新☆何でも屋

みのる

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最凶の男、再び

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(前回の続き)
 みのる氏お気に入り(?)の例の男が再登場の回

 朝早くから開店準備を済ませ、いつもの恒例になっている仕入れの客も帰り、漸く中村に訪れた休息の一時。
 そのわずかな時間に少しでも寝ようと企む中村は、石油ストーブをいつも座ってる定位置の直ぐ側へと設置する。

『う~寒~
しかし今日はやけに冷えやがるな・・・よし、ストーブはこの位置で良いな。』

『さて、次は・・・っと·····』

 中村は一人言をぶつぶつと呟くと、赤い毛糸の帽子、白い毛糸のマフラー、赤い半纏を次々と取り出し身に着けた。
 全て纏い終わった中村は、ドカッと椅子に座りそのまま背もたれに全体重を預けたかと思うと、静かに目を閉じ寝る体勢に入る。
 中村の目を瞑ったその風体は、元々厚着だった上に赤い半纏を纏ったその姿は着膨れをしており、頭には赤い帽子を被り、首に巻かれた白いマフラーは真っ白な髭に見えなくもなく、遠目で見れば居眠りをするサンタクロースの様であった。
 暫く目を瞑りジッとし続ける中村だったが、おもむろに目を開いたかと思うと絶叫した!

『クソッ!!寒くて全然眠れないじゃないか!!
寒すぎると眠くなるんじゃ無かったのかよ!?ほんとにまったく·····』

 中村よ眠くなるには寒さが足りないぞ、そんなこともしらないのか?(呆)

「仕方ない、寝れね~し動画でも見てるか·····」

 そう呟くとズボンのポケットからビグホを取りだし、MYTUBEをチェックし始める。

シャンシャンシャンシャンシャン・・・
『お?この動画、誰が投稿したのか知らねーけど、上手いこと作ってあるな·····』

 中村が感心して見いってるのは、サンタクロースの乗ったソリをトナカイが引いている動画であった。
 オーロラがかかる満天の星の中を翔るその姿は、幻想的でとても綺麗であった。

シャンシャンシャンシャンシャンシャン
『この動画いつまで見てても飽きないな・・・』

シャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャヴォオォオオン、キッ!!
ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン
ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン

『ヴォンヴォンヴォンヴォンとうるせーな!!
止まったならサッサとエンジンを止めろよ、何いつまでもアイドリングしてんだ!?ほんとにまったく·····』

『せっかくいい気分で動画見てたのに、アイドリングの音で鈴の音が聞こえね-じゃねぇか、鈴とエンジンの音を同期させてんじゃねぇぞ!?
俺ぁエンジンの音を聞きたいんじゃなくて、鈴の音を聞きたいんだっての!!ほんとにまったく·····(怒)』

 いい気分で動画を見ていた中村だったが、何処からともなくやって来た原付バイクが店の横に止まると、エンジンを止めるでも無く、そのままアイドリングをさせ続けてる事に激怒する。

ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン
『チッ!!いい加減にしろよ!?(激怒)』

    おもむろに腰を上げた中村はそのまま店舗入口の方へと歩いて行く。

ガラガラガラッ!!ガラガラガラピシャ!!
『ヴォンヴォン、ヴォンヴォンうるせえよ!!
お前一体誰だ⋯⋯ってアンタかよ、うるさいからエンジンを止めてくれよ!』
(ゲッ!!このオッサンかよ勘弁してくれよ)

    店から出た時は威勢よく怒鳴る中村だったが、空き地に居るのがいつぞやの要注意人物だとわかるとわかると急に低姿勢になる。

『うるせぇ!!いつエンジン止めようがワエの勝手やろ!!』

『だから一々怒鳴らないでくれって前から言ってんだろ⋯⋯』
(何で注意される側なのにこんなに態度がデカいんだ!?)

『うるせぇ、これがワエの地声だって言うてるやろ!?』

    相変わらずの無茶苦茶ぶりに流石の中村もタジタジになっている。

『わかったから少し静かにしてくれ⋯⋯
ってさりげなく俺の目の前で煙草のポイ捨てをするんじゃねぇよ!?』

『火は消してるぞ!!』

『んな事ァ言ってないんだよ、ポイ捨てをするなと言ってんだ!!
俺がここを掃除しなきゃならないんだぞ!?ほんとにまったく·····』

『掃除したら良いやんけ、ワエには関係無いだろ!?』

『だからアンタがポイ捨てするから言ってんだろうが!?』

『そんな事知るか、ここに灰皿が置いてねぇから地面に捨てるしかねぇだろ!?』

『それじゃあなにか?ここに灰皿を置いてない俺が全部悪いってか!?
なんつ~思考してんだ、外で煙草吸うなら携帯灰皿くらい持っとけよ⋯⋯⋯⋯』

『携帯灰皿なら持ってるぞ!!』

『だったらそれを使えよ!!』

『ワエの灰皿が汚れるじゃねぇか!!』

『じゃあ何の為に携帯灰皿を持ってんだよ!!』

『煙草捨てる為に決まってるだろ!!』

『だったら使えよ!!ほんとにまったく⋯⋯アンタと話しをしてたらなんだか頭が痛くなってきたぜ·····』

『とにかくもうそこには捨てないでくれ。
スッカリ身体が冷えちまったぜ⋯⋯俺ァ中に戻るからな!』

    あんたら2人は漫才でもしてるのか?
    さて、底冷えする程寒い中でしばらく揉めていた中村は、寒さに耐えかえねて店の中へと入ろうと歩き始めると、その後を追いかける様に例の人物がついて行く。

『まだ開店してないんだがな⋯⋯まぁいいか、このオッサン揉めるとまたうるせぇからな·····』

    例の人物が後を着いて来てる事に気づいた中村はブツブツと呟きながら店の中へと入って行く。
    店の中へと入ると中は暖まっており、身体の芯から冷えきっていた中村の口から思わずジジ臭い一言が漏れるのであった。

『ア゛~暖け~、極楽極楽~』

『あっ、店の中は暖かいじゃねぇーか!!何でワエをもっと早く店の中へ入れやんのじゃ!!』

    中村に続いて後から入って来た男は店の中が暖かい事に腹を立てる、この男は何に腹を立てるかわかったもんじゃないな·····

『ギャーギャー喚かないでくれよ、店はまだ開店前なんだから中へ入れて貰えただけでも有り難く思ってくれ!』

『うるせぇ!!客が待ってたら直ぐに招き入れるのが筋ってもんだろ!!』

『なんつ~理屈だよ、何で客に合わせて店を開けなきゃならないんだよ!?ほんとにまったく!』

『客が神様だから当然じゃ!!ワエはわざわざ来てやってるんだ!!』

    クレーマーが言いそうな事をあたかも当然とばかりにドヤ顔で言い放つ男は、自分が全て正しいと思い込んでいるから仕方ない。

『チッ、確かに客は神様だけど店側にも選ぶ権利はあるっての⋯⋯
所で今日はなんの用で来たんだ?』

『前店主の所へ来たんやけど家がわからんからここへ来た、で家知らないか!?』

『だから俺は知らないって言ってんだろ!?いい加減人の話しを聞けよ⋯⋯つかアンタ、また家も知らないのにわざわざメヒエまで来たのかよ?』

『聞いても教えてくれねぇんだからしょうが無いやろ!?』

『すげぇなアンタ⋯⋯』

    相変わらず行動力が凄い⋯⋯、流石の中村も呆れている。
    暫く2人が会話をしている間にどうやら開店時間が過ぎていたようだ。

ガラガラガラッ!!
「こんにち、あっ⋯⋯」
ドンッ!!
『アイタッ!!ちょっと重兵衛さん急に立ち止まらないで下さいよ!?』

    裸の大佐風の男が入店すると共に客の男に気付くと立ち止まってしまい、何でも屋へ一緒に来ていた女性が裸の大佐風の男へぶつかってしまった。
    女性は口をぶつけたのか腫れ上がっ⋯⋯たのかと思いきやどうやら元々唇がデカい様だ。

