グリーン・インパクト

未来が見えない

文字の大きさ
14 / 14

第十三話 食糧問題ー2

しおりを挟む
 ゲンとソウは、広間へ向かう途中で走ったせいか、肩で息をしていた。

「親父ぃ、俺は負けねえ。俺が一番に広場に着くからな。」
「馬鹿野郎。この俺の俊足に敵うはずがねえだろ。」

 二人は、先ほどまで揉めていたことなどすっかり忘れ、なぜか徒競走でどちらが先に着くかを競い合っている。

(なーにしてんだ、このバカ親子は)

「あんたら、広場に行くんだろ。そっちは外に出る方向じゃねえか。待ってる人がいるんだ、頼むから茶番はやめてくれよ。」

 ラルクは呆れた顔で、違うと示すように進行方向を指差した。

「「あ? 誰が茶番だって?」」

(あ、ダメだ。こいつら)

「ほーれ、落ち着かんか、お主ら。広間まで行く必要はないぞ。ここに連れてきた。狩猟班志望の者たちじゃ。」

((よろしくお願いします!))

 数名の村人が三人に向かって挨拶をする。その中に、ソウと同じくらいの年齢の子が一人いた。
 茶色のストレートヘアを黒いゴムのようなもので後ろに束ね、ポニーテールにしている。紋様の入ったワンピース姿の少女だ。
 少女は一歩踏み出して――

「村の外れに住んでる親子がいるって噂で聞いたけど……私と背、同じくらいか、ちょっと小さいくらいじゃない?」

 炉端の石を見るような目で、少女はソウを値踏みするように見て、馬鹿にした口調で言った。

「あ? 誰だよ、お前。てか、俺の方が背ぇ高ぇし――!」

 言い返そうとした瞬間、ソウは無意識に爪先立ちになっていた。

「え、ダッサ。爪先立ちって、子供なんだね~。」

 少女は容赦なく追い打ちをかける。

「こ、こ、こいつ……クソムカつくんだが!!」

 ソウは怒りでワナワナと震える。しかし、相手がか弱そうな少女だということもあり、理性でどうにか踏みとどまっていた。

「まあまあ、その辺にしとけって。オレッチはサブだ。で、お前に茶々入れたこの子はレイだ。よろしくな。」

 レイは「フンっ。」と鼻を鳴らし、ぷいとその場から外れた。ソウはまだ怒りが収まらず、小刻みに震えている。
 サブはやれやれといった様子で、ボロボロの衣服を揺らした。尖ったモヒカン頭が特徴的で、日差しがそれを照らしている。

「おう、サブ。久しぶりだな。相変わらず尖ってんな、その頭。調子はどうだ?」
「あ、ゲンの旦那。久しぶりっすね。もちろん元気っすよ。ただ、オレッチにも家族ができたんすけど……今回の件で……。」

 サブとゲンは以前、この村で同じ狩猟班として一度狩りに出たことがあった。その際、ゲンはサブから狩猟のノウハウを教わっていたのだ。

「さっきの子か? にしては、歳が合わんが。」
「違うっすよ。あの子は、親を前の狩りで亡くしてるんす。だから代わりに、オレッチが親代わりしてるだけっすよ。」

「ほう……なるほどな。お前も、もうそんな歳か。時間が経つのは早いもんだ。」

 ゲンがしみじみと思っていると、ラルクが口を挟んだ。

「ゲンさん、そろそろ作戦の説明を求めてますよ。」
「そうじゃ。ワシも聞いておらんからのう。」

「そういえば……。」

 ゲンは口元に手を当て、今回編成される人員へ向けて声を張り上げた。

「よし。今回の食糧問題を解決する作戦――。」

(ドラムロール)

「巨大魚来い来い囮作戦だ!!」

(デッカいテロップ)

 反応は薄かった。
 レイは馬鹿らしいとでも言いたげに冷たい視線を向け、サブは好奇心からか目を輝かせている。ヤンガは首をかしげ、ラルクは苦笑いを浮かべていた。

 そして、囮役になるソウは――

(せめて、もう少しカッコいい作戦名にしろよ、バカ親父……)

 そう心の中で毒づきながらも、ソウは理解していた。
 これは模擬戦でもある。
 だからこそ、内心では――成功するかどうか、その一点に緊張していたのだ。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

恋愛リベンジャーズ

廣瀬純七
SF
拓也は、かつての恋人・純への後悔を抱えたまま生きてきた。ある日、過去へ戻れる不思議なアプリを手に入れるが戻った先で彼を待っていたのは、若き日の純ではなく――純そのものになってしまった自分自身だった。かつての恋人とやり直すはずが、過去の自分を相手に恋をするという奇妙で切ない関係が始まっていく。時間と心が交差する、不思議な男女入れ替わりストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...