神々に育てられた人の子は最強です

Solar

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やってきた理由

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「おはようございます。覇王と呼ばれし冒険者よ」

 俺は今、顔を引きつかせているだろう。こんな二つ名は恥ずかしい。と言うか俺のことがバレている。
 ケルビン王子は昨日のような子供の言い方ではなく、まさに貴族の喋り方をしており、マミー王女は変わらず無言のままだった。
 俺は、こんな朝早くに起きているなんて賢い子だなぁと思いながらその姿を見ていた。
 すると、騎士の一人が一歩前に出た。
 その男の顔は、目は細めだが、優しさが全体的に浮かび上がってくる、爽やかなもの。しかし、その細い目の瞳には強い思いのようなものが感じ取れた。まさに、幾つもの修羅場を潜って来た男の瞳。
 そんな顔をしている男は、一つの手紙を一つ差し出した。

「これは?」
「クルウェント王国現国王、マレーヌ・クルウェント国王からの直々の手紙です。それを読んだら、後日、王城に来てください」
「では、今日は観光でもしておきます」
「わかりました」

 騎士さんはそう言って、ケルビン王子とマミー王女を連れ、ガチャガチャと鎧の音を立てて帰っていった。

「シンヤ~、誰か来ていたの~?」

 ピンクの髪を朝日に照らしながら身体を起こすネル。
 普段は音が鳴っても起きないが、今日は騎士達の鎧の金属音で、珍しく朝早くから目が覚めたようだ。

「ああ、ちょっとな。昨日の件で、ケルビン王子とマミー王女から手紙を貰った」

 二人の名前を出すと、ネルの肩がピクリと動く。

「そ、そうなんだ」
「うん。それと今日、観光と修行どっちがいい?」
「うっ……。観光がいいです。絶対観光」
「そうかそうか、じゃあ今日は楽しく観光だな」

 ネルはホッと安心した様子。

「まだ、もうちょい寝ていてもいいぞ。朝ごはんにはまだ早い」

 俺はそう言うが、ネルは首をフルフルと横に振る。

「もう、目が覚めちゃった」
「そうか、俺は少し外に出る」

 ベットを降りて立ち上がり、宿の庭に出た。

 世界樹ユグドラシルの木刀を手に、いつも通りの朝の習慣だ。
 しかし、ここは建物などが多くある。宿や他の物にに影響を出さず、そのギリギリの状態を保ちながら、最も速いスピードで木刀を振っていく。
 朝の少し冷たい風が吹く。だが、温まっている今の身体で当たると、心地いい。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 シンヤが部屋を出て、私はまだ少し残っていた眠気を覚ますため顔を洗いにいった。一度宿の外に出て、左側に置いてある井戸の水を汲む。
 冷たい水は、残っていた眠気を無くし、私の意識をハッキリとさせてくれた。

「ふぅ~」

 小さなため息をついた私は、シンヤの使っている無限収納インベントリは持っていないが、冒険者になった当初、初の報酬で買ったポシェットの中に入れていたタオルを取り出し、濡れた顔を拭く。
 顔を拭き終わった私は、もう一度部屋に戻ろうと足を進めた。すると、私がいる場所と反対側から、ヒュン、ヒュン、と軽く何かが振られて風を切っている音がした。
 部屋へ向けた足を、音が鳴る方へ方向転換して進める。

 着いた先に見つけたのは、朝日の光で姿はシルエットになりながら、上半身を裸にし、一本の木刀と呼ばれるものを一心不乱に振り下ろし、ただ木刀の先を見つめ、風を切り裂いているシンヤがいた。
 シルエットからでもわかるその身体は、細身ながらも強靭な身体、無駄のない筋肉だとわかるほど美しいボディ。
 この身体を作るまでに、一体どれほどの時を消費したかわからない。
 そして、何故かシンヤのこの身体を、人類の完成系の姿だと思ってしまった。

 その姿は他の人が行うものとは違う、何か惹きつけるものがあり、私の視線はシンヤという的を一点に集中された。

「くしゅんっ」

 顔を洗ってすぐ少し冷たい風に当たったからか、くしゃみが出てしまった。
 そして、その声が聞こえたのか、シンヤは反応しこちらを見た。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

「くしゅんっ」

 小さなくしゃみの音。
 そちらを見ると、ネルがパジャマの姿のまま、サンダルを履いて立っていた。

「どうしたんだ?ネル」
「シンヤが外に出るって言ってたから、着いてきた」

 ネルは柔らかい笑顔でそう言う。

「見てても面白くないだろう」
「まぁね。でも、よく見てたらシンヤの剣筋の綺麗さがよくわかったよ」
「そうなのか?」
「うん」

 軽く会話をしたが、ネルはその場から離れようとしない。そんなネルの姿を見た俺は、気にせず修行を続ける。ネルはそんな俺を、ずっと見続けていた。

「お二人さーん、朝ごはんだよーって、わあああああああ!!」
「わあああああ!?」

 ネルの隣から奇声を出して突然現れたのは、ローマンというこの宿の従業員だ。宿で両親のお手伝いとして働いている。

「な、なんで上半身裸なんだい!?」
「なんでって言われてもな、身体を動かしていたから」
「あ、そっか。でも脱がなくてよくないかい?」
「汗で服が濡れるじゃないか」
「そっかー」

 相変わらず女のような容姿だ。

「あ、今シンヤさん失礼なことを考えてるでしょ。僕はちゃんとした男の子だよ!」

 このローマンと言う男、自分は男と言っているが、外見からすると男の子、ではなく、男の娘だ。小さい頃から、女の子と間違えられてきたのだろう。
 先程も、俺の身体を見ただけで顔を真っ赤にして、さらに女のように見える。

「わかってるわかってる。じゃあ俺はハクとルナを起こしに行くから」
「あっ、ハクちゃんとルナちゃんはもう起きてるよ。食事の場所で二人を待ってた」
「そうか、ではすぐ行こう」

 俺はネルに手を差し出す。
 ネルはキョトンッとした様子だった。俺は「行くぞ」と一言。ネルは「うん」と言って手を握ってくれた。そして、手を引き寄せお姫様抱っこの形となった。ネルはいきなりこんな格好にされたのに驚いた表情をさせていた。そして、少し頬を赤く染めている。
 俺はその顔が少し可愛い思った。
 俺はその状態のまま、二階にある借りた部屋の窓へと飛び込んだ。

「まずは、着替えないとな」

 ネルは自分の今の姿を理解したか、顔を真っ赤に染めていた。

「わ、わかったから、早く部屋から出ていって」

 弱々しく、恥ずかしいといった感情が混じった声。
 俺は言われた通り、すぐに部屋を出た。
 俺は廊下で無限収納インベントリからタオルを取り出し、汗で濡れた身体を拭く。その後、いつもの黒神覇帝の上着とマントという厨二病感溢れるものを着用する。
 数分後、扉が開きネルはいつものクエストなどに向かっている時の服ではなく、女の子らしい服装だ。
 しかし、女性の服などに疎い俺は、どうやって表現すればいいのか、なんて言う服なのかがわからない。
 だが、可愛いとだけは言えた。

「待っててくれたんだ」
「まあな、行くぞ」

 俺とネルはハクとルナがいる場所に向かう。
 朝でも少し騒がしく朝食をとっていると人達の中から、俺とネルと一緒に食事をするために机の前で座っている、ハクとルナの姿があった。
 そして俺とネルが来たことに気づくと、二人は立ち上がり手を振る。

「悪い、遅くなった」
「大丈夫だよ、だってご主人外で修行してたんでしょ?」
「まあな」

 俺たちは、ローマンの両親が作ったスープを飲んでいる。朝に優しく、あっさりとしたスープだ。

「ご主人様、今日は何するんですか?」
「今日は何もしない、ただの観光だ」
「わかりました!」

 ルナは嬉しそうに言った。
 ハクもルナと同じ表情で、残っているスープを全て飲み終え「早く早く」といった様子。
 俺はネルと一緒にスープを飲み、ローマンに街をまわると伝え、三人で宿を出た。
 街は他のとあまり変わらず賑やかだ。ただ、歩き回っている人達の多くが、ザ・魔法使いといった感じだが。

「さて、三人は何処に行きたい?」
「はいはいはーい!」
「なんだ?ハク」
「私は魔物を狩りに行きたい!」
「おいおい、今日は観光って言ったろ?」

 俺は少し苦笑いする。

「ボクは、またご主人に修行をつけてもらいたいです」
「お前もか。今日は観光ってついさっき言ったばっかだぞ。まあ適当に見てまわるか」

 そう言って多くの人が通っている道を歩く。
 ハクとルナは俺の右手と左手を掴み、ネルはその横に歩く。
 声をかけてくる店主や、道を歩く人々の声が混じり合い、笑顔で溢れている。
 たまに俺とネルが夫婦でハクとルナが子供と間違われたりしたが、その度にネルの顔が赤くなるのを見て面白かった。
 そんな良い国で、良い人々が集まっているこの国で、何故このように、この街の全体に魔力が広まっているのか。この国の地は魔力が溢れているのか?それとも、この国の人のほとんどが魔力を多く持っているのか?

 ドンッ

「あっ、すみません」
「いえいえ、こちらこそ」

 互いに頭を下げ足を進める。
 道を通っている知らない人にわざと肩をぶつけた。
 この接触により、感じられる魔力が他者とあまり変わらない一般的な量だったため、後者の考えは間違いだとわかった。
 そして【魔眼】発動。魔力可視化。

 魔力とは通常、ただの瞳では映ることがないもの。感じることもなく、触れていることもわからない、酸素や水素などと同じ見えないものだ。
 しかし、今使った魔眼、魔力可視化を発動すると、その魔力を見ることができる。他にも、魔力が何処から漏れているのか、または溢れているのかなどもわかる。

 俺は誰にもバレないよう、辺りを見回す。空気中に浮かぶ魔力は、下から溢れ出していた。しかし、これは地脈などから出てくる量ではない。
 これは何かよからぬ事をがあるだろう。

 だが、そんなことはさておき、今は観光を楽しもう。

「なぁネル」
「どうしたの?」
「なんかさぁ、豪華な服を着た人達多くないか?」
「それ、私も少し気になってた」

 道行く人に目をやると、魔法使いの格好をした人が多いが、豪華な服を着た人達に目が止まる。周りには手強そうな姿をした者を囲わせながら、目に余るほどの服と金品を見に纏っている。明らかに一般人とは違うとわかる。

 何かイベントでもやるのか?

「おい、そこの者」

 考え事をしていると、先程話していた豪華な服を着た人の一人がやってきた。
 その姿はかなり腹が肥えており、デブっちょ野郎と言う言葉が何故か思いつき、お似合いだと思ってしまった。

「その二人の娘をわしに売れ」
「は?」
「なんだ、聞こえなかったのか。さすが下民」

 あ?このおっさんは何を言ってんだ?俺の大切な人ムスメを売れ、そう言ったのか?

「ほれ」

 すると、突然このデブっちょ野郎は袋をこちらに投げてきた。それを拾うとカチャカチャという音が鳴る。中を見れば、金貨が数十枚入っていた。

「どうせ額でも考えていたんだろう。それをくれてやる、だからさっさとその二人の娘を置いて失せろ」
「あの、さっきから何を言ってやがってんですか?デブっちょ野郎」
「なっ!」

 デブっちょ野郎さんは大きく口を開けての驚き顔。
 おっと、ついデブっちょ野郎という言葉のパンチを飛ばしてしまった。

「貴様、この方を誰と心得る!」
「いや、知りませんけど」
「この方は、ブロンド商会の会長、トルス・ブロンド様だ!」
「はい、そうなんですかー。ではこれからも頑張ってください。俺たち下民はさっさと失せマース」

 俺はそう言うと、ハクとルナとネルに行くぞ、と歩いていた方へ足を進ませた。

「まて!貴様ら!このわしにあんな事を言っておきながら、おめおめと帰るはずがなかろう!」

 デブっちょ野郎さんはそう叫んでいると、周りを囲っていた用心棒の皆さんがデブっちょ野郎さんではなく、俺たちを囲った。
 そして武器を手に取り、俺たちの方に向けてくる。

「ハイハイ、喧嘩はそこまで!」

 手をパンパンと鳴らして入ってきたのは、一人の小さな子供だった。

「うちの用心棒がすまなかったねぇ、トルス・ブロンド」
「チィっ、貴様の用心棒だと?クロント商会。だったら自分の用心棒の手網ぐらいしっかり握っておれ!」
「だから謝っているじゃないか」
「ならば今臨済、その者をわしの視界に入れるな!」

 デブっちょ野郎さんは自分が投げた金を拾い、こちらを睨んで去っていった。
 何故だか知らない間に話が進み、俺たちはこの子供の用心棒となってっいるようだ。

「言っとくけど僕は子供じゃないよ。ちゃんと成人している、18歳だよ」
「まじかっ!」

 この世界は18歳が成人のようだ。
 つまり俺たちは、この世界では酒を飲めるということだ。

「やっぱり子供だと思われていた。さて、今はこの場を去ろうか。ついておいで、あのおっさんと関わるのはめんどくさい。どうしてあんなことになったのか、僕達の宿で話を聞かせてくれないか?」
「いいぞ。助けてくれたしな」

 横を見ればネル頷いている。

 それから数分後。
 宿とは思えないほど、キラキラとしている外見の建物の前についた。

「ここが、僕達クロント商会の者達が泊まっている宿だ」

 そう言って建物内にある自分の部屋へと案内される。
 彼の雇っている用心棒は、今はいないようだ。

「さて、話を聞かせておくれ」

 俺はさっき起きた出来事を、全て話した。

「はっはっはっはっはー、デブっちょ野郎とは笑えるものだ」
「そんなことはいい。全部お前に話したぞ」
「なるほどね、またやっていたのかあのおっさんは」
「また?」
「うん。あのおっさんは、行った各地で君たちが受けた行いを繰り返しているんだ」
「それはそれは」
「ブロンド商会。それは商会界の中でも、世界で五本の指に入る程の権力、金を持ちうる商会。交渉力や情報網、人材育成などもできる凄腕商会さ。しかしその反面。その権力や金を振りかざして、今みたいに自分の好みの女の子を買う、または奪ってるって話」
「まじで」
「うん。金を与えても女の子を渡さなかったら、恋人、家族、親友など、その女の子と関わりが深い人を、嘘の罪を被せ殺させる。そうやって女の子を奪ってきた」
「ほうほう、かなりの屑だな」

 やはり神様たちみんなが言っていた通りだな。権力を持つと人間は腐っていくのか?

「何か聞きたいことはないかい?」
「あんたは誰なんだ?」
「おっと、自己紹介が遅れたね。僕はクロント商会会長、マキシ・クロントさ。一応、ブロンド商会と同様、世界で五本の指に入るほどの商会だと自負している」
「そうか、もう一つ聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「どうぞどうぞ」
「どうしてあんなに、豪華な服を着たもの達が多いんだ?あんたみたいに、商会の会長さんなんて滅多に現れないだろう」
「おっと、それは、う~ん」

 どうやら教えるかどうか悩んでいるようだ。

「まあ仮とは言ってもブロンド商会の前で用心棒だと言っちゃったしね。うん、教えよう。どうして僕達のような金持ちが沢山この場所にいるのか、それはねーーー」

 少し真剣な顔でその口を開く彼。

「ーーー精霊族の羽が、オークションに出品されるからさ」
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