ぬるく熟した『恋愛』を食べる瞬間(とき)は、

みのる

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第四章 終末

眩しい太陽の下の戯れ※

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ある4月の出来事であった。
土曜日、何時ものように美月の来訪を部屋で待っていると、恥ずかしげにオレの部屋を訪れた美月。…何時もより、何気にオシャレに着飾ってる感じだ。
美月が口を開いた。

『…お兄ちゃん……、今日はとっても良いお天気だよ?桜もちょうど見頃だし…。一緒に…お花見、行かない?』

オレは何故か…その誘いに肯定の意を述べていた。
…オレは普通に、Tシャツにジーパンだが…

2人で家を出て、近所の公園に向かう。こころなしか、とても嬉しそうな美月。春の長閑のどかな日差しを受けながら…オレは感じた。
ーこういうの…悪くない…ー
ふとオレの手に感じた仄かな温もり。
見ると美月が恥ずかしそうにオレの左手を握っていた。オレはそれを振り払う事はしなかった。

道端に咲き誇る花。呑気に寝そべる三毛猫。
鳥のさえずり。暖かな空気。
もう、春なんだなぁ…時の経過を感じずには居られなかった。

公園に着いた。
見事な桜の木が、幾本も地に根を張る。

『綺麗ね……』

思わず感嘆の声を漏らす美月。
そこに強めな風が吹き、美月の長い髪がふわりとなびいた。少し散りかけてた桜の花弁も舞い…
その光景は、例えようも無く美しかった。

オレと美月は互いの手を握り合い、公園の散策を続けた。
弁当を広げる花見客。無邪気に走り回る子どもたち。

オレたちは空いているベンチを見つけ、並んで腰掛けた。オレは美月に問う。

『……疲れたか?』

髪に付いていた桜の花弁を払う。

『……うぅん、大丈夫だよ?』

そう言って、美月は…オレの肩にもたれかかった。それをオレは阻止しなかった。……本当は、こうして欲しかったんだ……オレは朧気にそう感じた。オレも美月のその柔らかい肩をそっと抱く。

そこは、人目につきにくい場所にあった。…わざと、そのような場所を選んだ。
オレは…そっと美月の顎を上向かせた。美月はそれが自然である事とばかりにきゅっと瞳を閉じる。
その小さな唇に…オレのそれを、ゆっくりと近づける。…随分とスローモーションに時が経過したように感じた…
静かに軽く、美月の唇に触れた。それから…何度も何度も、啄むように。
ーオレは、本当はずっと…こうしたかったー


桜咲く木の下で、美月の小さな舌と…オレの舌をふたりいつまでも絡め合っていた。





そしてまた幾年かの2人。



※何も変わっていないことにはスルーで!
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