2 / 30
第一部
02.侍女の巻②
しおりを挟む
『後宮とは、宮廷の女性たちが皇帝や皇太子の心をつかむために繰り広げる、複雑な恋愛の舞台です。時には呪いや毒殺など手段を選ばず、激しいライバルたちと戦い、寵愛を勝ち取る必要があります。そこはまるで伏魔殿のような場所とも言われています。』
宮廷へ向かう馬車の中で、昨晩読んだ後宮に関する記述を思い出していた。
怖いっ!一体どんなところなのよ⁉︎
「ポピー、後宮についてあらかじめお話しておくわ」
「お姉様、伏魔殿です!毒殺されないよう気をつけてください!」
「フフフ、よくご存じね。でも、私はどうしても皇太子様に気に入られたいの」
「無理をなさらないでください。半年しか滞在しないのですから」
「半年だからこそ、全力で頑張るのよ。愛は命がけだから」
いやあ、こりゃまいったな。姉は完全におかしくなってしまったわ。
「だから、あなたには特別な役目を任せたいの」
「な、何でしょう……?」
これは嫌な予感しかしない。
「後宮で普通に暮らしていては、皇太子様の目には止まらないのよ」
「……それで?」
「宮廷行列に参加してアピールする必要があるの」
「宮廷行列? まるで護衛兵のようですね?」
と言うか、宮廷婦人の行進って、胸を張って颯爽と歩くんだろうな。『あたしを見て見て! 綺麗でしょ!』って自己アピールするんだろうな。ふふっ、何と滑稽なの!笑える。あはは。
「大切な儀式よ。皇太子様や独身貴族が見守る中で、ホールや広場を行進して私たちを鑑賞して頂くのだから」
鑑賞ねえ。完全に見世物だね。ぷぷぷ。
「それには、宮廷婦人の派閥に入らないと参加できないらしいわ」
「派閥?また何だかドロドロして陰湿そうな……」
「まあ、後宮の婦人関係は複雑且つ険悪で、足の引っ張り合いが絶えないわ。誰も信用出来ない。でも、派閥に入らないとスタートラインにすら立てないのよ」
「ふーん。では、派閥に入るにはどうすればいいのですか?」
「それよ!私が聞いた話では、派閥を調整してる謎の人物がいるらしいわ」
肝心のそこは謎なのね。
「その方に接近して、派閥に入れるようお願いするしかないわ」
でも謎なのね。
「貴女の役目はその謎の人物を調べて、接触してほしいの」
だから、その人物が謎なのよ。どうやって情報を集めたらいいのよ⁉︎
「私が知っていることは、その方が男性であること。そして女官たちから『麗しのジョー』と呼ばれていることぐらいなの」
「うるわしのジョー⁉︎」
な、なに、そのコードネームは⁉︎よっぽど美しい殿方なのでしょうね。……ぷぷぷ。
「お姉様、女官に聞いても分からないのですか?」
「女官どころか後宮総取締役でさえ、その方と直接会ったことはないそうよ。常に手紙でやり取りしてるという話なの」
「うーん、これは手探りのミッションですね」
「でも、ポピーならなんとかしてくれると思ってるから」
何を根拠にそう言えるのか、まったくわからないけどね。
「貴女にはある程度の自由を認めるわ。ポピー、必ずその御方を見つけ出すのよ!いいわね?」
……ったく!めんどくさ!
「お返事しなさい!」
「はい、はーい!」
「ポピー!はいは一回!」
「うーーっ」
「貴女は犬ですか⁉︎」
ぷんっと横を向いて、馬車の窓から街並みを眺めていました。もうすぐ宮廷に到着します。
お父様、私は一生懸命頑張りますが、半年後にがっかりされないでくださいね。勘違いした姉の命は守って帰ってきますから……。
宮廷へ向かう馬車の中で、昨晩読んだ後宮に関する記述を思い出していた。
怖いっ!一体どんなところなのよ⁉︎
「ポピー、後宮についてあらかじめお話しておくわ」
「お姉様、伏魔殿です!毒殺されないよう気をつけてください!」
「フフフ、よくご存じね。でも、私はどうしても皇太子様に気に入られたいの」
「無理をなさらないでください。半年しか滞在しないのですから」
「半年だからこそ、全力で頑張るのよ。愛は命がけだから」
いやあ、こりゃまいったな。姉は完全におかしくなってしまったわ。
「だから、あなたには特別な役目を任せたいの」
「な、何でしょう……?」
これは嫌な予感しかしない。
「後宮で普通に暮らしていては、皇太子様の目には止まらないのよ」
「……それで?」
「宮廷行列に参加してアピールする必要があるの」
「宮廷行列? まるで護衛兵のようですね?」
と言うか、宮廷婦人の行進って、胸を張って颯爽と歩くんだろうな。『あたしを見て見て! 綺麗でしょ!』って自己アピールするんだろうな。ふふっ、何と滑稽なの!笑える。あはは。
「大切な儀式よ。皇太子様や独身貴族が見守る中で、ホールや広場を行進して私たちを鑑賞して頂くのだから」
鑑賞ねえ。完全に見世物だね。ぷぷぷ。
「それには、宮廷婦人の派閥に入らないと参加できないらしいわ」
「派閥?また何だかドロドロして陰湿そうな……」
「まあ、後宮の婦人関係は複雑且つ険悪で、足の引っ張り合いが絶えないわ。誰も信用出来ない。でも、派閥に入らないとスタートラインにすら立てないのよ」
「ふーん。では、派閥に入るにはどうすればいいのですか?」
「それよ!私が聞いた話では、派閥を調整してる謎の人物がいるらしいわ」
肝心のそこは謎なのね。
「その方に接近して、派閥に入れるようお願いするしかないわ」
でも謎なのね。
「貴女の役目はその謎の人物を調べて、接触してほしいの」
だから、その人物が謎なのよ。どうやって情報を集めたらいいのよ⁉︎
「私が知っていることは、その方が男性であること。そして女官たちから『麗しのジョー』と呼ばれていることぐらいなの」
「うるわしのジョー⁉︎」
な、なに、そのコードネームは⁉︎よっぽど美しい殿方なのでしょうね。……ぷぷぷ。
「お姉様、女官に聞いても分からないのですか?」
「女官どころか後宮総取締役でさえ、その方と直接会ったことはないそうよ。常に手紙でやり取りしてるという話なの」
「うーん、これは手探りのミッションですね」
「でも、ポピーならなんとかしてくれると思ってるから」
何を根拠にそう言えるのか、まったくわからないけどね。
「貴女にはある程度の自由を認めるわ。ポピー、必ずその御方を見つけ出すのよ!いいわね?」
……ったく!めんどくさ!
「お返事しなさい!」
「はい、はーい!」
「ポピー!はいは一回!」
「うーーっ」
「貴女は犬ですか⁉︎」
ぷんっと横を向いて、馬車の窓から街並みを眺めていました。もうすぐ宮廷に到着します。
お父様、私は一生懸命頑張りますが、半年後にがっかりされないでくださいね。勘違いした姉の命は守って帰ってきますから……。
2
あなたにおすすめの小説
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした
柚木ゆず
恋愛
行き倒れていた3人の男女を介抱したら、その人達は8年前にわたしをお屋敷から追い出した実父と継母と腹違いの妹でした。
お父様達は貴族なのに3人だけで行動していて、しかも当時の面影がなくなるほどに全員が老けてやつれていたんです。わたしが追い出されてから今日までの間に、なにがあったのでしょうか……?
※体調の影響で一時的に感想欄を閉じております。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる