4 / 30
第一部
04. 侍女の巻④
しおりを挟む
「お姉様、ちょっと行ってきます」
小さなクローゼットに姉の衣装を詰め込んだ私は、エミリーに連れられて婦人たちのお食事を準備する大ホールに行った。
「エミリー、ここってまるで平民の大衆食堂みたいね」
「お屋敷が古くなってしまったため、加えて人数も多いので仕方がありません」
まあ、食事代は無料だから贅沢は言えないわね。
侍女たちは、テーブルセッティングなど、慌ただしく準備に取りかかっていた。
「あら、新しい方ね? どちらの方なの?」
と、年配で貫禄のある侍女に声をかけられた。この屋舎ではボス的存在のようです。
「姉のハリエットに仕えるポピーと申します」
「あなたは妹さんなのね。階級は官僚?それとも貴族?」
「貴族でございます」
「ふーん。では、お姉様のご年齢はいくつ?」
「姉は21歳でございます」
「ああ、そうなの」
このボスは明らかに嘆いている様子だ。階級が官僚より低く、年齢制限ぎりぎりの姉には望みがないとでも思ったのだろう。
「何か、『つて』でもあって?」
「いいえ、何でもないのです。むしろお伺いしたいことがあって」
「ふふふ、ジョーのことでしょうね?知ってたら私はここにいないわ。でもまあ、知っていたとしても結果は同じかもしれないけど」
「それってどういう意味ですか?」
「ジョーに会っても、自分の願いが叶うかどうかは分からないわ。彼は、身体を差し出せば話を聞いてくれるって噂があるけど……私じゃあねえ!」
「身体を差し出す⁉︎」
なんて破廉恥なっ!麗しのジョー改め変態のジョーと呼んでやる!
「でも、あなたなら……若いし」
いやいや、若ければ良いってモンじゃございませんよ!
「まあ、あなたも後宮婦人に応募するつもりがあるのなら、純潔は守っておかないとね」
「ん?いえ、後宮婦人になる気はありませんが純潔でなければ応募出来ないのですか?」
「あら、知らないのかい!」
し、知らなかったし興味もなかったし。姉がああ見えて処女だったなんてちょっと驚きだ!でも、それよりも後宮婦人になるには18から22歳までの貴族以上であり、『処女』が条件だということなのか。
私はある不安がよぎる。
もし姉が資格を失った場合、お父様は私を後宮に送り込もうとしているのではないでしょうね?しかし、私の容姿や性格では面接で落ちてしまうだろうし、そもそも後宮に行くつもりはないけど……。
ここはよーく考えるのよ。私は牧場で馬の世話がしたいの。後宮婦人になりたくないし、なれるとも思わない。でも、確実に応募できないようにするのは簡単よ。処女を失えばいいの。それは乱暴だけど、何としてでもジョーを見つけ出し、我慢して体を差し出すのも一つの手だわ。
私は半年後に帰り、二度と後宮へ来たくないと心に決めて、あまりにも無謀な考え方に偏っていた。
そう考えているうちに食事が整い、次々と婦人たちが大ホールにやって来る。姉もドレスアップしていた。
「ポピー、皆様お一人お一人にご挨拶したいの。グラスを用意してくれるかしら」
「はあ……」
姉は高級ワインをたくさん持参していたようで、用意周到だったのです。どおりで荷物が重かったのか!
私は凝った肩をほぐしながら、60人分のグラスを用意する。そして、姉は一人ひとりにワインを振る舞いながら丁寧な挨拶をしています。
お父様、姉の立ち振る舞いは本当に見事ですね。私も目標を見つけました。麗しのジョーに処女を捧げようと思います。そして半年後に帰る姉には宮廷行列で行進してもらいましょう。せめて思い出に残るように……。
小さなクローゼットに姉の衣装を詰め込んだ私は、エミリーに連れられて婦人たちのお食事を準備する大ホールに行った。
「エミリー、ここってまるで平民の大衆食堂みたいね」
「お屋敷が古くなってしまったため、加えて人数も多いので仕方がありません」
まあ、食事代は無料だから贅沢は言えないわね。
侍女たちは、テーブルセッティングなど、慌ただしく準備に取りかかっていた。
「あら、新しい方ね? どちらの方なの?」
と、年配で貫禄のある侍女に声をかけられた。この屋舎ではボス的存在のようです。
「姉のハリエットに仕えるポピーと申します」
「あなたは妹さんなのね。階級は官僚?それとも貴族?」
「貴族でございます」
「ふーん。では、お姉様のご年齢はいくつ?」
「姉は21歳でございます」
「ああ、そうなの」
このボスは明らかに嘆いている様子だ。階級が官僚より低く、年齢制限ぎりぎりの姉には望みがないとでも思ったのだろう。
「何か、『つて』でもあって?」
「いいえ、何でもないのです。むしろお伺いしたいことがあって」
「ふふふ、ジョーのことでしょうね?知ってたら私はここにいないわ。でもまあ、知っていたとしても結果は同じかもしれないけど」
「それってどういう意味ですか?」
「ジョーに会っても、自分の願いが叶うかどうかは分からないわ。彼は、身体を差し出せば話を聞いてくれるって噂があるけど……私じゃあねえ!」
「身体を差し出す⁉︎」
なんて破廉恥なっ!麗しのジョー改め変態のジョーと呼んでやる!
「でも、あなたなら……若いし」
いやいや、若ければ良いってモンじゃございませんよ!
「まあ、あなたも後宮婦人に応募するつもりがあるのなら、純潔は守っておかないとね」
「ん?いえ、後宮婦人になる気はありませんが純潔でなければ応募出来ないのですか?」
「あら、知らないのかい!」
し、知らなかったし興味もなかったし。姉がああ見えて処女だったなんてちょっと驚きだ!でも、それよりも後宮婦人になるには18から22歳までの貴族以上であり、『処女』が条件だということなのか。
私はある不安がよぎる。
もし姉が資格を失った場合、お父様は私を後宮に送り込もうとしているのではないでしょうね?しかし、私の容姿や性格では面接で落ちてしまうだろうし、そもそも後宮に行くつもりはないけど……。
ここはよーく考えるのよ。私は牧場で馬の世話がしたいの。後宮婦人になりたくないし、なれるとも思わない。でも、確実に応募できないようにするのは簡単よ。処女を失えばいいの。それは乱暴だけど、何としてでもジョーを見つけ出し、我慢して体を差し出すのも一つの手だわ。
私は半年後に帰り、二度と後宮へ来たくないと心に決めて、あまりにも無謀な考え方に偏っていた。
そう考えているうちに食事が整い、次々と婦人たちが大ホールにやって来る。姉もドレスアップしていた。
「ポピー、皆様お一人お一人にご挨拶したいの。グラスを用意してくれるかしら」
「はあ……」
姉は高級ワインをたくさん持参していたようで、用意周到だったのです。どおりで荷物が重かったのか!
私は凝った肩をほぐしながら、60人分のグラスを用意する。そして、姉は一人ひとりにワインを振る舞いながら丁寧な挨拶をしています。
お父様、姉の立ち振る舞いは本当に見事ですね。私も目標を見つけました。麗しのジョーに処女を捧げようと思います。そして半年後に帰る姉には宮廷行列で行進してもらいましょう。せめて思い出に残るように……。
1
あなたにおすすめの小説
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした
柚木ゆず
恋愛
行き倒れていた3人の男女を介抱したら、その人達は8年前にわたしをお屋敷から追い出した実父と継母と腹違いの妹でした。
お父様達は貴族なのに3人だけで行動していて、しかも当時の面影がなくなるほどに全員が老けてやつれていたんです。わたしが追い出されてから今日までの間に、なにがあったのでしょうか……?
※体調の影響で一時的に感想欄を閉じております。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる