新☆何でも屋

みのる

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寒がりの中村

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    冷え込みが厳しい2月のある日の早朝、何でも屋の住居に目覚ましの音が鳴り響き舞が目覚めた。

『う~ん、さてと朝ご飯の用意をしなくちゃね♪
寒~い、今日は一段と冷えるわね·····』

    目を覚ました舞が手を伸ばし、枕元に置いている目覚まし手繰り寄せスイッチを止めると、両手を頭の上へ伸ばし大きく伸びをした。
    朝食の用意の前にトイレに行こうと身体を起こすが、冷え込みが厳しい為に思わず舞は身体を震わす。
    身体を震わせながら昨夜寝床の直ぐ横に畳んで置いたセーターを手に取ると、パジャマの上からセーター着込み次にその上にカーディガンを羽織り、フと隣へ目をやると中村が幸せそうに高鼾を醸しながら寝ている。

ンガ~、ンゴ~、ンガガガ~、ンゴゴゴ~
 
『ふふふっ、気持ち良さそうに寝ているわね♪』

    微笑みを浮かべた舞が布団から抜け出し立ちがると、トイレとは逆の方へと歩き始めた。
    愛する夫が目覚めた時に少しでも寒くない様にと先に灯油ストーブに火を入れに行ったのである。
    ストーブに火が点くと舞はそのままトイレへと駆け込んだ。
    トイレを済ませ出てきた舞はスリッパを履くとキッチンの方へと歩いて行く。

『ここの洗面台はお湯も出せるから良かった、とてもじゃ無いけど今日は水だけで顔は洗えないわ·····』

    顔を洗い終わりタオルで顔を拭いた舞はキッチンで調理を始める。
    舞が味噌汁に入れる為の大根を切っていると中村がうなされ始めた。

「う~ん、う~ん、寒いよ~、寒いよ~、むにゃむにゃ
⋯⋯⋯⋯ん?ふあ~、今日はやけに眠いな今何時だ?
ゲッ、起きるにはまだ早いじゃねぇか!!何で今頃目覚めたんだ!?って思ったらヤケに寒いからか·····」

    あまりもの寒さの為に普段より早く目覚めてしまった中村は、枕元の目覚ましに目をやると予想外の時間だった為に思わず目を見開いた。

『しかし寒いな⋯⋯布団の中に潜り込んでいても寒いじゃね~か·····』

『あら?アナタもう起きたの?』

『あぁ、どうやら寒すぎて目が覚めたみたいだ。
それよりもまい、朝飯の支度よりストーブ点けてくれよ~!』

『何言ってんのよ、私が起きた時に真っ先にストーブの火を付けてるわよ!?』

『嘘だろ!?ストーブ点けててこの寒さかよ!?
勘弁してくれよ⋯⋯⋯⋯』

    中村がブツブツ言ってると舞が中村が起きている事に気付いて声をかけてきた。
    すると寒さに耐えかねた中村が舞にストーブを点けくれと強請る、自分は布団に潜り込んだままでだ!⋯⋯⋯⋯なんとも大層な御身分な事で。
    がしかし既に火は点けられている事を聞き中村は驚愕する。

『それと良い事を教えてあげるわね、火が点いてるのストーブだけじゃないのよ?
さっきからガスコンロも2つ使ってるのに一向に暖かくなってこないわよ(笑)』

『どこが良い話だよ!?俺ァ寒いのは大嫌いなんだぞ!!ほんとにまったく·····

第一に今の気温は何度有るんだ?えぇ~温度計温度計っと
ゲッ!?⋯⋯⋯⋯6℃ってマジですか、ストーブが点いてるんだぞ!?なのに6℃って⋯⋯』

    舞は中村が寒がっているのを若干面白がってる節もある様だ、まぁ当然ながら寒いのが嫌いな中村は怒る訳だが。
    中村が余りにも寒いので温度計で気温を確認すると僅か6℃しか無く、一瞬自分の目を疑う中村であった。

『う~ん、寒いよ~、寒いよ~
⋯⋯⋯⋯なぁまい。』

『なぁに?』

『俺のかわりにトイレに行ってきてくれよ?』

『私がかわりに行ってもアナタはトイレに行きたいままよ?』

『やっぱ自分で行かなきゃダメか⋯⋯』

『当たり前でしょ!?』

    寒さの為に中村の思考能力までもオカシクなって来たようだ、まあ元々若干怪しいけど。

『しょうが無い、諦めてトイレに行くか·····
うひょ~!!寒い、寒い、寒い、寒い、寒い、寒い·····(ガタブル)』

『そんなに寒いならセーター着なさいよ、寝床の横にたたんでるでしょう?』

『あぁそうするよガチガチガチガチガチ·····』

    諦めて布団から出た中村は一気に震え上がった、身体を震わせながらブツブツ言ってると舞がセーターを着るように促して来たので、畳んでいるセーターへと手を伸ばし素早く着込むの有った。

『これで幾分マシになったぜ、おっと感動してる場合じゃ無かったぜトイレ、トイレ·····』

    中村がセーターを来た事で幾分マシになった事に感動してると尿意が再び襲って来て大慌てでトイレへと駆け込む。

『ふ~、スッキリした♡

で、今日の朝飯は何かな~♪』

    トイレから出て来た中村はそのままキッチンへと移動して舞の後ろから覗き込む。

『ハンバーグベーコンエッグとお味噌汁よ♪』

『オッ!?やり~俺の好物じゃねぇか♡』

『あともう少しで用意が出来るからね☆』

『飯の用意が出来るまでに開店準備でもしてくるかな♪』

    朝ご飯が自分の好物だと知ると中村は一気にご機嫌になる、なんとも単純な奴だ 。
    ご飯の用意が出来るまでに何でも屋の開店準備を済ませようとするのだが⋯⋯⋯⋯

『キャッ!!んもう~、朝からイヤラシイんだから·····』

『へへへ、夫婦なんだから良いじゃねぇか♪』

    事もあろうに中村は舞の後ろから前へ手を伸ばし、舞の胸を鷲掴みにして揉みしだいたのである。

『んじゃちょっと行ってくるよ♪』

『わかったわ、用意が出来たらコタツの上へ運んでおくからね♪
ふ~ん、ふ、ふ、ふ、ふ、ふん、ふん、ふ~ん』

ガラガラガラッ!!⋯⋯⋯⋯ガラガラガラッピシャ!!

ふん、ふ、ふ、ふ、ふ、ふん、ふん、ふ~ん

『⋯⋯⋯⋯なぁまい·····』

『ヒッ!!ビックリするじゃないの、どうしたのよ用意をしに行ったんじゃなかったの?』

    ガラス戸に背を向け鼻歌を歌っていた舞は、ガラス戸が開いたので中村が店舗の方へ行ったと思い込み鼻歌を歌い続けていたのだが、急に後ろから声をかけられ驚いた舞は思わず飛び上がった。

『⋯⋯⋯⋯今日は店休みにしないか?』

『えっ?どういう事なの何かあったの?』

『⋯⋯⋯⋯この部屋から先はダメだ次元が違い過ぎる!』

『いったいなんの事を言ってるのよ?』

『この部屋から先は空気が凍り付いてるんだ、人間が居れる環境じゃねぇよだから今日は休みにしないか?』

『ダメよそんな理由で休みにするなんて!!』

『俺寒いの大嫌いなのに、鬼!!』

『なんとでもおっしゃい
ほら用意をしておいで、ストーブを点けておけばご飯食べてる間に温まって来るわよ。』

『鬼!!
チッ、仕方ない半纏を羽織って行くか⋯⋯⋯⋯』

    部屋の外は寒すぎる為に店を休みにしたい中村は舞に交渉するが、あっさりと却下され諦めた中村は白い半纏を羽織り店舗の方へと赴く。

ガラガラガラッ!!
『ヒィ~、さみぃ~!』
ガラガラガラ、ピシャ!!

    半纏の左右の袖に手を交差するように差し入れ、いつもの席へと移動する中村。

『少しは温まってくれよ?
空気が凍り付いてるけどここは何℃なんだ?』

    いつもの所へ来ると、椅子のすぐ横に置いてある石油ストーブに火を入れ柱にかけてある温度計に目を向ける中村。

『肌を突き刺す様な寒さな筈だ、3℃しかねぇじゃ無いか⋯⋯⋯⋯こんな所には居られないな退散しよう·····』

    店舗の気温が3℃しか無かった為中村は大急ぎで住居の方へと駆け出した。

ガラガラガラッ!!ガラガラガラッピシャ!!
『ふ~生き返るぜ、この部屋も寒い筈なんだが外が寒すぎて暖かく思うな·····』

『あら早かったわね、ちょうどこれからご飯を運ぶ所だったのよ。』

『寒いからストーブに火を点けてそのまま直ぐに戻ってきたからな·····』

    部屋に入ってきた中村は舞と話しながらコタツへ歩み寄ると、腰を降ろし足をコタツの中へと突っ込む。

『おっと、とら達もここに居たか。
コタツは暖け~な、やっぱ冬はコタツにかぎりるぜ、なぁとら♡』

ニャ~ン♡

    中村がコタツに足を入れると中には既に先客がおり、危うく蹴飛ばす所であった。
    コタツの温かさに満足した中村がとらに話しかけるととらも極楽そうな声で鳴いた。

『はいお待たせ~♪』

『おっ、来た来た♡』

ニャーン、ニャーン、ニャーン、ニャーン、ニャーン、ニャーン

『はいはい、あなた達はこっちよ♪』

    舞が朝食を運んで来ると匂いに釣られた猫達がコタツから這い出てきた。
    途端に猫達がオネダリの大合唱をはじめたので舞は部屋の片隅に置かれていた猫缶を餌入れに入れてやった。

『モグモグモグごっくん!!グビグビグビ⋯⋯ぷはぁ~まい飯おかわり
ズズズ~、ついでに味噌汁も♪』

『はいはいちょっと待ってね、これじゃ猫ちゃんが7匹居るのと同じだわ·····』

『モゴモゴモゴモゴモゴ!!モゴモゴモゴモゴ』
(俺の事を猫と一緒にするな!!ほんとにまったく)

『口の中の物を飲み込んでから話してよ、何を言ってるのかちっともわからないわ。』

『モグモグモグゴックン⋯⋯俺の事を猫と一緒にするなと言ったんだ!!』

『はいはい、わかったわよ。』

    あちらこちらから催促される舞の言いたい事もわからなくは無いな。
    しかし中村よ朝からよく食らうな。

『ゲフ~、あぁ美味かった余は満足じゃ♪』

『ねぇアナタ、さり気なく横になったけど·····店番忘れないでね?』

『わかってるよ、せっかく極楽気分だったのに·····早々に現実に引き戻すのは止めてくれよ!
しょうが無い店を開けに行くか·····』

    好物のオカズにたらふく食らった中村は極楽気分で後ろへ倒れ込んだが、すぐ様舞に現実へと引き戻され渋々ながら立ち上がり店舗へと向かうのである。

ガラガラガラッ!!
『うひょ~、寒い~!!』
ガラガラガラッ、ピシャ!!

『ストーブ付けてるのにちっとも温まって無いんじゃ無いのか!?
やっぱ土間がコンクリだと冷えが厳しいのかな·····』

    中村はブツブツ言いながら玄関口へと行き開店準備へと取りかかる。

ガチャガチャガチャッガラガラガラ!!
『寒い筈だぜ氷が張ってるじゃねぇか!?
クソッ、冷たくて手が悴むぜ⋯⋯⋯⋯』

ガラガラガラッピシャッ!!
『指が痛え⋯⋯⋯⋯ハァー、ハァー』

    引き戸の鍵を開け店舗前に置かれてる閉店の看板と掛札を店の中へと入れる為に引戸を開くと、水溜まりに薄く氷が張っていた。
    引き戸にかけられていた掛札を取り込み、看板を入れようとするも看板は金属製の為冷えに冷え切っていた。
    看板を取り入れ引き戸を閉め凍りついた指に息を吐きかけながらいつもの席り椅子に腰を降ろす。

『寒い、寒い、寒い、寒い、寒い、だぁ~ダメだ我慢出来ねぇ!!

確か電気ストーブがあった筈だからそれを出すとして、ついでに足元も冷たいから電気ミニファンヒーターも出すか·····』

    そう呟くと中村は石油ストーブとは逆側に電気ストーブを取り出し、足元の真正面にファンヒーターを設置した。

『これだけ置けば流石に温かくなる筈だ、どうだまいったか!?』

    中村よいったい誰に力説してるんだ?

『う~ん、今一温かくならないな⋯⋯仕方ない!毛糸の帽子とマフラーも出すか·····』

    思ったより温かくならなかったので、舞に貰った手編みの赤いニット帽を頭にかぶり込み、これまた舞の手編みマフラーを首に巻いた。

『しかしこうも寒いと出かける気にもなれないから偵察はまた今度だな!』

ガラガラガラッ!!ガラガラガラッピシャ!!
『ふ~暖かくて生き返るわ!

と、すみません温かいコーヒーといつものサンドイッチください、それとどんなのでも良いのでイヤーマフラーと手袋もください!』

『よぉ!いつもの姉ちゃんか、こんな寒い日に通勤だと大変だな?』

『そうなんですよ、もう指と耳が痛くて痛くて我慢出来ないんですよ·····
今日この店が開いてて助かりました!』

    朝早くから店にやって来たのは遠方出勤の為いつも遅刻ギリギリにやってくるOLで、いつもの朝食+想定外の寒さの為急遽イヤーマフラーと手袋の購入だ。
    店が開いてて助かったってよ、中村よ寒くても店開けて良かったな?

『しかし店主さん面白い格好をしてますね(笑)』

『そうか?えっとまずはコーヒーとサンドイッチだ
それと後はイヤーマフラーと手袋だったな。』

『ありがとうございます、えっと代金はいかほどに?』

『コーヒー・サンドイッチ・手袋は良いとしてイヤーマフラーの値段の相場がわからないな⋯⋯』

    OLが面白がっている中村の姿とは、白いセーターと半纏を着込んでずんぐりむっくりになっており、更に頭と首に赤いニット帽とマフラーを着けている姿はまるで雪だるまの様であった。
    商品の値段を聞かれたが中村はイヤーマフラーを取り扱った事が無く、値段の相場がわからない為しばらく考え込み有る値段を導き出した。

『よし千円で良いや
って事は合わせて2千円で良いよ!』

『2千円ですね?はい、2千円。』

『確かに2千円、袋に入れるか?』

『いえ、このまま着けて行くので袋は要らないです。』

『そうかい、いつもありがとうよ?』

『それじゃあ行ってきます!』

『あぁ頑張れよ!

俺も何か温かいものを飲んで温まろう·····』

    欲しい物を買ったOLは急いでる為早々に立ち去った。
    OLが去った後中村も温まる為に何か飲もうと考え、葛湯を取り出した。

『ズズズ~、うめぇ~それに温まるな♪』

ガラガラガラ!!

『すみませんコーヒーください!』

「オレはココアください·····超!激甘のヤツ·····(超!小声)」

『あっ、葛湯も有るのか俺は葛湯ね♪』

『僕はレモンティーください。』

『すみません、あの耳に着けるのなんて言うんですかね?それが欲しいんですけど·····』

『私はマフラーとコーヒーください♪』

『私はココアと手袋ね♪』

『オラは汁粉が欲しいだ☆』

『ワシはコーンポタージュが欲しいのぉ!』

『なんだなんだ?何で急に客がなだれ込んできたんだ!?』

    中村が葛湯を一口啜ると客が次から次へと店へ流れ込んで来た。
    どうやら先程のOLが暖かそうにコーヒーを飲んでるのと、何でも屋に入る前は着けていなかったイヤーマフラーや手袋を着けているのを見つけ、周囲に居た通勤途中のサラリーマンやOLに通学途中の学生達がなだれ込んで来たのだ、最後の二人は近所の老人だが(笑)

『おい、紅茶を早くくれよ会社に遅れるだろうが!!』

『ココアはいつになるの!?』

『ちょっと待ってくれ、それと皆順番に並んでくれ
こらそこ!!引き戸開けたらキチンと閉めてくれよ寒いじゃねえか!!』

ーーー数十分後ーーー
『ふ~、漸く最後の客が帰ったぜ·····(ゲッソリ)』

『さてと葛湯、葛湯~♪
あっ、せっかくの葛湯が冷たくなってるじゃないか!!ほんとにまったく!』

そんなこんなで通勤通学ラッシュが終わり、中村が一息つけた頃には葛湯は冷たくなっていたのである、まる
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