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オラの……に合う……は……?
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ある日の昼下がり、店番をする中村の横には珍しくまいの姿もあり、2人して熱いお茶を啜っていた。
そこへ帽子を深く被りこんだ劇団1人の客が何でも屋へやって来た。
『じゃまするよ!』
『いらっしゃ⋯⋯い…』
『いらっしゃいませ…』
元気よく声をかけるまいに対して目を細め訝しげな顔をする中村。
(こいつは確か、近所で噂のあちらこちらで嫌がらせや冷やかしを繰り返している奴だな⋯⋯気を引き締め無いとな)
『ここは何でも置いてるんだろ?』
『あぁ、うちには何でも有るから何でも言ってくれ!』
やって来た客は近所でも有名な要注意人物であり、今話してる間も口を殆んど動かしておらず怪しさ満載である。
中村の方は、客が要注意人物だと気付いたようで気を引き締めているが、まいは気付いていないようだった。
接客を中村に任せて再びお茶を啜り始めるまい。
『じゃあさ、俺の口に合う入れ歯は有るか?』
ブフッ!!
ッ!?ブー‼ゲッホゲッホゲッホ
『アヂィー‼まい!なんで俺の後頭部にお茶を噴き出すんだよ‼』
『ゲホゲホ、ご、ゴメンなさい、ゲホお茶が⋯⋯器官に入ってケホッしまって⋯⋯
ウプッ、わ、私は奥の部屋に行くね⋯⋯だ、大事な用がグフッ有るの忘れてたわ⋯⋯ブフッ!』
怪しげな客は自分の口に合う入れ歯は有るかと言いながらくゎぱッと口を開く。
客に合う入れ歯は有るかと聞かれた為に口を凝視してしまう2人だが、いざ開かれた口は歯が通常の抜け方では無く、上下共に歯が互い違いに抜けており白黒のストライプ模様になっていた。
その実に愉快な歯をモロに見てしまったが、中村は気を引き締めていた為多少噴き出した程度で済んだが、まいは虚付かれた形になりお茶を中村の後頭部に噴き出し、更にダイレクトに器官に入ってしまった。
咳き込み苦しむまいに向かって文句を言う思いやりの持てない中村。
まいは中村に謝りつつ落ち着いて来ると次は面白さが込み上げて来て、笑い上戸のまいは、肩を小刻みに震わせながら用がある事を所々で噴き出しつつ伝えて奥の部屋へと退散する。
『ほんとにまったく⋯⋯で、欲しいのは入れ歯だったな?
勿論有るぜ!?』
(他の店なら冷やかしは上手くいったんだろうけど⋯⋯)
『ば、馬鹿な俺のこの特殊な歯抜け具合いだぞ!!本当に有るのか!?』
(嘘だろ!?人を笑わす為にワザとやってる歯並びだぞ!!上下共に違うし有る訳が⋯⋯)
『あぁ⋯⋯⋯⋯ほらよこれだ、こいつは先代店主が考案した特殊な入れ歯を更に改良した新しい入れ歯で、昨日届いたばかりだぜ?ラッキーだったな!?ゲラゲラゲラ‼』
(残念ながらここは何でも屋だぜ?どんな口にでも合う入れ歯が有るんだよ、残念だったなジジイ)
『それのどこが特殊なんだ見た感じ普通の入れ歯だぞ!?』
(ふ~、助かった普通の入れ歯だから買う必要は無い)
『そいつは誰の口にでもピッタリ合うようになってんだ、嘘だと思うならはめてみな?』
(ほっとしていられるのも今のうちだぜ?はめたら最後ってな)
『形も違うのに合うわけなんか無い⋯⋯ゲッ、ピッタリハマったぞ!?いったいどうなってるんだ⋯⋯』
(ヤバいな、嫌がらせで冷やかしに来てるのにこのままじゃ必要ない入れ歯を買う羽目になっちまうぞ⋯⋯)
『しかもそいつは歯が抜けてもまた勝手に合うから、歯が抜けたからって買い直す必要も無いんだ、どうだエコだろ?ゲラゲラゲラ‼』
(勝ったな…)
まいが去った後中村は再び怪しげな客の方を向き、ピッタリ合う入れ歯がある事を伝える。
怪しげな客は自分の口に合う入れ歯が有るとは思えなかったが、中村が自信満々で有ると言うから若干不安になる。
いざ取り出された入れ歯を見た怪しげな客は、入れ歯がごく普通の入れ歯だった為一安心するのだが、言われるまま口に入れてみるとピッタリとあてはまってしまい困惑する。
怪しげな客が困惑した姿を見た中村はとても愉快そうに笑う。
『まぁその万能な入れ歯にも欠点が1つだけ有るんだけどな⋯⋯』
『け、欠点が有るなら俺は買わないぞ!!』
(よし、これで買わなくて済むぞ)
『まぁ最後まで聞けって⋯⋯その欠点ってのは入れ歯を1度はめたら外せなくなるんだ、だからはめたら必ず買い取りになるんだ♪』
(キャンセルしようなんてそうは問屋が卸さないぜ!?)
