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第11話 苦情(長編)
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ここはとある住宅街、めったに事件も起こる事もない平穏な場所に怒鳴り声が轟いていた。
『おっさん!!いったいどうしてくれるんだよ!?楽しみにしてたキャンプだったのによ、おっさんの所為で全て台無しになったじゃないか!!』
青年が店主を怒鳴りつけている。
店主は心外そうな顔をしながら
『いったい何を怒ってるのかね?渡した品は注文どおりの物だっただろう?』
青年は抱えていた不満をぶつける。
『確かに俺が注文したとおりの品質物だったよ。だがな、あれはいったいなんだよ!?どれもこれも規格外過ぎて笑えないレベルだったぞ!?物には限度ってのがあるだろうが!!』
散々怒鳴ってる青年の怒りは一向におさまる気配が無い。
店主は青年を宥める。
『怒鳴ってるばかりじゃ何に怒ってるのか分からんよ、何が有ったのか順を追って詳しく説明してくれたまえ』
怒鳴り散らしていくぶんか、冷静になった青年。
怒りに達した原因を語り出した。
『河原で遊んでそろそろ昼食作りしようって事になって、切れ味の良い包丁で食材を切りはじめると食材はともかく、ほとんど力も入れて無いのにまな板まで真っ二つになっちまった。慌てて止めたんだが、テーブルにも若干刃が入って危うくテーブルまで真っ二つになる所だった。あまりの切れ味に友人達も苦笑いしてたぜ…。
でだ、一緒に行ってたメンバーの1人が包丁に刻印されてることに気付き、なんて書かれてるか確認したら斬鉄包丁って刻印されてんじゃねぇか、メンバー全員でしばらくの間固まってたよ…』
店主は言う。
『しかし切れ味の良いと注文され…』
店主の言葉を遮るように青年は、
『だから、限度が有るだろうって言ってるんだよ!!斬鉄ってなんだよ、鉄なんか包丁で切るような物じゃないだろうが!!ゼェーゼェー』
と、青年が再加熱して怒鳴る。
店主は静かに、
『少し落ち着け』
と水を出す。
ゴクッゴクッゴクッ…一気に飲み干す青年。
『プハーっ!!で気を取り直して火を起こそうって事で火種へ着火剤を放り込んだら、そしたらこれがまた注文どおりにゴウゴウとよく燃えるんだ…』
店主は満足気に、
『上手く火もついて良かったじゃないか(笑)』
青年は更に続ける。
『おっさん、本当にそれが良かったと思うのか?ゴウゴウとよく燃えてるんだぜ、巨大な火柱を上げながら…』
青年は涙目になりながら、
『我に返って大慌てで消化作業をしたんだよ。隣にキャンプしに来てた人達も巻き込んでな、皆から“なんて危ない真似をするんだ!?“って口々に文句を言われ、俺は泣きながら必死に火を消したよ。
あれはいったい何でできてるんだ?ガソリン使ってもあそこまで燃え上がらないぞ!?』
店主困り顔で、
『そう言われても、こちらも注文された物を出しただけだからな。それと材質は企業秘密だ』
青年はまだ言い足りないらしい。
『何とか気を取り直して午後からまた泳いだりして遊んで、夕方に暗くなる前にテントを設置しておこうって事でテントを広げたんだ。これがまた広くてな、メンバー全員が大の字に寝ても広かったな…』
と遠い目をしながら話す。
店主が自慢げに、
『そうだろ、なんたって特別製だからな』
青年は店主に訊ねる。
『でだおっさん、1つ聞きたいんだが、あれはいったい何人用のテントなんだ!?俺は確かキャンプに行くからって事でテントも注文したよな!?なのになんでサーカスのテント並みに広いテントなんかよこしたんだ!?』
店主は、
『いや~、広いテントをくれって言われたか…
『何回も言ってるけど、物には限度が有るだろっつってんだよ!!なぁ、いったい誰がキャンプするのにサーカステントなんか持って行くんだ?
