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第12話 車椅子の少女と義足【前編】(超長編!なのでまた分けます。)
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???
『· · ·そろそろ行こうか。』
???
『· · ·そうですね。』
???
『· · ·どこへ行ってもいつも結果は同じだし、そんな怪しげな所へ行っても同じでしょ?』
???
『うちが取引先してる所の会長さんに勧めて貰ったんだ、何でも死んだ孫と会話をす事が出来たらしい。とりあえず行くだけ行ってみよう· · ·』
暗い顔の3人が車へ乗り込み出発する、車内は終始無言で重苦しい空気が漂っている· · ·
ある日の夕刻に何でも屋の前に止まる高級車。停車と共に夫婦らしき男女が車から降りトランクへ収納してた折りたたみ式の車椅子を取り出し、後部座席横へ移動させる。父親らしき男性が娘らしき女の子を抱きかかえ、後部座席から車椅子に移らせる。
ガラガラガラっと引き戸が開き、店内に入ってくる車椅子に乗せられた娘らしき女の子と夫婦らしき男女。
『いらっしゃい』
『にゃ~ん♪』
店主の挨拶と共にたまのお出迎え。
父親らしき中年男性が店主に訊ねる。
『こちらには何でも有って無い物は無いと取引先の会長に太鼓判を押されて来たのですが義足は有りますか?』
店主はもちろんとばかりに答える。
『義足なら有るよ』
母親らしき中年女性が、義足が必要な娘の状態をポツポツと語る。
『ただ…この子の場合は特殊でして· · ·。クラブで夜遅くまで練習してから帰宅途中で事故に巻き込まれ、その際に片側の骨盤ごと粉砕され再建するのも難しく全て切除すると言う事になりました· · ·。義足を色々と探してみたのですが、骨盤が無いと上手く固定する事も出来ない様で見つかりません。
見ての通りまだ若く、これからの人生なのに歩く事も出来ず、酷い傷跡も残ってしまいました。結婚の事も有りますし、これから先ずっと車椅子で過ごすのかと思うと· · ·
それよりも女の子なのにひどい傷跡まで残って…』
と涙ながらに話す母親。
娘はこの店が信用ならないらしく、
『義足の製造メーカーにも無いのに、こんな小さい店に有るわけ無いじゃん!』
と吐き捨てる。
父親が、
『コラッ!やめなさい!!』
と娘を叱り、
『失礼な事を言ってすみません』
と店主に謝罪する父親。
娘は更に、
『それに今更義足付けてもリハビリしないといけないし、大会に間に合う訳ないじゃん!仮に合う義足が有ったとしても機械的な物か足に見せかけただけで自分の足と太さが合わない“まがい物”だけじゃん、そんなのいらないわよ!!』
と冷たく言い放つ少女。
父親がその失礼さに腹を立て、
『いい加減にしなさい!!』
と娘を叱る。
『娘は陸上の全国大会へ出る予定で、それをチャンスに将来陸上選手になる夢を持ち毎日激しい練習をこなしてたのですが、片足を失ってしまい陸上選手への夢も奪われ…ヤケになっている様でして、気持ちは分からなくも無いのですが· · ·』
と涙目になりながら父親は店主に話しかける。
娘は己の感情を隠せず、
『両足の有る父さんに私の気持ちなんか分かるハズ無いでしょ!?』
父親に怒鳴る。
そんな娘に父親は、
『いい加減にしろ!!』
…と頬を平手打ちした。
『…ッ!!』
娘は俯き唇を噛み締める。
『みっともない所をお見せしてしまってすみません…』
と店主に謝罪する父親。
『その様なわけで普通の義足では装着出来ないのです。藁にでも縋る思いで来ましたが· · ·すみません。義足の製造メーカーにも無いのに有るはず無いですよね…お騒がせしました』
と父親が言い、3人は帰ろうする。
『· · ·義足なら有るよ』
と意を決した様に言う店主。
父親は耳を疑うかの如く、
『は?』
母親と娘も聞き間違いかと思い、
『えっ?』
店主に聞き返す。
『それじゃあ、お嬢ちゃんこれを装着して貰いたいんだけど』
と店主は義足を取り出した。
娘は店主を睨みつけながら、
『おじさん!何の嫌がらせ!?普通の義足じゃ装着出来ないって言ったよね!?
どこの義足の製造メーカーに行っても無いのにこんな所に有るわけないでしょう?』
そう叫んだ。
店主はそんな娘の言葉を聞いてはいないのか父親に、
『少々高価な品だけど良いかい?』
と問いかける。
呆然としていたが我に帰り父親が、
『い、いかほどでしょうか…?』
おそるおそる聞く。
店主は何でもないことのように、
『え~とこれだと1000万だね』
とてつもない高額をサラッと言う。
父親は更に耳を疑い、
『は?いやいや高すぎるでしょう?数10万から高くても100万円程度でしょう?』
と怪訝な顔をする。
店主したり顔で、
『これは特別製だからね』
とニヤニヤ笑っている。
『まあとりあえず装着してみてから購入するか考えてみてよ』
と娘の方へ向き、
『それでだお嬢ちゃん、装着するのにスカートをめくらなければいけないんだけど· · ·』
『おーい、義足を装着してやってくれ!』
と店の奥へ声をかける店主。
『はいよ~!』
と奥さんが奥から出てきた。
『それじゃあお嬢ちゃん、こっちへ来てちょうだい』
と店主達から見えない隅の方へ娘を呼び出す。
娘が車椅子で隅へ移動すると、
『じゃあスカートを捲っておくれ』
と奥さんが言う。
娘が恥ずかしそうにスカートを捲り上げると
『これをここにこうしてっと…』
と独り言を言いながら奥さんは義足を娘に装着する。
『えっ?なに、なに?どうなってるの?何で?嘘?』
と奥で娘が何かに驚いた様に呟いている。それが気になるのかソワソワしだす夫婦。
『よし!無事に装着出来たし、向こうへ行こうか』
と奥さんが言い、義足を付けた娘が乗った車椅子を押してくる。
『· · ·そろそろ行こうか。』
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『· · ·そうですね。』
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『· · ·どこへ行ってもいつも結果は同じだし、そんな怪しげな所へ行っても同じでしょ?』
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『うちが取引先してる所の会長さんに勧めて貰ったんだ、何でも死んだ孫と会話をす事が出来たらしい。とりあえず行くだけ行ってみよう· · ·』
暗い顔の3人が車へ乗り込み出発する、車内は終始無言で重苦しい空気が漂っている· · ·
ある日の夕刻に何でも屋の前に止まる高級車。停車と共に夫婦らしき男女が車から降りトランクへ収納してた折りたたみ式の車椅子を取り出し、後部座席横へ移動させる。父親らしき男性が娘らしき女の子を抱きかかえ、後部座席から車椅子に移らせる。
ガラガラガラっと引き戸が開き、店内に入ってくる車椅子に乗せられた娘らしき女の子と夫婦らしき男女。
『いらっしゃい』
『にゃ~ん♪』
店主の挨拶と共にたまのお出迎え。
父親らしき中年男性が店主に訊ねる。
『こちらには何でも有って無い物は無いと取引先の会長に太鼓判を押されて来たのですが義足は有りますか?』
店主はもちろんとばかりに答える。
『義足なら有るよ』
母親らしき中年女性が、義足が必要な娘の状態をポツポツと語る。
『ただ…この子の場合は特殊でして· · ·。クラブで夜遅くまで練習してから帰宅途中で事故に巻き込まれ、その際に片側の骨盤ごと粉砕され再建するのも難しく全て切除すると言う事になりました· · ·。義足を色々と探してみたのですが、骨盤が無いと上手く固定する事も出来ない様で見つかりません。
見ての通りまだ若く、これからの人生なのに歩く事も出来ず、酷い傷跡も残ってしまいました。結婚の事も有りますし、これから先ずっと車椅子で過ごすのかと思うと· · ·
