!」
「本当だわ!」
「まぁ、持ち物についても追々話すよ、それよりこの髪型とかどうかな?マッシュショートカットって言うんだけど...」
「そうねぇ、でもせっかく髪の毛が長いからこのデザインも良いと思うわ!」
ミリーさんが指さしたのは多めのレイヤーが入ったレイヤーカットだった
「俺はこれとか?」
セドはウルフカットがお気に召した様だ
うーん、迷う。
「やっぱりレオンが起きてから決めてもらうのが良いかもね」
「そうね!」
「うん!それがいいね!」
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