でだ、テントの設置も終わり夕飯の準備に取り掛かるんだが、散々やらかした俺にはもう何もさせてくれなかったんだ、他の奴らはワイワイ楽しそうにやってる横で俺は夕食ができるまで体育座りをして待ってたんだ。
夕食も済んで辺りが暗くなってきたから嫌な予感がしながらも、例の明るいランプを灯したんだ。そしたら明るい事明るい事!まるで昼間かってくらい明るいんだ、いやむしろ眩しくて思わずメンバー全員で目を瞑り両手で目を覆いながら、“目がぁ~目がぁ~っ!?”て叫びながらゴロゴロとのたうち回っちまったぜ、隣の人達から”うるさいし明る過ぎてキャンプの雰囲気が台無しだ!“って怒鳴られるわで最悪だった。
手探りで何とかランプを消したけど俺はテントの隅の方で小さくなって肩身の狭い思いをしたんだ』
店主は不思議になり、
『せっかく広いテントを渡してるのになんでテントの端で小さくなってるんだ?広さが足りなかったか?』
青年はまた怒鳴る。
『ちげーよ、そう言う意味じゃないつーの!!気まずくて隅で小さくなってんだよ!!それに誰の所為だと思ってんだよ!?俺はなグループメンバー達に2度とキャンプには誘わないと宣言されたんだぞ!?どう責任とってくれるんだよ?』
青年は怒りのあまり、店主の胸ぐらを掴む。
その時、店内にガラガラガラっ!と客の来店を知らせる音が鳴り響き、中年の男性が店内に入ってきた。
『何事かね?外にまで声が響いてるぞ。騒々しい』
と声をかける。
青年が振り向き謝罪する。
『あ、外まで聞こえてましたか、すみません…』
中年の男性は青年に見覚えがあるのか、
『おや?君は確か…』
青年は苦笑しながら、
『あ、あなたは…!!先日は色々とゴタゴタに巻き込んですみませんでした。消火の時助かりました』
中年の男性は納得がいったように、
『なるほど、此処で買った道具を使ってたって事か!』
青年は言う。
『はい、その事で店主に苦情を入れてたわけで…』
中年の男性に聞かれる。
『1つ聞きたいが、君はここで買うの初めてなのかね?』
青年は答える。
『何回か買った事が有って、シャープペンと消しゴム、甘栗天津、後はカノジョカナ…』
最後の方は消え入りそうな声になる。
中年の男性はキッパリと言った。
『だったら君の不注意でも有るね』
青年は驚いて、
『え?何で?悪いのは店主でしょう?』
中年の男性は続けた。
『じゃあ聞くけど、キャンプ道具を買う時に余計な事を言わなかったかね?』
青年は思いだしながら、
『余計な事は何も…ただ切れ味の良い包丁と…
『原因はそれだよ』
青年は男性に食ってかかる。
『はぁ?なんで?少しでも良い道具を用意するのは当たり前じゃないの?』
中年の男性は更に、
『じゃあ今までに買った物の事を事をよく思い返してみたまえ』
青年は必死で思い出しながら…
『思い返せっても、芯が減らないシャープペンに、減らない消しゴムに…』
ハッとした様な顔になり、
『ただ栗を出してくれって言っただけなのに、今までに食べた事が無いほど美味い甘栗天津…』
中年の男性は満足そうに、
『何が原因かはわかったね?この店の品は何も言わなくても1級品…いや、下手をすれば規格外の物が出てくるんだ。実はね、私もキャンプに行く直前に…此処でキャンプ道具を1式買ったんだよ、ただね買う時に普通のキャンプ道具をくれと言って買ったんだよ』
青年は漸く納得する。
『あぁ、よく考えると今まで買った物の事を全く理解せずに少しでも良い道具をと注文したの悪かったんだな…』
中年の男性は、
『そういう事さ、まあ店主から事前に品質の説明が有っても良いんだけどね。ハッハッハッ!!』
青年は申し訳無さそうに、
『朝っぱらから怒鳴って悪かったな、おっさん』
と謝罪する。