それよりも女の子なのにひどい傷跡まで残って…』
と涙ながらに話す母親。
娘はこの店が信用ならないらしく、
『義足の製造メーカーにも無いのに、こんな小さい店に有るわけ無いじゃん!』
と吐き捨てる。
父親が、
『コラッ!やめなさい!!』
と娘を叱り、
『失礼な事を言ってすみません』
と店主に謝罪する父親。
娘は更に、
『それに今更義足付けてもリハビリしないといけないし、大会に間に合う訳ないじゃん!仮に合う義足が有ったとしても機械的な物か足に見せかけただけで自分の足と太さが合わない“まがい物”だけじゃん、そんなのいらないわよ!!』
と冷たく言い放つ少女。
父親がその失礼さに腹を立て、
『いい加減にしなさい!!』
と娘を叱る。
『娘は陸上の全国大会へ出る予定で、それをチャンスに将来陸上選手になる夢を持ち毎日激しい練習をこなしてたのですが、片足を失ってしまい陸上選手への夢も奪われ…ヤケになっている様でして、気持ちは分からなくも無いのですが· · ·』
と涙目になりながら父親は店主に話しかける。
娘は己の感情を隠せず、
『両足の有る父さんに私の気持ちなんか分かるハズ無いでしょ!?』
父親に怒鳴る。
そんな娘に父親は、
『いい加減にしろ!!』
…と頬を平手打ちした。
『…ッ!!』
娘は俯き唇を噛み締める。
『みっともない所をお見せしてしまってすみません…』
と店主に謝罪する父親。
『その様なわけで普通の義足では装着出来ないのです。藁にでも縋る思いで来ましたが· · ·すみません。義足の製造メーカーにも無いのに有るはず無いですよね…お騒がせしました』
と父親が言い、3人は帰ろうする。
『· · ·義足なら有るよ』
と意を決した様に言う店主。
父親は耳を疑うかの如く、
『は?』
母親と娘も聞き間違いかと思い、
『えっ?』
店主に聞き返す。
『それじゃあ、お嬢ちゃんこれを装着して貰いたいんだけど』
と店主は義足を取り出した。
娘は店主を睨みつけながら、
『おじさん!何の嫌がらせ!?普通の義足じゃ装着出来ないって言ったよね!?
どこの義足の製造メーカーに行っても無いのにこんな所に有るわけないでしょう?』
そう叫んだ。
店主はそんな娘の言葉を聞いてはいないのか父親に、
『少々高価な品だけど良いかい?』
と問いかける。
呆然としていたが我に帰り父親が、
『い、いかほどでしょうか…?』
おそるおそる聞く。
店主は何でもないことのように、
『え~とこれだと1000万だね』
とてつもない高額をサラッと言う。
父親は更に耳を疑い、
『は?いやいや高すぎるでしょう?数10万から高くても100万円程度でしょう?』
と怪訝な顔をする。
店主したり顔で、
『これは特別製だからね』
とニヤニヤ笑っている。
『まあとりあえず装着してみてから購入するか考えてみてよ』
と娘の方へ向き、
『それでだお嬢ちゃん、装着するのにスカートをめくらなければいけないんだけど· · ·』
『おーい、義足を装着してやってくれ!』
と店の奥へ声をかける店主。
『はいよ~!』
と奥さんが奥から出てきた。
『それじゃあお嬢ちゃん、こっちへ来てちょうだい』
と店主達から見えない隅の方へ娘を呼び出す。
娘が車椅子で隅へ移動すると、
『じゃあスカートを捲っておくれ』
と奥さんが言う。
娘が恥ずかしそうにスカートを捲り上げると
『これをここにこうしてっと…』
と独り言を言いながら奥さんは義足を娘に装着する。
『えっ?なに、なに?どうなってるの?何で?嘘?』
と奥で娘が何かに驚いた様に呟いている。それが気になるのかソワソワしだす夫婦。
『よし!無事に装着出来たし、向こうへ行こうか』
と奥さんが言い、義足を付けた娘が乗った車椅子を押してくる。
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