宮廷婦人の侍女なのに、なぜか私が見初められる〜⁉︎

鼻血の親分

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第一部

02.侍女の巻②

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『後宮とは、宮廷の女性たちが皇帝や皇太子の心をつかむために繰り広げる、複雑な恋愛の舞台です。時には呪いや毒殺など手段を選ばず、激しいライバルたちと戦い、寵愛を勝ち取る必要があります。そこはまるで伏魔殿のような場所とも言われています。』

宮廷へ向かう馬車の中で、昨晩読んだ後宮に関する記述を思い出していた。
怖いっ!一体どんなところなのよ⁉︎
「ポピー、後宮についてあらかじめお話しておくわ」
「お姉様、伏魔殿です!毒殺されないよう気をつけてください!」
「フフフ、よくご存じね。でも、私はどうしても皇太子様に気に入られたいの」
「無理をなさらないでください。半年しか滞在しないのですから」
「半年だからこそ、全力で頑張るのよ。愛は命がけだから」
いやあ、こりゃまいったな。姉は完全におかしくなってしまったわ。
「だから、あなたには特別な役目を任せたいの」
「な、何でしょう……?」
これは嫌な予感しかしない。
「後宮で普通に暮らしていては、皇太子様の目には止まらないのよ」
「……それで?」
「宮廷行列に参加してアピールする必要があるの」
「宮廷行列? まるで護衛兵のようですね?」

と言うか、宮廷婦人の行進って、胸を張って颯爽と歩くんだろうな。『あたしを見て見て! 綺麗でしょ!』って自己アピールするんだろうな。ふふっ、何と滑稽なの!笑える。あはは。

「大切な儀式よ。皇太子様や独身貴族が見守る中で、ホールや広場を行進して私たちを鑑賞して頂くのだから」
鑑賞ねえ。完全に見世物だね。ぷぷぷ。
「それには、宮廷婦人の派閥に入らないと参加できないらしいわ」
「派閥?また何だかドロドロして陰湿そうな……」
「まあ、後宮の婦人関係は複雑且つ険悪で、足の引っ張り合いが絶えないわ。誰も信用出来ない。でも、派閥に入らないとスタートラインにすら立てないのよ」
「ふーん。では、派閥に入るにはどうすればいいのですか?」
「それよ!私が聞いた話では、派閥を調整してる謎の人物がいるらしいわ」
肝心のそこは謎なのね。
「その方に接近して、派閥に入れるようお願いするしかないわ」
でも謎なのね。
「貴女の役目はその謎の人物を調べて、接触してほしいの」
だから、その人物が謎なのよ。どうやって情報を集めたらいいのよ⁉︎
「私が知っていることは、その方が男性であること。そして女官たちから『麗しのジョー』と呼ばれていることぐらいなの」

「うるわしのジョー⁉︎」

な、なに、そのコードネームは⁉︎よっぽど美しい殿方なのでしょうね。……ぷぷぷ。

「お姉様、女官に聞いても分からないのですか?」
「女官どころか後宮総取締役でさえ、その方と直接会ったことはないそうよ。常に手紙でやり取りしてるという話なの」
「うーん、これは手探りのミッションですね」
「でも、ポピーならなんとかしてくれると思ってるから」
何を根拠にそう言えるのか、まったくわからないけどね。
「貴女にはある程度の自由を認めるわ。ポピー、必ずその御方を見つけ出すのよ!いいわね?」

……ったく!めんどくさ!

「お返事しなさい!」
「はい、はーい!」
「ポピー!はいは一回!」
「うーーっ」
「貴女は犬ですか⁉︎」
ぷんっと横を向いて、馬車の窓から街並みを眺めていました。もうすぐ宮廷に到着します。

お父様、私は一生懸命頑張りますが、半年後にがっかりされないでくださいね。勘違いした姉の命は守って帰ってきますから……。




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