『おい戸をサッサと閉めろよ、寒いやんけ!!
ワエは寒いんが大嫌いなんじゃ!!』

「ヒッ!?す、すみません⋯⋯」
ガラガラガラ!!
『ヒィ~⤴⤵』

    気の短い客の男に怒鳴られた裸の大佐風の男は、悲鳴を上げると消え入りそうな小さな声で謝罪して引戸を閉めた。
    一方、唇のデカい女性も何とも奇妙な悲鳴をあげていた。

『おいアンタ、言ってる事とやってる事が全然違うじゃねぇか!?
寒いの大嫌いって、このクソ寒いのに原付きでトシウミからわざわざメヒエまでやって来たんだろ?寒く無かったのかよ!?』

『寒いに決まってるやろ!!そんな事一々聞かなくても考えなくてもわかるやろ!!』

『返答が一々カンに触るな⋯⋯まあいいや、であんた達は何が欲しいんだ?』

    例の男が言い放った一言に驚愕した中村が思わず突っ込んでしまったが、読者様も言いたい事はわかると思う。
    しかしこの男は言い方と言う物を知らないのだろうか?

『私はそこに置いてるクッキーの詰め合わせを6個ください、後は残金次第でチキンも欲しいかな♡』

『え~とこれは1つ200円だから1200円だ』

『ヒィ~!!⋯⋯クッキーだけください~~~!!』

    唇のデカい女性はチキンも買いたいらしかったが、どうやらクッキーだけで予算オーバーなのかチキンは諦めた様だ。
    しかし言葉では諦めたが、心では諦めきれてないのか横目でジッと見続けて居る事をこの場にいる誰しもが見逃さなかった。

「噶柴さん、俺がチキンを奢ってあげますよ。」

『ありがとうございます。じゃあフライドチキンをお願いします。』

    見かねた裸の大佐風の男が唇のデカい女性に奢ってあげることにした様だ。

「フライドチキンを2個ください。」

『あぁフライドチキン2個だな、はいよ200円だ! 』

『おい、ワエにもチキンを奢ってくれよ!』

    どさくさに紛れて自分も奢って貰うとする例の男。

「えっ⋯⋯なんで見ず知らずのあなたに奢らないといけないんですか?」

『うるせぇ!!ワエは腹が減ってイライラしてるんじゃ!!』

「ヒィ!?⋯⋯この人にも1個あげてください、お金置いときますね
ガシさん早く行きましょう!!」

『おーい兄ちゃん待ってくれ、それじゃあ悪いから2個分で良いぜ!』

    怒鳴られてスッカリ怯えきった裸の大佐風の男は3個分のお金を置いて帰ろうとしたが、中村に2個分で良いと言われ2個分の代金を置き唇のデカい女性と足速に立ち去った。

『チキンくらい自分で買えっての、ほんとにまったく!』

『うるせぇ!!金を持って無いんじゃ!!』

『金も持たずに来たのか?飯はどうするんだよほんとにまったく·····
それよりさっきから身体が揺れてるが、そんなに腹が減ってんのかよ!?』

『揺れてるんじゃなくて揺らしてるんだ!!』

『えっ!?何の為に!?そんな事をしてるから腹が減るんじゃねぇのかよ?』

『腹が減ってんのは朝飯を食ってないからじゃ!!』

『何で朝飯を食ってこないんだよ!?ほんとにまったく·····』

『あ~美味かった、余は満足じゃ!
さて、そろそろ行くか⋯⋯ゲブ~』

    やりたい放題やらかした男は盛大なゲップを残して帰って行った。

『相変わらずめちゃくちゃなオッサンだな、もう二度と関わりたく無いもんだぜ·····』

    何でも屋の営業も終わりにさしかかった夕方頃電話の音が店内に鳴り響いた。

プルルル~、プルルル~

『ん?電話か⋯⋯なんか嫌な予感がするな⋯⋯』
ピッ!!
本日の営業は終わりました、またのお越しをお待ちして⋯お~い、前店主の家知らないか?ピ~

『やっぱりか、相変わらず人の話しを聞いていないなあのオッサンは·····』

何とか危機を乗りきった中村であった、まる
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