店主は何でも無いことのように、
『な~に構わんよ、私は注文を受けただけだ。その事で苦情が出ても仕方ないさ』
『じゃあ、また来るよ』
と言い残し立ち去る青年だった。
『おっさん!!いったいどうしてくれるんだよ!?楽しみにしてたキャンプだったのによ、おっさんの所為で全て台無しになったじゃないか!!』
青年が店主を怒鳴りつけている。
店主は心外そうな顔をしながら
『いったい何を怒ってるのかね?渡した品は注文どおりの物だっただろう?』
青年は抱えていた不満をぶつける。
『確かに俺が注文したとおりの品質物だったよ。だがな、あれはいったいなんだよ!?どれもこれも規格外過ぎて笑えないレベルだったぞ!?物には限度ってのがあるだろうが!!』
散々怒鳴ってる青年の怒りは一向におさまる気配が無い。
店主は青年を宥める。
『怒鳴ってるばかりじゃ何に怒ってるのか分からんよ、何が有ったのか順を追って詳しく説明してくれたまえ』
怒鳴り散らしていくぶんか、冷静になった青年。
怒りに達した原因を語り出した。
『河原で遊んでそろそろ昼食作りしようって事になって、切れ味の良い包丁で食材を切りはじめると食材はともかく、ほとんど力も入れて無いのにまな板まで真っ二つになっちまった。慌てて止めたんだが、テーブルにも若干刃が入って危うくテーブルまで真っ二つになる所だった。あまりの切れ味に友人達も苦笑いしてたぜ…。
でだ、一緒に行ってたメンバーの1人が包丁に刻印されてることに気付き、なんて書かれてるか確認したら斬鉄包丁って刻印されてんじゃねぇか、メンバー全員でしばらくの間固まってたよ…』
店主は言う。
『しかし切れ味の良いと注文され…』
店主の言葉を遮るように青年は、
『だから、限度が有るだろうって言ってるんだよ!!斬鉄ってなんだよ、鉄なんか包丁で切るような物じゃないだろうが!!ゼェーゼェー』
と、青年が再加熱して怒鳴る。
店主は静かに、
『少し落ち着け』
と水を出す。
ゴクッゴクッゴクッ…一気に飲み干す青年。
『プハーっ!!で気を取り直して火を起こそうって事で火種へ着火剤を放り込んだら、そしたらこれがまた注文どおりにゴウゴウとよく燃えるんだ…』
店主は満足気に、
『上手く火もついて良かったじゃないか(笑)』
青年は更に続ける。
『おっさん、本当にそれが良かったと思うのか?ゴウゴウとよく燃えてるんだぜ、巨大な火柱を上げながら…』
青年は涙目になりながら、
『我に返って大慌てで消化作業をしたんだよ。隣にキャンプしに来てた人達も巻き込んでな、皆から“なんて危ない真似をするんだ!?“って口々に文句を言われ、俺は泣きながら必死に火を消したよ。
あれはいったい何でできてるんだ?ガソリン使ってもあそこまで燃え上がらないぞ!?』
店主困り顔で、
『そう言われても、こちらも注文された物を出しただけだからな。それと材質は企業秘密だ』
青年はまだ言い足りないらしい。
『何とか気を取り直して午後からまた泳いだりして遊んで、夕方に暗くなる前にテントを設置しておこうって事でテントを広げたんだ。これがまた広くてな、メンバー全員が大の字に寝ても広かったな…』
と遠い目をしながら話す。
店主が自慢げに、
『そうだろ、なんたって特別製だからな』
青年は店主に訊ねる。
『でだおっさん、1つ聞きたいんだが、あれはいったい何人用のテントなんだ!?俺は確かキャンプに行くからって事でテントも注文したよな!?なのになんでサーカスのテント並みに広いテントなんかよこしたんだ!?』
店主は、
『いや~、広いテントをくれって言われたか…
『何回も言ってるけど、物には限度が有るだろっつってんだよ!!なぁ、いったい誰がキャンプするのにサーカステントなんか持って行くんだ?
