宮廷婦人の侍女なのに、なぜか私が見初められる〜⁉︎

鼻血の親分

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第一部

03. 侍女の巻③

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広大な宮廷の奥には立派な宮殿がそびえ立っている。この場所は皇帝や皇后、そして皇子や皇女たちが住むプライベートな空間らしい。
私たちは護衛兵に案内され、その裏門から隣接する別の宮殿へ入った。すると小さな可愛らしい女官が待ち構えていた。
「ようこそ、後宮へ。私が女官のエミリーです」

ここが伏魔殿か。絢爛豪華な宮殿ね。だけど油断は禁物です!

「あら、女官さん。ハリエット・パーキーでございます。よろしくお願いしますね」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
ツーンと、姉は踏ん反り返って女官の後を歩く。私は迷子にならないようにと、大荷物を抱えながらついて行くのが精一杯だった。

「この辺りは側妃が住まわれているエリアです」
「おお、まさに華麗なる世界ですわ!」
側妃方々が住まわれる宮殿は、細部にわたって贅を尽くした美しく豪華な作りとなっており、金箔で装飾された壁面や彫刻や装飾品の施された柱など見るものを圧倒するほどの華麗さがある。また、宮殿内部には広大な庭園や美しい噴水が設けられ、優雅な時間を過ごすことができるようになっていた。

そこからしばらく歩くと再びエミリーが立ち止まる。
「この辺りは側妃候補(お手付き)が住まわれているエリアです」
「ふーん、いい感じね。で、私はどこに行くのかしら?」
「ハリエット様はさらに奥へ進みます」
「えっ、まだ先なの?」
それからどのくらい歩いたのでしょうか?徐々に後宮から遠ざかっていき、ここはもはや後宮ではないと思われる場所に、いくつかのお屋敷風の建物が並んでいた。

「はあはあはあはあ……しんどい」
重い荷物を抱えて疲れ果てた私は、ついエミリーに尋ねる。
「エミリー様?」
「エミリーと呼び捨てになさってください」
「では、エミリー。色々聞きたいことがあります」
「何でしょうか?」
「まず、ここがお姉様……いえ、お手付き候補の住まいですか?」
「ここは、派閥に所属するお手付き候補たちが住んでおります」
「じゃあ、ここは違うってこと⁉︎」
「はい、ハリエット様はさらに奥へ進む必要がございます」
エミリーが指差した建物は、遥か遠くにある荒れ果てた大きな建物だった。

ま、まじですか⁉︎こんなにも婦人の地位によって格差があるの⁉︎これなら我が家の方が全然マシです!
威勢の良かった姉も建物を見てがっかりしている様子だった。しかし、現実を知る良い機会かもしれません。
「エミリー、階級ごとの人数を教えて?」と思わず尋ねてみる。
「ええ、婦人の数ですね。まず側妃は2人で、お手付きは8人、派閥組のお手付き候補は30人で、無派閥はざっと……60人くらいです」
「ろ、60人もいるの⁉︎どんだけ抱えてるのよ!お姉様はこのことをご存知でしたか⁉︎」
「し、知らない。でも、そんなことは関係ないわ!」

いえいえ、大いに関係があります!婦人は総勢100人ですよ!僅か半年でどうやってお手付きされるのよ?無理に決まってるでしょ!

途方に暮れている私を見て姉がイライラした様です。
「もういいわよ!エミリー、早く案内しなさい」
私たちは不安そうについていき、ボロボロの屋舎に入った。床がギシギシと音を立て、今にも壊れそうな階段を何段も登り、最終的に姉の部屋にたどり着く。
「こちらがハリエット様のお住まいです」
「せ、狭っ⁉︎」
一応個室ではあるけど、ベッドとクローゼットが窮屈そうに置かれただけの質素なお部屋だった。
「少々手狭ですが、お掃除していますので清潔です」
いえいえ、そういう問題ではないよ。これじゃあ、荷物を置くスペースもないじゃない!
私は心配になってきた。
「エミリー、私はどこで寝泊まりするのでしょう?」
「侍女の宿はお屋敷のあちら側にございます」
お部屋の窓から外を見ると、目の前には長い平屋がある。
「あれが私の住むところ……なの?」
お屋敷とは違う。長屋? いや、あれは小屋じゃないの? まるで馬小屋みたいだわ!

お父様、宮廷婦人の底辺は華やかな姿とは裏腹に、悲惨な環境に身を置いているのです!そして私のような侍女は半年間、馬小屋で過ごすことになるのです!




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