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そこのモンスター社員、今すぐ退職届を書きなさい!
第1話 痴漢①
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ち、ちょっと最悪なんですけど!?
帰宅ラッシュの満員電車で私は知らないおじさんたちに密着され動けないでいた。
この中にうちのモンスター社員が……いえ、痴漢がいるのね。ホント信じられないわ。大企業の社員が痴漢常習犯だなんて!
「んふっ、んふっ、んふふっ……」
と、耳元に興奮した息遣いが聞こえてくる。
「んふんふ」じゃないよ、きっしょいわ!
やがて、その男の手が何度も私のお尻にアタックしてきた。
ひぃっ……は、始まった。始まりましたよ、係長! 係長? 私、只今被害に遭ってます。不愉快極まりないです。早く打ち合わせ通り捕まえてくださいっ。
けれども係長は何処に居るのか、すし詰め状態で全く分からない。
徐々に男の行為が大胆になっていく。お尻をゆっくり撫で回し、それからスカートの中へその手が侵入してきた。
あわわわわ……や、やめて! いくら何でも直に触られるのはイヤです! 私、こう見えても処女なんですよ。といいますか、憧れの大企業にトップ入社果たした初仕事がコレって? あんなに努力したのに! ひぃぃ、今、そんな愚痴を言ってる場合ではございませんでした。係長、危急存亡のときです。早く助けて! わーんっ!
ーー話は数時間前に遡る。
私は綾坂花。
母子家庭で生活苦しかったけど奨学金でどうにか大学卒業し、機械機器メーカーA社へ就職した。従業員五万人の大企業だ。よく頑張った。偉いぞ、花。思えば彼氏など浮ついた話は全くの無縁で勉強とバイトに明け暮れた日々。辛い思いも随分したな。
しかし。しかーしだ! 黒歴史は終わったのだ。
金玉満堂
豊かな才能と学識があることのたとえ。(きんぎょくまんどうですよ。ヘンな言葉ではありません)それが自分にピッタリの四文字熟語だ。そう、私には輝かしい未来が待っている。今日からサクセスストーリーが始まるのだ……
「新入社員は各配属先へ移動してくださーい」
三ヶ月の研修及び現場実習を経た初々しい私たち新人は、お迎えに来られた各部署の先輩方に引率され去っていく。購買、財務、国内営業……諸々。
「人事労政Grは遅いねぇ。ま、わたくしも人事だけどね」
本社一階ショールームで一人ぽつんとなった私に、研修でお世話になった池園絵梨花さんが優しく声かけしてくれた。
「全然平気です。池園先輩」
彼女は人事でも人材開発Grで新人の教育担当だ。因みにオフィスも別館でここから徒歩十分くらいかかる。
「あ、来たようね……つか、アイツか」
「綾坂さーん」
お迎えの先輩は小走りで駆け寄って来る。スラリとした長身で程よい筋肉がスーツ姿でも浮き上がりよく分かる。そして顔立ちが無茶苦茶整った美しい男性だった。
眉目秀麗……正しく!
この美男子に思わず見惚れてしまう。
「遅くなりました。ん、どうかしました?」
い、いかん。私の欠点は惚れやすいことだ。よく観察しろ。池園先輩は彼を見て残念そうだった。何かあると思え、花。
けれどもこれが運命の出逢いかもしれないと、密かに期待してしまったのだ。
帰宅ラッシュの満員電車で私は知らないおじさんたちに密着され動けないでいた。
この中にうちのモンスター社員が……いえ、痴漢がいるのね。ホント信じられないわ。大企業の社員が痴漢常習犯だなんて!
「んふっ、んふっ、んふふっ……」
と、耳元に興奮した息遣いが聞こえてくる。
「んふんふ」じゃないよ、きっしょいわ!
やがて、その男の手が何度も私のお尻にアタックしてきた。
ひぃっ……は、始まった。始まりましたよ、係長! 係長? 私、只今被害に遭ってます。不愉快極まりないです。早く打ち合わせ通り捕まえてくださいっ。
けれども係長は何処に居るのか、すし詰め状態で全く分からない。
徐々に男の行為が大胆になっていく。お尻をゆっくり撫で回し、それからスカートの中へその手が侵入してきた。
あわわわわ……や、やめて! いくら何でも直に触られるのはイヤです! 私、こう見えても処女なんですよ。といいますか、憧れの大企業にトップ入社果たした初仕事がコレって? あんなに努力したのに! ひぃぃ、今、そんな愚痴を言ってる場合ではございませんでした。係長、危急存亡のときです。早く助けて! わーんっ!
ーー話は数時間前に遡る。
私は綾坂花。
母子家庭で生活苦しかったけど奨学金でどうにか大学卒業し、機械機器メーカーA社へ就職した。従業員五万人の大企業だ。よく頑張った。偉いぞ、花。思えば彼氏など浮ついた話は全くの無縁で勉強とバイトに明け暮れた日々。辛い思いも随分したな。
しかし。しかーしだ! 黒歴史は終わったのだ。
金玉満堂
豊かな才能と学識があることのたとえ。(きんぎょくまんどうですよ。ヘンな言葉ではありません)それが自分にピッタリの四文字熟語だ。そう、私には輝かしい未来が待っている。今日からサクセスストーリーが始まるのだ……
「新入社員は各配属先へ移動してくださーい」
三ヶ月の研修及び現場実習を経た初々しい私たち新人は、お迎えに来られた各部署の先輩方に引率され去っていく。購買、財務、国内営業……諸々。
「人事労政Grは遅いねぇ。ま、わたくしも人事だけどね」
本社一階ショールームで一人ぽつんとなった私に、研修でお世話になった池園絵梨花さんが優しく声かけしてくれた。
「全然平気です。池園先輩」
彼女は人事でも人材開発Grで新人の教育担当だ。因みにオフィスも別館でここから徒歩十分くらいかかる。
「あ、来たようね……つか、アイツか」
「綾坂さーん」
お迎えの先輩は小走りで駆け寄って来る。スラリとした長身で程よい筋肉がスーツ姿でも浮き上がりよく分かる。そして顔立ちが無茶苦茶整った美しい男性だった。
眉目秀麗……正しく!
この美男子に思わず見惚れてしまう。
「遅くなりました。ん、どうかしました?」
い、いかん。私の欠点は惚れやすいことだ。よく観察しろ。池園先輩は彼を見て残念そうだった。何かあると思え、花。
けれどもこれが運命の出逢いかもしれないと、密かに期待してしまったのだ。
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