13 / 48
一章
ワシの事
しおりを挟む
「イサギさん...」
セドがどうしてそんな表情をするのだろう、ワシより悲しそうな顔をしている。
「どうした、そんな顔をしなくても大丈夫だよ、半分はもう諦めているからね。」
するとぐっと拳を握り下を向くセド。
「俺、イサギさんの事何も知らなくて...正直この世界以外に別の世界があるなんて知らなかったです、イサギさんが嘘を言っていない事は信じていますので、今の話が本当なのも分かりました。知らない世界に一人放り出されてどんなに心細かったか、あんな事件が起こってどれだけ大変だったか、それを思うと何の力にもなれなかった自分が情けなくてっ!悔しいです!」
そう言って涙を堪えながら話すところを見ると、どんだけお人好しで優しいんだと思う反面、やっぱりワシの友達はいい奴だと不思議と笑顔になる。
「イサギさん...」
「ミリーさん」
「私、イサギさんには息子を助けていただいた恩があります。それを抜きにしてもたった短い期間一緒にいたイサギさんの人柄を見ただけで信頼できる人だと思っています。私、イサギさんが普通に話して欲しいって言っていたのを思い出したんです、あれは寂しかったからですよね?」
「バレたか」
そう言って苦笑いをする
「私がイサギさんに普通に話すくらいで寂しくなくなるならいくらでも普通に話すわ、私のこと、この世界でのお母さんだと思って接してくれて構わないと...そう思ったの」
「ミリーさん...」
何だか泣きそうになるじゃん、そう思って下を向く。
「この話はこの三人だけの秘密にしましょう。そしてイサギさんはもし外で黒髪を見られたら亡国の王族の隠し子だったと言う設定で通した方がいいわ。」
「それはどうして?」
「王族というだけで身の安全が保証されるも同然だからよ、今回の事件の様なケースは稀よ。出来るだけ身分はあった方が良いわ。」
ふむ、成程。
「わかった。そうするとしよう」
そう言って笑うとセドとミリーさんが安心した顔をした。
するとミリーさんが目を輝かせながら聞いてきた
「ところでイサギさんはどんなお仕事をしていたのかしら?」
「ワシは美容師と言って人の髪を切ったり染めたりヘアアレンジをしたりする仕事だったよ」
「え!?イサギさん結い師だっだんですか!?」
と驚いた顔でセドが言う
「結い師?」
「凄いわ、イサギさん、結い師だったなんて...中々出来る仕事ではないわ!」
「まぁ、あちらの世界では国家試験といって国が定めた試験を突破しなければなれない職業ではあったので、確かに難しいといえば難しいかもしれないね」
するとミリーさんがやや興奮気味に
「この国には片手で数える程度しか結い師は居ないのよ!しかも殆どが貴族の方専属なの!」
「え、じゃあ平民の人、ミリーさんたちみたいな人は?」
「自分で切るしかないの」
えーっ!まじで!?
「じゃあ髪の毛綺麗にしてあげるよ、ちゃんと道具もあるしね!」
「そんなっ!嬉しいけれど結い師に頼むお金がないわ...だから」
「遠慮しないで、ワシのただの善意だから。ワシの事を受け止めてくれたミリーさんやセドにお礼がしたい...って言うのは建前で」
「建前?」
「本当はそろそろ誰かの髪の毛弄りたいと思ってウズウズしてただけだからかな、この子、レオンの髪の毛も綺麗に切ってあげたいしね。」
そう言ってニヤリと笑うとセドやミリーさんはキョトンとした後に笑い出した
「勿論無料で切って整えてあげるのはミリーさんとセドとレオンだけで他の人からはキチンとお金を払ってもらうけど、割安で、でも平民からしたら少し高い金額を設定するつもり。」
「じゃあお言葉に甘えようかしら、ね、セド。」
「う、うん!」
「そう言えばミリーさんは敬語外してくれたけど、セドは外してくれないの?」
そう言ってワシはしゅんとした表情をする
「えっ!?あ、いや、そそそ、そんな!えと、あのっ、けけけ、敬語は無くすよ!もう敬語では話さないから元気出して!イサギさん!」
よしっ、言質はとったぞ。
「ありがとう、セド!」
そう言ってニコリと微笑む
「あらあら、イサギさんってば策士だことね!」
ミリーさんがコッソリと笑っているのが見える
「レオンの髪型だけど、こう言うのはどうかな?」
そう言ってワシはスマホの写真フォルダを開く。
あ、因みにこのスマホの中身、進化していて、使うたびにアプリが増えていったりしてる。
そしてこの写真フォルダの中身はどう言うわけかワシのお客さんがカットモデルしてくれた時の写真がズラッと入っていたのだ。
「えっ!何この魔道具!凄い!」
「本当だわ!」
「まぁ、持ち物についても追々話すよ、それよりこの髪型とかどうかな?マッシュショートカットって言うんだけど...」
「そうねぇ、でもせっかく髪の毛が長いからこのデザインも良いと思うわ!」
ミリーさんが指さしたのは多めのレイヤーが入ったレイヤーカットだった
「俺はこれとか?」
セドはウルフカットがお気に召した様だ
うーん、迷う。
「やっぱりレオンが起きてから決めてもらうのが良いかもね」
「そうね!」
「うん!それがいいね!」
そう言いながら皆んな優しい顔でレオンの寝顔を見つめる
セドがどうしてそんな表情をするのだろう、ワシより悲しそうな顔をしている。
「どうした、そんな顔をしなくても大丈夫だよ、半分はもう諦めているからね。」
するとぐっと拳を握り下を向くセド。