でだ、テントの設置も終わり夕飯の準備に取り掛かるんだが、散々やらかした俺にはもう何もさせてくれなかったんだ、他の奴らはワイワイ楽しそうにやってる横で俺は夕食ができるまで体育座りをして待ってたんだ。
夕食も済んで辺りが暗くなってきたから嫌な予感がしながらも、例の明るいランプを灯したんだ。そしたら明るい事明るい事!まるで昼間かってくらい明るいんだ、いやむしろ眩しくて思わずメンバー全員で目を瞑り両手で目を覆いながら、“目がぁ~目がぁ~っ!?”て叫びながらゴロゴロとのたうち回っちまったぜ、隣の人達から”うるさいし明る過ぎてキャンプの雰囲気が台無しだ!“って怒鳴られるわで最悪だった。
手探りで何とかランプを消したけど俺はテントの隅の方で小さくなって肩身の狭い思いをしたんだ』
店主は不思議になり、
『せっかく広いテントを渡してるのになんでテントの端で小さくなってるんだ?広さが足りなかったか?』
青年はまた怒鳴る。
『ちげーよ、そう言う意味じゃないつーの!!気まずくて隅で小さくなってんだよ!!それに誰の所為だと思ってんだよ!?俺はなグループメンバー達に2度とキャンプには誘わないと宣言されたんだぞ!?どう責任とってくれるんだよ?』
青年は怒りのあまり、店主の胸ぐらを掴む。
その時、店内にガラガラガラっ!と客の来店を知らせる音が鳴り響き、中年の男性が店内に入ってきた。
『何事かね?外にまで声が響いてるぞ。騒々しい』
と声をかける。
青年が振り向き謝罪する。
『あ、外まで聞こえてましたか、すみません…』
中年の男性は青年に見覚えがあるのか、
『おや?君は確か…』
青年は苦笑しながら、
『あ、あなたは…!!先日は色々とゴタゴタに巻き込んですみませんでした。消火の時助かりました』
中年の男性は納得がいったように、
『なるほど、此処で買った道具を使ってたって事か!』
青年は言う。
『はい、その事で店主に苦情を入れてたわけで…』
中年の男性に聞かれる。
『1つ聞きたいが、君はここで買うの初めてなのかね?』
青年は答える。
『何回か買った事が有って、シャープペンと消しゴム、甘栗天津、後はカノジョカナ…』
最後の方は消え入りそうな声になる。
中年の男性はキッパリと言った。
『だったら君の不注意でも有るね』
青年は驚いて、
『え?何で?悪いのは店主でしょう?』
中年の男性は続けた。
『じゃあ聞くけど、キャンプ道具を買う時に余計な事を言わなかったかね?』
青年は思いだしながら、
『余計な事は何も…ただ切れ味の良い包丁と…
『原因はそれだよ』
青年は男性に食ってかかる。
『はぁ?なんで?少しでも良い道具を用意するのは当たり前じゃないの?』
中年の男性は更に、
『じゃあ今までに買った物の事を事をよく思い返してみたまえ』
青年は必死で思い出しながら…
『思い返せっても、芯が減らないシャープペンに、減らない消しゴムに…』
ハッとした様な顔になり、
『ただ栗を出してくれって言っただけなのに、今までに食べた事が無いほど美味い甘栗天津…』
中年の男性は満足そうに、
『何が原因かはわかったね?この店の品は何も言わなくても1級品…いや、下手をすれば規格外の物が出てくるんだ。実はね、私もキャンプに行く直前に…此処でキャンプ道具を1式買ったんだよ、ただね買う時に普通のキャンプ道具をくれと言って買ったんだよ』
青年は漸く納得する。
『あぁ、よく考えると今まで買った物の事を全く理解せずに少しでも良い道具をと注文したの悪かったんだな…』
中年の男性は、
『そういう事さ、まあ店主から事前に品質の説明が有っても良いんだけどね。ハッハッハッ!!』
青年は申し訳無さそうに、
『朝っぱらから怒鳴って悪かったな、おっさん』
と謝罪する。
店主は何でも無いことのように、
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