何でも屋さん

みのる

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第5話(3) 聖なる日のちょっと変わったお客様※

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同じく聖バレンタインデー。可愛らしいお客様、少し変わった男子学生…青年に引き続き、またこの店に引き寄せられるかのようにやって来たお客様。ガラガラガラッ!と豪快に引き戸を開けて、しきりにキョロキョロしながら中に入って来た、1人のちょっとツリ目な長い髪の女の子。

その時、何故か再度来店しちょうど居合わせた例の青年が店の商品を見るフリしながら、その子の可憐さをチラ見して思わず暫し見とれる。

店主は女の子に告げる。

『いらっしゃい。ゆっくり見ていっとくれ?』

女の子(年齢不詳)は店内を暫くじぃっと睨むように見つめていたが、やがて店主に問いかけてきた。

『このみせには“ちょこ”とやらはないのか?』

その声のあまりのハスキーさに、店主も耳にした青年も面食らった。だが、店主は己の仕事を忘れることは無かった。

『あるよ?…どんなのが欲しいんだい?』

するとその子は、意外な言葉を口にした。なんの恥じらいもなく。

『おんなのはだかのむねのかたちをした、できるだけほんものにちかいものがほしい。』

傍らで聞いてた青年は、“そんな物、あるのかよ!?”と一瞬考えたが、ここは『何でも屋』。無さそうな物も有るのが当然である。
すると店主は答えた。
『あるよ?ちょっと高いけども嬢ちゃん、金は持ってるのか?』

すると女の子は自慢げに、懐から10000円札を3枚出して、ショーケースの上に並べて店主に見せた。そしてこう言った。

『とりあえずこれだけある。…たりないか?』

店主の顔色を伺いながら。店主はにこやかに笑い、女の子を安心させた。

『それだけあれば、他の物も買えるよ?やはり、プレゼント用かい?』

店主がそう聞くと、女の子はホッとしてコクリと頷いた。

店主は再度、タラコ唇さんと交代し彼女にラッピングを任せた。そしてまた3分位した頃

『お嬢ちゃん!出来たよ?』

女の子はタラコ唇さんを恐れる事無く綺麗にラッピングされた商品を受取り、代金を忘れずに支払い何処かウキウキを隠せない様子で店を出て行った。

(この話の後程は別のお話の何処かにあります。さぁ!皆で当ててみましょう♪)←当てても残念な事に何も出ませぬ。

一部始終を見ていた青年、こころの中で思う。
”あの子から例のチョコを貰えるヤツ、羨まし過ぎるぞ……!?“青年は今の女の子に一目惚れをしてしまっていた。

その子の現状を青年が知ることになる……考えただけでも気の毒過ぎるっ!!
→まぁ、青年と彼女との出会いは後にも先にもこれっきりでございましたが。

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