『な、なんだと!?⋯⋯は、外れない⋯⋯』
(終わった⋯⋯)
『ん?どうした顔が青いようだが大丈夫か?』
(負けを確信したようだなアハハハ)
『あ、ああ大丈夫だ⋯⋯』
『それとその入れ歯の値段は25万だ。』
『に、にじゅう⋯⋯ふ、ふざけるな!!
入れ歯がそんなに高い訳ないだろ!?』
『そいつは特殊だと言ったろ?歯が抜けても勝手にサイズが合う優れもので一生物だぞ!?むしろ安いくらいじゃ無いかね?』
意地の悪い中村は欠点が有ると伝え、怪しげな客に1度は購入キャンセル出来ると思わせて置いて再度叩き落とす様な事をして楽しんでいる。
怪しげな客は値段を聞かされ顔を青くしたり赤くさせたりしている。
『ぐっ⋯⋯も、持ち金が無いから近くの銀行で金を降ろしてくるから待ってろ!』
『なるべく早くな、分かってるとは思うが逃げても無駄だからな!?』
『分かってるよ、クソッ!!』
ーーー約30分後ーーー
『待たせたな、ほら25万だこれで良いんだろ?』
『あぁ確かに、まいどあり~♡』
『クソッ覚えてろよ!!』
『ふっざまーみろてんだ、いつも同じようにいくと思うなよ?ゲラゲラゲラ!』
銀行でお金を降ろして再び何でも屋へやって来た怪しげな客は、支払いを済ませた後捨て台詞を吐いて帰って行ったが二度と来ることは無かった。
そして何でも屋では勝ち誇った中村の高笑いが鳴り響いていた、まる
そこへ帽子を深く被りこんだ劇団1人の客が何でも屋へやって来た。
『じゃまするよ!』
『いらっしゃ⋯⋯い…』
『いらっしゃいませ…』
元気よく声をかけるまいに対して目を細め訝しげな顔をする中村。
(こいつは確か、近所で噂のあちらこちらで嫌がらせや冷やかしを繰り返している奴だな⋯⋯気を引き締め無いとな)
『ここは何でも置いてるんだろ?』
『あぁ、うちには何でも有るから何でも言ってくれ!』
やって来た客は近所でも有名な要注意人物であり、今話してる間も口を殆んど動かしておらず怪しさ満載である。
中村の方は、客が要注意人物だと気付いたようで気を引き締めているが、まいは気付いていないようだった。
接客を中村に任せて再びお茶を啜り始めるまい。
『じゃあさ、俺の口に合う入れ歯は有るか?』
ブフッ!!
ッ!?ブー‼ゲッホゲッホゲッホ
『アヂィー‼まい!なんで俺の後頭部にお茶を噴き出すんだよ‼』
『ゲホゲホ、ご、ゴメンなさい、ゲホお茶が⋯⋯器官に入ってケホッしまって⋯⋯
ウプッ、わ、私は奥の部屋に行くね⋯⋯だ、大事な用がグフッ有るの忘れてたわ⋯⋯ブフッ!』
怪しげな客は自分の口に合う入れ歯は有るかと言いながらくゎぱッと口を開く。
客に合う入れ歯は有るかと聞かれた為に口を凝視してしまう2人だが、いざ開かれた口は歯が通常の抜け方では無く、上下共に歯が互い違いに抜けており白黒のストライプ模様になっていた。
その実に愉快な歯をモロに見てしまったが、中村は気を引き締めていた為多少噴き出した程度で済んだが、まいは虚付かれた形になりお茶を中村の後頭部に噴き出し、更にダイレクトに器官に入ってしまった。
咳き込み苦しむまいに向かって文句を言う思いやりの持てない中村。
まいは中村に謝りつつ落ち着いて来ると次は面白さが込み上げて来て、笑い上戸のまいは、肩を小刻みに震わせながら用がある事を所々で噴き出しつつ伝えて奥の部屋へと退散する。
『ほんとにまったく⋯⋯で、欲しいのは入れ歯だったな?
