宮廷婦人の侍女なのに、なぜか私が見初められる〜⁉︎

鼻血の親分

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第一部

06. 侍女の巻⑥

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「さあ、手がかりを探すわよ!」
今日はせっかくのお休み。時間は丸一日ある。少しでも何かを掴みたい、進展させたいという一心で、私は早朝から行動を開始した。

まずは憩いの広場でパンをかじりながら作戦を練る。
「エミリーに聞いた話では……」
宮廷婦人の侍女たちは行動範囲が限られている。姉の立場は尚更で、宮廷内はもちろん、後宮でも護衛兵に阻まれる場所が多いという。
「基本的に、屋外は大丈夫みたいね。石畳のロードから庭園、広場、噴水、あっ、湖もあるわ」
いやいや、湖畔に行ったところで……でも行ってみたいな。だって田舎育ちの私は自然が大好きだもん。しばらく自然と触れ合ってないから、癒されたいよ。
「まだ早朝だから、行こうかな?」と、私は既に目的を忘れて湖畔への興味を抱き、行動してしまう。
広場から石畳のロードを真っ直ぐ歩くと、噴水越しに美しい湖が見える。思わず湖畔まで走ると草花や水鳥が優しく迎えてくれた。

ああ、なんて清々しい場所なの!

「フンフフン」と鼻歌を歌いながら湖畔を散策する。かなりの距離を歩いた。やがて山間に差し掛かった時、守衛所とその看板が見えた。
「狩猟場……皇族専用の狩猟場かしら。守衛所があるってことは立ち入り禁止区域だよね?」
私はこっそりと守衛所をのぞき込んだが誰もいない。
「やっぱり無断で入るのはマズいかな?」
木々の隙間から見える草原が気になって、しばらく入口から狩猟場を眺めていた。すると、微かに馬の気配を感じる。
「風を切って草原を駆ける馬の足音だ。おや? 走る音が不規則だわ。それに悲鳴のような鳴き声が聞こえる。馬が何かに興奮してる証拠よ。怪我でもしてるんじゃないかしら?」
そう考えると居てもたっても居られなくなり、狩猟場に足を踏み入れてしまった。護衛兵に見つかればお咎めを受けるかもしれない。でも──

「今はこの馬を助けなければ!」

と、懸命に探しその暴れ馬を見つけた。騎手はいない。たぶん、振り落とされたのでしょう。馬は私に気づいて興奮している。「大丈夫、心配しないで。診てあげるから」と、馬に近づいた。そして両手を広げて馬を受け入れる姿勢を取る。馬は突然の行動に驚いたのか、ギリギリのところで私を避けた。
「ブルル、ブルル……」
「よしよし、どこが痛いの?」
大胆に触れる私にビクビクする馬だったが、背中を優しく撫でると徐々に落ち着いてきた。すかさず身体を隈なく観察すると、右後脚に小さなトゲがいくつも刺さっているのを見つけた。
「あー、これね。お馬さん、取ってあげるから」
不安そうに馬が何度も私を見るので、お腹を撫でながら「よしよし」と声をかけ、一つ一つ丁寧にトゲを取り除いてあげた。
「はい、お利口さんね。もう大丈夫よ!」
と労ると、馬が安心した表情を見せたので私もほっとする。そして、スリスリと甘えてくる様子に微笑ましくなって、「うーん、分かった、分かった。あはは」と笑った。
それにしても、筋肉隆々で毛並みも美しい、本当に素晴らしい馬だわ。ちょっと乗ってみたいなあ!
「ねえ、お馬さん。乗せてくれる?」
嫌がってない様なので私は久々に馬に跨り、軽く走ってみた。とても爽快な気分です。
「あー、気持ち良い!」
思わず声が出てしまった。こんなに素晴らしい休日になるとは思ってもいなかった。しかし、私はここでただ気持ちよく乗ってる場合ではないことに気づく。そう、本来のミッションをすっかり忘れていたのだ。と、その時、もう一頭の馬が駆け寄ってくる音が聞こえてきた。誰かが騎乗しているようだ。

あ、こりゃヤバい!でも、もはやどうしようもない!

お父様、勝手に立ち入り禁止区域で乗馬しているところを見られてしまいました。とってもピンチです!




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