移動販売の加地さん。

第29話 Happy Valentine……？

『さぁ！女子の祭典「バレンタイン」が近づいて来ただよ～‼(ワクワク)』

稼げる事間違い無しな一大イベントに闘志を燃やす加地くん。……と、おやぁ？どうしたのだ？ナレーター岡田くん。あからさまに肩が落ちているぞ？
(やる気の感じられないナレーター岡田に不思議がる作者みのる)

タラコ2号にて女子の聖なる祭典「バレンタイン」前から着々とチョコの売上を伸ばし、ニヤニヤが止まらない加地くんと………何時ものようにヘルプに着いてくれる眼鏡男子。給食帽子と白い割烹着がとても眩しい。
「何時もの店」で特別製であるチョコを仕入れ、チョコを手作りする女子用にも業務用のチョコをちゃっかりと仕入れているこのぬかりのなさ！

(時はバレンタイン当日)
チョコを売り捌く加地くんと眼鏡男子には何時も以上の志が感じ取れる。
………のに！なんなんだ⁉️ナレーター岡田‼毎日ちゃんとナレーターの仕事を務めに来るように見せかけて！魂の抜けた顔ツラで傍らから加地くんを見てるだけって‼‼


熱気醸し出す女子達にあっという間にチョコはsold outし……本日の仕事が終了した加地くんは、何処からともなく2人分のチョコを取り出した。
そしてニッコリと微笑みながら眼鏡男子にこう告げた。

『眼鏡男子さん、年末からずっと…私のお手伝いをして下さり、本当にありがとうございました♪
これは私からの感謝の気持ちです☆』

眼鏡男子は暫し驚いていたが、加地くんからの感謝チョコをそっと受取ると「……ありがとうございます…」呟き、

『……今更ですが、僕には「小也こなり」という名前があります』

今更の自己紹介‼

そして加地くんは(何もしない割にはちゃっかりと実体化している)ナレーター岡田にもそれを渡そうと近づいた。

『私が退職した今でも……私のナレーターを務めてくれたり、さり気にヘルプして下さったり…本当にありがとうございます』

暫く沈黙していたナレーター岡田であったが………やがて岡田は重い口を開いた。

『……俺……、俺……………
実は………………………………………
3月に………………
結婚が決まったんだ………………


だからもう……………っ‼
…………加地くんのナレーターは務められない…ッ‼』

何処かへと走り出すナレーター岡田。
いきなりの報告にただ、呆然となり……その後ろ姿をただただ見送る加地くん。


2人分用意された加地くんの感謝チョコのうち……1つは受取人の無いままに加地くんのバレンタインは終結した。
加地くんの……ナレーター岡田に対する想いは、果たして"感謝"の二文字で済まされるモノであるのか？