勿論有るぜ!?』
(他の店なら冷やかしは上手くいったんだろうけど⋯⋯)
『ば、馬鹿な俺のこの特殊な歯抜け具合いだぞ!!本当に有るのか!?』
(嘘だろ!?人を笑わす為にワザとやってる歯並びだぞ!!上下共に違うし有る訳が⋯⋯)
『あぁ⋯⋯⋯⋯ほらよこれだ、こいつは先代店主が考案した特殊な入れ歯を更に改良した新しい入れ歯で、昨日届いたばかりだぜ?ラッキーだったな!?ゲラゲラゲラ‼』
(残念ながらここは何でも屋だぜ?どんな口にでも合う入れ歯が有るんだよ、残念だったなジジイ)
『それのどこが特殊なんだ見た感じ普通の入れ歯だぞ!?』
(ふ~、助かった普通の入れ歯だから買う必要は無い)
『そいつは誰の口にでもピッタリ合うようになってんだ、嘘だと思うならはめてみな?』
(ほっとしていられるのも今のうちだぜ?はめたら最後ってな)
『形も違うのに合うわけなんか無い⋯⋯ゲッ、ピッタリハマったぞ!?いったいどうなってるんだ⋯⋯』
(ヤバいな、嫌がらせで冷やかしに来てるのにこのままじゃ必要ない入れ歯を買う羽目になっちまうぞ⋯⋯)
『しかもそいつは歯が抜けてもまた勝手に合うから、歯が抜けたからって買い直す必要も無いんだ、どうだエコだろ?ゲラゲラゲラ‼』
(勝ったな…)
まいが去った後中村は再び怪しげな客の方を向き、ピッタリ合う入れ歯がある事を伝える。
怪しげな客は自分の口に合う入れ歯が有るとは思えなかったが、中村が自信満々で有ると言うから若干不安になる。
いざ取り出された入れ歯を見た怪しげな客は、入れ歯がごく普通の入れ歯だった為一安心するのだが、言われるまま口に入れてみるとピッタリとあてはまってしまい困惑する。
怪しげな客が困惑した姿を見た中村はとても愉快そうに笑う。
『まぁその万能な入れ歯にも欠点が1つだけ有るんだけどな⋯⋯』
『け、欠点が有るなら俺は買わないぞ!!』
(よし、これで買わなくて済むぞ)
『まぁ最後まで聞けって⋯⋯その欠点ってのは入れ歯を1度はめたら外せなくなるんだ、だからはめたら必ず買い取りになるんだ♪』
(キャンセルしようなんてそうは問屋が卸さないぜ!?)
『な、なんだと!?⋯⋯は、外れない⋯⋯』
(終わった⋯⋯)
『ん?どうした顔が青いようだが大丈夫か?』
(負けを確信したようだなアハハハ)
『あ、ああ大丈夫だ⋯⋯』
『それとその入れ歯の値段は25万だ。』
『に、にじゅう⋯⋯ふ、ふざけるな!!
入れ歯がそんなに高い訳ないだろ!?』
『そいつは特殊だと言ったろ?歯が抜けても勝手にサイズが合う優れもので一生物だぞ!?むしろ安いくらいじゃ無いかね?』
意地の悪い中村は欠点が有ると伝え、怪しげな客に1度は購入キャンセル出来ると思わせて置いて再度叩き落とす様な事をして楽しんでいる。
怪しげな客は値段を聞かされ顔を青くしたり赤くさせたりしている。
『ぐっ⋯⋯も、持ち金が無いから近くの銀行で金を降ろしてくるから待ってろ!』
『なるべく早くな、分かってるとは思うが逃げても無駄だからな!?』
『分かってるよ、クソッ!!』
ーーー約30分後ーーー
『待たせたな、ほら25万だこれで良いんだろ?』
『あぁ確かに、まいどあり~♡』
『クソッ覚えてろよ!!』
『ふっざまーみろてんだ、いつも同じようにいくと思うなよ?ゲラゲラゲラ!』
銀行でお金を降ろして再び何でも屋へやって来た怪しげな客は、支払いを済ませた後捨て台詞を吐いて帰って行ったが二度と来ることは無かった。
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