グリーン・インパクト

未来が見えない

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第十二話 食糧問題ー1

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 ーー魂鎮めの火台の炎は、朝日と共に消えていた。燃え終わった炭から、微かに煙が立ち上っている。

 ソウとゲンは、空いている家に寝泊まりしていた。二人は、昨日の荘厳な景色に心を奪われ、村人たちと語らい疲れ果て、戻ってきた矢先に泥のように眠ってしまったのだ。

 ゲンは椅子に座ったまま突っ伏して眠っており、なぜか右手には酒瓶のようなものを握っている。ソウは、ゲンの椅子の近くの床で仰向けに寝ており、トレードマークのターバンは首に引っ掛けたまま、よだれを垂らしていた。

「ッッグガっ。」

(ッチ、頭がいてぇ。どうやら飲み過ぎたみたいだな。昨晩は嫌なことを忘れるために、皆で飲んだからな。)

 ゲンは、昨晩飲み明かした記憶を思い出していた。そして、凝り固まった身体をほぐそうと伸びをした、その瞬間――

 ーガタッ。
(ゴンッッ!)

「いっでっっええええ!」

 ゲンが伸びをした拍子に動いた椅子が、ソウの鼻先にクリーンヒットしたのだった。ソウは鼻を押さえ、床の上で悶絶している。

「あ? なんだ、お前、そんなとこにいたのか。ちゃんとベッドで寝ろ。まったく、誰が躾をしてるんだか。」

 ゲンは、やれやれといった様子で呆れている。

「くそ、毎回毎回痛えよ! 躾って……あんただよ! あと、親父に言われたかねえし! 自分だって、そんな突っ伏した体勢で寝てるくせによォ!」

 子が子なら親も親である。二人は顔を突き合わせ、睨めっこを始めた。

 ーーすると、こんこん、とドアをノックする音が響いた。

「あー? 誰だ?」

「ゲンさん、ラルクです。助けてください。今、食糧庫でちょっと……。」

(ガチャッ。)

「何だよ、ラルク。」

 機嫌が悪そうに、ゲンは白銀の髪をぽりぽりと掻きながらラルクに問う。

「それが、食糧庫がもう尽きかけているんです。このままでは、村の皆が餓死してしまいます。あの作戦のことも理解していますが、こちらもどうにかしてもらわないと……。」

 ゲンは、足早に説明するラルクを横目に、テーブルに置いてあった果実をひと齧りし、食べながら答えた。

「もぐもぐ……ああ、その件な。考えてはいるぞ。それも水流囲い作戦の前座だ。本作戦の模擬として、その課題を先にクリアしておこうと思ってな。なあ、ソウ?」

「親父、本当にやるのか。」

「当たり前だ。お前を鍛えるためだ。は、練習するに越したことはないだろ?」

 ソウは、がっくりと肩を落とした。

「ゲンさん、それってどういう意味ですか?」

「ああ、食糧問題の囮役だ。こいつは身体も俺たちより一回り小せえから、エサとしてちょうどいいと思ってな。」

 ソウは、ジト目でゲンを睨みつける。

「釣るって、何をだよ? そんな大量に釣れるのか。」

「ああ、習性を活かす。狙うのは肉食の魚だ。巨大淡水魚のシクティス。奴らは小型の動物を狙い、決まって血の匂いに釣られてやってくる。何より、ここから北東にある水源に生息しているからな。」

「なるほど……うまくいけば、食糧も確保できそうですね。ああ、そういえば、手伝いを志願している人たちが広間に集まっています。向かう前に顔を出してあげてください。」

「おー、わかった。よし、ソウ、行くぞ。支度しろー。」

「親父、いつかお前を殺す。」

 ソウは、スッとゲンを睨みつけた。

「お前、いきなり物騒なこと言うんじゃねえよ。せっかくフライバエの形態変化ができるようになったんだ。もっと練習したいだろ? ほら、母さんの形見もそう言ってる。」

 ゲンは、胸元で鈍く光る弾丸の首飾りに触れ、顔を引きつらせながらソウを見つめた。

「それとこれは関係ないだろー!」

 ソウは声を荒げ、ゲンに向かって走り出す。ゲンは「ヤベ」と呟き、玄関から飛び出すようにして逃げ出した。ラルクは、やれやれといった表情で、二人の後を追っていくのだった。
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