宮廷婦人の侍女なのに、なぜか私が見初められる〜⁉︎

鼻血の親分

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第一部

09. 侍女の巻⑨

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「お姉様、お話がございます」
朝食の後片付けが終わってから、私は姉の部屋へ行った。
「あら、ポピー。昨日の報告かしら?」
「はい。詳細は言えませんが、近々お達しが来ると思います」
「お達しって?誰から?」
「多分、総取締役からです。お着替えの準備をなさった方が宜しいかと」
「えっ……!ま、まさかアンタ……⁉︎」
お姉様、アンタってね。淑女でしょうが!
「ジ、ジョーに会ったの⁉︎」
「だから、言えません。極秘なのです」
驚いた姉の表情が、次第に喜びへと変わっていく姿が見て取れた。
「で、でかしたわポピー!アンタはやっぱり奇跡の侍女よっ!」
だから、アンタって言わないの!それに奇跡の侍女ってなに⁉︎
「分かった、何も聞かない。でも一つだけ教えて?」
「なんですか?」
「どちらの派閥か分かる?」

──私はあの時のことを思い出していた。
「ジョー、決めたわ。媚薬のライラでお願いします」
「理由を聞いてもいいか?」
「同じ派閥なら、毒殺される心配はないでしょう?黒魔術も不気味だけど、怖いのは媚薬を操るライラだと思うの」
「毒殺ってな。まあ過去においては……」
「なになに?ホントに毒殺事件があったの⁉︎」
「い、いや、何もない。分かった、ポピー。後宮総取締役に伝えておく」
ジョーめ、何か隠してるな!まあ、ライラにして正解よね。たぶん……。

「お姉様、それは総取締役からお話されると思いますよ」

***

ドタドタドターッとエミリーの走ってくる音が聞こえてきた。
「あーあ、そんなに走ったら床が抜けちゃいますよ!」
彼女の急ぐ理由は分かっている。お達しの件でしょうね。
「ハリエット様、たた大変です!総取締役がお呼びでございます!」
「あら、何のご用かしら?」
「大至急、お支度を!って、準備できてるー⁉︎」
「さ、参りましょう。エミリー、案内して頂戴」
堂々とした姉の振る舞いに少々ドン引きしたけど、エミリーの先導で後宮にある執務室へ向かった。私はワインを二本持たされている。

執務室に入ると、奥にある大きなチェアに踏ん反り返っているふっくらした御婦人がいた。
「貴女がハリエット・パーキーね。21歳の下級貴族か……私は後宮総取締役のアメリヤよ」
「アメリヤ様、お初にお目にかかります。これはワインでございます。お口に合えば良いのですが」
「あら、気を使わせてしまったわね。ありがたく頂くわ。で、ハリエット?貴女はラッキーね。どういう魔法を使ったか知らないけど、派閥に入ることが決まりました」
アメリヤは含みのある言い方をして、私の方をちらっと見ます。もちろん、知らん顔をしましたけど。
「大変名誉なことでございます」
「私は指示に従っているだけよ。さて、貴女はライラの派閥に決まりました。後でご挨拶してきなさい」
「ライラ様ですか……はい、かしこまりました」
「これは、派閥に属した印です」
アメリヤはブロンズの指輪を姉に渡しました。どうやら派閥のメンバーはその指輪を付けて、後宮婦人の階級を誇示しているようです。
「アメリヤ様、ありがとうございました」

執務室から出た姉が小さくガッツポーズしたのを見逃さなかった。
嬉しいでしょうねえ。私が頑張ったおかげよ。
「ライラ様にお会いしますか?」
「そうね、エミリー。直ぐにご挨拶したいわ」
「では、ご案内いたします」

お父様、私の処女喪失の機会は失われたけれど、姉の宮廷行列という目標には大きく近づきました。ただ、不安ですね。媚薬の使い手、ライラとはどんな方なのでしょうか……?




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