「俺、イサギさんの事何も知らなくて...正直この世界以外に別の世界があるなんて知らなかったです、イサギさんが嘘を言っていない事は信じていますので、今の話が本当なのも分かりました。知らない世界に一人放り出されてどんなに心細かったか、あんな事件が起こってどれだけ大変だったか、それを思うと何の力にもなれなかった自分が情けなくてっ!悔しいです!」
そう言って涙を堪えながら話すところを見ると、どんだけお人好しで優しいんだと思う反面、やっぱりワシの友達はいい奴だと不思議と笑顔になる。
「イサギさん...」
「ミリーさん」
「私、イサギさんには息子を助けていただいた恩があります。それを抜きにしてもたった短い期間一緒にいたイサギさんの人柄を見ただけで信頼できる人だと思っています。私、イサギさんが普通に話して欲しいって言っていたのを思い出したんです、あれは寂しかったからですよね?」
「バレたか」
そう言って苦笑いをする
「私がイサギさんに普通に話すくらいで寂しくなくなるならいくらでも普通に話すわ、私のこと、この世界でのお母さんだと思って接してくれて構わないと...そう思ったの」
「ミリーさん...」
何だか泣きそうになるじゃん、そう思って下を向く。
「この話はこの三人だけの秘密にしましょう。そしてイサギさんはもし外で黒髪を見られたら亡国の王族の隠し子だったと言う設定で通した方がいいわ。」
「それはどうして?」
「王族というだけで身の安全が保証されるも同然だからよ、今回の事件の様なケースは稀よ。出来るだけ身分はあった方が良いわ。」
ふむ、成程。
「わかった。そうするとしよう」
そう言って笑うとセドとミリーさんが安心した顔をした。
するとミリーさんが目を輝かせながら聞いてきた
「ところでイサギさんはどんなお仕事をしていたのかしら?」
「ワシは美容師と言って人の髪を切ったり染めたりヘアアレンジをしたりする仕事だったよ」
「え!?イサギさん結い師だっだんですか!?」
と驚いた顔でセドが言う
「結い師?」
「凄いわ、イサギさん、結い師だったなんて...中々出来る仕事ではないわ!」
「まぁ、あちらの世界では国家試験といって国が定めた試験を突破しなければなれない職業ではあったので、確かに難しいといえば難しいかもしれないね」
するとミリーさんがやや興奮気味に
「この国には片手で数える程度しか結い師は居ないのよ!しかも殆どが貴族の方専属なの!」
「え、じゃあ平民の人、ミリーさんたちみたいな人は?」
「自分で切るしかないの」
えーっ!まじで!?
「じゃあ髪の毛綺麗にしてあげるよ、ちゃんと道具もあるしね!」
「そんなっ!嬉しいけれど結い師に頼むお金がないわ...だから」
「遠慮しないで、ワシのただの善意だから。ワシの事を受け止めてくれたミリーさんやセドにお礼がしたい...って言うのは建前で」
「建前?」
「本当はそろそろ誰かの髪の毛弄りたいと思ってウズウズしてただけだからかな、この子、レオンの髪の毛も綺麗に切ってあげたいしね。」
そう言ってニヤリと笑うとセドやミリーさんはキョトンとした後に笑い出した
「勿論無料で切って整えてあげるのはミリーさんとセドとレオンだけで他の人からはキチンとお金を払ってもらうけど、割安で、でも平民からしたら少し高い金額を設定するつもり。」
「じゃあお言葉に甘えようかしら、ね、セド。」
「う、うん!」
「そう言えばミリーさんは敬語外してくれたけど、セドは外してくれないの?」
そう言ってワシはしゅんとした表情をする
「えっ!?あ、いや、そそそ、そんな!えと、あのっ、けけけ、敬語は無くすよ!もう敬語では話さないから元気出して!イサギさん!」
よしっ、言質はとったぞ。
「ありがとう、セド!」
そう言ってニコリと微笑む
「あらあら、イサギさんってば策士だことね!」
ミリーさんがコッソリと笑っているのが見える
「レオンの髪型だけど、こう言うのはどうかな?」
そう言ってワシはスマホの写真フォルダを開く。
あ、因みにこのスマホの中身、進化していて、使うたびにアプリが増えていったりしてる。
そしてこの写真フォルダの中身はどう言うわけかワシのお客さんがカットモデルしてくれた時の写真がズラッと入っていたのだ。
「えっ!何この魔道具!凄い!」
「本当だわ!」
「まぁ、持ち物についても追々話すよ、それよりこの髪型とかどうかな?マッシュショートカットって言うんだけど...」
「そうねぇ、でもせっかく髪の毛が長いからこのデザインも良いと思うわ!」
ミリーさんが指さしたのは多めのレイヤーが入ったレイヤーカットだった
「俺はこれとか?」
セドはウルフカットがお気に召した様だ
うーん、迷う。
「やっぱりレオンが起きてから決めてもらうのが良いかもね」
「そうね!」
「うん!それがいいね!」
そう言いながら皆んな優しい顔でレオンの寝顔を見つめる
186
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。
くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。
しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた!
しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!?
よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?!
「これ…スローライフ目指せるのか?」
この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる