何でも屋さん

みのる

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第23話 みんな楽しみ♪花火大会の…準備(超長編)

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市主催の花火大会を間近に控えたある日の早朝、市役所の会議室では花火実行委員会のと商工会議所の面々が緊急会議を開いていた· · ·
その理由は会議が開かれる数時間前に、花火大会に使用される花火が保管されていた花火工場が爆発事故を起こしていたからだ。

会議を終えた花火実行委員会の会長と副会長が会話をしている。
実行委員副会長が、

『会長、大変な事になりましたね。花火大会も間近に待ってるのに…一体どうしたら· · ·』

と頭を抱える。

実行委員会長が溜息混じりに、

『はぁ…、嘆いていても仕方がない、昔から続いて来た行事を中止にも出来んし他のメンバーと協力して何としてでも花火を確保しないとな…他県の花火師に電話交渉する者と現地で直接花火師の元に赴いて交渉する者とに別れて事に当たろう!君は私と一緒に現地の花火師をあたろう』

実行委員副会長は、

『わかりました、では参りましょうか』

その日の夕方、何でも屋を訪れた中村と店主だべっていた。
中村は、

『なあおっさん…早朝に花火工場で爆発事故が有ったらしいけど、今年の花火大会は中止になるのかな?初めて彼女が出来たから…一緒に行きたかったんだけどな· · ·』

とボヤく。

店主は、

『私は知らんよ、そう言うのはお役所連中の仕事だ』

と笑う。

中村も、

『違ぇねぇ!』

と笑う。

そこへガラガラガラっ!と引き戸が開き、幾分くたびれたスーツを来た年配の男性と中年の男性、高そうなスーツを来た中年の男性が入ってきた。
年配の男性が、

『ここは何でも屋で、無いものは無いと伺ったのですが…』

と店主に確認。

店主は、

『ああ、うちには何でもあるよ』

年配の男性は、

『我々は花火実行委員会の者です。私は会長で、隣が· · ·』

と会長が促すと隣に居る中年男性が、

『私は副会長です』

と自己紹介。
再び会長が、

『そしてこちらが花火大会のスポンサーをしてらっしゃるカーディーラーの社長さんです』

と高そうなスーツを来た男性を紹介した。
社長が名刺を出しながら、

『どうも、こういう者です。以前1度家内に付き添ってこちらへ来させて頂いたことが有りまして、その時の事からこちらだと花火も有るだろうと来させて貰いました』

店主が、

『どうもご丁寧に…うちは見ての通りの、細々とした店なので名刺は持ち合わせて無いんだよ』

と名刺を受け取る。

中村が、

「噂をすれば何とやらってやつだな…」

と呟いてる。

実行委員会長は早く商談を進めたいらしく、

『で、早速ですが今朝の事はご存知かと思いますが· · ·』

と事故の事を把握してるか確認する。

店主はだべってた事もあり、

『つい今しがたその事を話してた所さ、つまり花火が燃えてしまったから欲しいと言うことだな』

と問い返す。

実行委員会長は満足したように、

『話が早くて助かります、我々が来たのはその事で…今日一日出来る限りの手を尽くして、小さい花火は確保する事ができたのですがどうしても目玉となる3尺玉と4尺玉が確保出来ず、こちらの社長さんに相談して、ここならばと来させて貰いました』

と事情を話す。

店主は、

『どちらも必要な分だけ用意出来るが、そうだな…3尺玉は300万・4尺玉は460万でどうだ?』

実行委員会長が、

『そ、それはちょっと高過ぎでは・・・こちらの予算もありますので・・・』

と困惑する。

社長も、

『こちらもこれ以上の寄付となると・・・』

と難色を示す。

実行委員副会長は憤怒して、

『いくら何でも高過ぎだろう!?足元見やがって!!』

と怒鳴る。

怒鳴り声がするので、

『何事?』

と奥さんが出てくる。
中村が奥さんに事情を説明する。
その横で店主が、

『しかしうちのは特別製だからね・・・』

と困惑する。

怒りの収まらない実行委員副会長は、

『特別製と言ってもたかが花火だろ、第一他の花火とそう大差ないだろ!?』

と何でも屋の品質を知らない副会長が…言ってはいけない一言を言ってしまった。

流石にこれはと思い会長がとめる。

『君、やめたまえ!!花火の紛失が事故とはいえ…こちらは急に訪れて無理を言って売ってもらう側なんだよ?』

実行委員副会長が、

『しかし会長、こちらの事情を知っていて高い値段を吹っ掛けて来てるのですよ!?種類により値段は変わるとは言え相場より遥かに高い値段…あれはどう見てもぼったくりでしょ?』

と反論する。

店主は困惑しながら、

『う~ん、そんな事言われてもな…』

と言う。

実行委員副会長が、

『あんたも花火を寄付するか、もっと割引しようかとは思わんのか?市の為に貢献しようとは思わんのか!?』

と悪態づく。

実行委員会長が、

『君、いい加減にしたまえ!!』

と止めるが、奥さんが我慢の限界に来たのか…

『いい加減にしとくれ、高い花火を寄付したり大幅に割引きなんかして…うちに店を潰して路頭に迷えとでもいいたいのかい!?』

と怒鳴る。

実行委員会長は、

『そんな事は言ってません、少しでも良いので割引をして頂けたらと・・・』

と言い淀む。

奥さんは、

『あんたは言ってないかも知れないけどね、そこの人が言ったじゃないか!?そこの大会社の社長さんならポンっと寄付出来るかも知れないけどね、うちは見てのとおりの小さい店で…細々とやってるんだよ、そんなんで割引なんかしてられると思ってるのかい!?』

副会長の態度にうんざりしてた中村も、

『奥さんの言うとおりだよ、俺はよくここに来てるが…1日に5人も客が来ればいい方だね』

と助け舟を出す。

押し黙る会長達3人。

奥さんは怒りが収まらないのか、

『もういいからとっとと帰っとくれ!!』

と怒鳴る。

会長が、

『そんな事を言わずに、何とかお願い出来ませんか?』

と頭を下げる。

続いて社長も頭を下げる。

奥さんが、

『あんたらに売るものなんか無いよ、とっとと帰っとくれ、商売の邪魔だよ!!』

と、3人を追い出す。

会長が、

『今日はこれで失礼します。また改めてお伺いするかも知れません』

言い残し渋々出ていく3人。

奥さんが、

『ほんとにまったくもう!!』

とプリプリしながら奥へ入っていった。

店の外では実行委員副会長が、

『会長すみません…私のせいで…』

と謝罪している。

会実行委員長が、

『謝る相手が違うだろう、売って貰えなかったらどうするんだ!!』

と実行委員副会長を怒鳴りつける。

社長がある事に気が付き、

『まあまあ会長…私に考えが有るので、任せて貰えませんか?』

と会長を宥め、何やら思うところが有るのか提案する。

実行委員会長は、

『社長、それでは申し訳ありませんがお願い出来ますか?』

と申し訳なさそうに言う。

社長は、

『何とか手を尽くしてみます、ではこれで…』

と言い別れる3人。


その夜、とある場所では…

『頼むオヤジ、何とかしてく欲しい!!』

胡座あぐらを組んで座ってる老人の前で、社長が土下座して嘆願している姿があった。

厳しい態度の老人が、

『バカモンが、物事を頼む側が相手方を怒らせてどうするんじゃ!!』

と激怒する。

社長はあたふたしながら、

『そ、それはオレが怒らせた訳じゃ・・・』

と言い訳をする。

言い訳を許さない老人は、

『お前も一緒に居たなら同罪じゃ!!それに社長の座は既にお前に譲ったんじゃ!本来ならお前が何とかせねばならんのじゃないのか?』

と怒鳴る、が…

『はぁ・・・しょうがないのう、孫達も楽しみしておる花火大会じゃし、やるだけやってみるかのう・・・』

社長が、

『本当かオヤジ!?』

と喜ぶ。

老人は、

『お前の為だけにするんじゃない、孫達の為でもあるんじゃ!』

と言い放つ。そして…

「タダでと言うのもあれじゃから・・・あれの場を用意しろ」

と社長の耳元でボソリ。

社長が、

『え、急にそんな事を・・・仕方ない…掛け合ってみるよ』

翌日老人は、

『はぁ· · ·本当なら、こんな事はしたくないのぅ…』

とどこかへ出かけてゆく。


何でも屋ではいつもの朝を迎えており、そこには中村の姿も有った。
中村は昨日の事を思い出しながら、

『しかし昨日の副会長だったか?の態度は悪かったな、奥さんがあんなに怒ってるところ…初めてみたよ』

と身震いしていた。

店主は、

『ハッハッハ、そうだな』

と苦笑いしている。

中村が、

『でも目玉の3尺玉と4尺玉が無いんじゃこのままだと花火大会は中止かな?昨日の奥さんのあの剣幕だと売りそうに無いしな…』

と残念そうにしている。

その時、ガラガラガラっ!と引き戸が開き、1人のじいさんが入ってきた。

じいさんが入ってくるなり、

『お邪魔するよ、ここに来るのも暫くぶりかのぅ』

と声をかける。

店主は、

『やぁあんたは…久しぶりだね・・・またいつものかい?』

じいさんは、

『いや、今日は別用で来たのじゃが・・・』

と何やら言いづらそうにしている。

店主は不思議に思い、

『ん?どうしたんだい?』

と話を聞く。

じいさんは溜息をつき、

『はぁ· · ·じつはのぅ、今日は花火の事で来させて貰ったんじゃが・・・昨日うちの息子と実行委員会の連中がこちらで何やら失礼な真似をしてしまい、奥方を酷く怒らせてしまったようで…申し訳ない事をしたのぅ…ワシからもこの通り、謝罪しますじゃ…』

と申し訳なさそうに頭を深々と下げ謝罪する。

一方店主はそんな事はまったく気にしていないように、

『おや、あんたは昨日の社長さんの· · ·そうでしたか、このままじゃ話も出来ないしまぁ頭を上げてよ』

と笑う。

中村は、

『え~と…あの!カーディーラーの社長の父親って事は・・・えっ、会長!?』

と県を代表するような大会社の会長と知って中村は驚いて固まっている。

会長は、

『まぁ…会社は息子に譲って引退の身じゃから肩書きだけの会長じゃがのぅ』

と返す。続けて、

『でじゃ、店主や奥方の気は進まんかもしれんのじゃが…何とか花火を譲ってはくれんかのぅ?
引退した身のワシが出て来るのは筋違いなのは重々承知してはおるんじゃが、息子に泣きつかれたのも有るが…孫達も花火大会を楽しみにしておってのぅ、このままじゃ目玉の無い花火大会は中止になるやもしれんのじゃ…』

と店主に交渉する。

中村も、

『俺からも頼むよ、何とかならないのか?おっさん、はじめて出来た彼女と花火大会へいきたいんだ!』

と会長と共に頼み込む。

店主は、

『良いよ』

と軽く言う。

会長が交渉を続けようと、

『もちろんタダでとは言わん、手土産代わりの花火大会への出店許可証と花火代は店主の言い値でワシが支払うから何とか・・・えっ?良いのかの!?』

と言いかけ、店主があっさり許可してくれた事に気付き驚いた。

店主は、

『あぁ良いよ。他ならぬあんたの頼みだからね、いつもうちを贔屓ひいきにしてくれてるし、知らないところでお客さんも紹介してくれてるようだしね』

とニヤニヤ笑っている。

『なぁ、お前』

と、いつの間にか奥から出て来て居た奥さんに声をかける。
奥さんは、

『えぇ、構わないよ』

と笑ってる。

会長が、

『ではこちらが・・・』

と店主に言うと、

店主は、

『あぁ、そうだよ』

と一言。

会長は奥さんにも、

『昨日はうちのバカ息子や実行委員会の連中が失礼な事をしてしまったようで…申し訳無かった、この通りワシからも謝罪させて頂きます』

と謝罪し再び頭を下げる。

奥さんは、

『会長さん…頭を上げておくれよ、私は実行委員会の副会長の態度に腹を立てただけで、会長さんは何も悪くないじゃ無いか、それにあんたはいつも自分の立場をひけらかす訳でもなく…1人の客として、こんな寂れた店に通ってくれてるからね、そんな人に売るのを拒む理由は無いよ』

会長は、

『そう言って貰えるとありがたいのぅ…』

と目に涙を滲ませる。

店主は、

『そう言う訳だから、私から会長さんに5尺玉の花火を寄付させて貰うよ』

会長が驚いて、

『花火は4尺玉までじゃないのかのう!?』

と問う。

店主が、

『ハッハッハ、常連さんにだけに出す特別製だ』

と笑っている。続けて、

『じゅうぶんな高さまで上がるが…念の為周り障害物が無い所で頼むよ、直径がかなり広いからな』

会長が、

『そんないい物を…すまんのぅ、それで花火の値段はいくらかのぅ?』

店主は、
『寄付と言っただろう?お金はいらないよ、その代わり…5尺玉を10個だけなんだけど構わないかい?』

と念のため確認する。

会長は、

『他ではお目にかかれない5尺玉じゃろ?それだけ有れば充分じゃ!』

と喜ぶ。そして、

『忘れないうちに渡しておこう、これが花火大会での店舗の出店許可証じゃ。…店舗はこちらで用意して置くから、販売する物だけ用意してくれればばいいじゃろう』

と差し出す。


店主は恐縮しながら、

『良いのかい?こんなものもらって…』

と恐る恐る受け取る。

会長は、

『納めておいてくだされ、本来ならこんなものだけでは済まんのじゃろうけどな・・・』

と言い、

『さて、用も済んだし…ワシは帰るとしようかのぅ、次は普通の客として来店したいもんじゃ』

と言い帰ろうとするところを店主が、

『1つ条件が有って…その花火は一番最後に上げて欲しいんだけど』

と条件を出す。

会長は、

『わかったよ、一番最後に・・・じゃな?』

と言い残し帰っていった。

店主が、

『店を閉めるわけにもいかないし…お前、花火会場で店出すか?』

と奥さんに聞く。
奥さんは嬉しそうに、

『おや、私が行って良いのかい!?』

と店主に再確認。

店主は、

『あぁ構わないよ、行っておいで。』

と笑ってる。

すると奥さんが、

『けど、1人だと大変だねぇ・・・誰か手伝ってくれる人は居ないかねぇ…』

と中村の方に視線を送ってくる。

中村は観念したように、

『はぁ…わかったよ、手伝ってやるよ…手伝えば良いんだろ?』

と言いながら即座にビグホ(※俗にいうスマホ)を弄っている。

奥さんがわざとらしく、

『おや、頼んでも無いのに…悪いねぇ』

ニタニタ笑ってる。

中村は内心、“目で催促してたのによく言うぜ” と思ったが、口には出さなかった。
そうこうしているとスマホの着信音が鳴り響き、中村が出る。

『もしもし、ああそうだよ、うんわかった。そう伝えとく』

と言うと電話を切り…奥さんに向かって、

『伊集院も手伝ってくれるってさ!』

と話しかけた。

奥さんは、

『おや、本当かい?それじゃあ2人にバイト代弾まないといけないねぇ』

と喜んでる。そして、

『問題は…何を売るかだねぇ?』

と頭を悩ませる。

中村が、

『夏だし、かき氷で良いんじゃないの?俺も食ったけど美味かったし、何より焼きそばやたこ焼きみたいに技術も必要ないからね』

と言って、

『かき氷だと焼く必要もないから、暑くないし』

と付けたし更に笑う。
売るものが焼きそばになったとしても収納箱から取り出すので焼く必要も無いから、暑くならない事を中村は知らない。

奥さんも、

『そうだねぇ、かき氷にするかねぇ』

と乗り気である。

中村が、

『さて、そろそろ俺も帰りますかね』

と言って、

『じゃあ、またな!』

と引き戸を開けて帰っていった。

店主が奥さんに、

『花火会場へ行く時に、この手のひらサイズの収納箱を忘れないようにね』

と小型の収納箱を手渡す。

奥さんは、

『これを忘れたら商売あがったりだねぇ』

と笑う。


一方で会長は、息子へと連絡をとっていた。

『もしもしワシじゃ、店主の好意で5尺玉を10発寄付してくれたぞ!ああそうじゃ、10発じゃ!えっ?何?たったの10発だけかじゃと!?バカモンが!!4尺玉じゃなく5尺玉と言っておろうが!!他のどこを探したら5尺玉なんて花火が有ると思ってるんじゃ、今手に入るのは5尺玉じゃなく4尺玉までじゃ!!』

と、怒鳴っている。

『それと、この花火は最後に上げるようにとの事じゃ。その事を忘れずに実行委員に伝えておくのじゃぞ!』

と言い電話を切り、ため息を1つ吐く会長。
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