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第二部
10. 侍女の巻⑩
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「ようこそ、私の派閥へ」
媚薬のライラが薄笑いを浮かべながら姉を迎えた。甘ったるい香水の匂いが漂ってくる。
ここは側妃の住むフロア。豪華なシャンデリアや高価な絵画などの装飾品が鮮やかに輝き、見事な空間が広がっている。中央には大きなテーブルがあり、ライラを上座に据え、左右に4人の美しい婦人が座っていた。おそらく、お手付きの方々でしょう。
──それにしてもライラって。
なんと厚化粧な!まつ毛が小指ほどあるじゃん!怖いよ!それに、何歳?結構オバさんじゃないの?
「お目にかかれて光栄でございます。ご挨拶にワインをお持ち致しました。宜しければ、お召し上がりください」
「ふーん、ワインね」
ライラは4人の婦人と目を合わせ、微笑んでいる。すると、下座の婦人がワインを乱暴に取り上げ、瓶の先を姉に向けた。
「お毒味して頂こうかしら?」
「えっ⁉︎」
「ハリエット。私はまだ貴女を信用しておりませんの。グレースの刺客かもしれませんから」
あのね、そんなことありえないでしょう。それにグレースは黒魔術師なんだから、毒殺は貴女だってば!
「かしこまりました。ポピー、開けて」
「はいはい」
──ったく!面倒くさい!
コルクを抜いた後、私は差し出されたグラスにワインを注ぎ、姉に渡さずに自分でゴクゴクと一気飲みした。
「うーん、とっても美味しいですわ!」
私の行動に婦人たちは驚きながらも、お互いに顔を見合わせ笑みを浮かべ始めた。
「ホホホホホホ……中々面白い侍女だこと!」
「そうですわね、オーホホホホホホホホホ!」
と、他の婦人も嘲笑う。そして、お酒に弱い私は次第にふらふらとしてしまった。
「どうやら毒ワインではないようね。ハリエット、貴女を正式に認めます」
「あ、ありがとうございます!」
「それにしても、新人の貴女がよくここまでたどり着いたわね。麗しのジョーに会ったとか?」
「いえ、お会いしておりません」
「ホホホ、貴女じゃないわ。そこの酔っ払いよ」と、ライラが指さして言う。
「え?私ですかあ?そんなこと言えましぇん!」
「まっ!ホホホホ……いいでしょう。奇跡の侍女を持って幸せだこと」
立ち上がったライラは姉に近づき、怪しげな小瓶を手渡した。
「これは?」
「私の派閥であることを証明する香水よ。常に持ち歩くこと」
「かしこまりました、ライラ様」
「それと、半月後に宮廷行列があるわ。貴女のデビューよ。このシェリーに聞いてしっかりと練習しときなさい」
シェリーは先程ワインを奪った下座の婦人で、姉の教育係に任命されたようです。つか、彼女は姉を凄く睨みつけています。
今、威圧するとこお⁉︎やな感じのお手付きさんねえ。大丈夫かしら?
「ご指導とご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。では、失礼いたします」
媚薬のライラの挨拶が無事に終わった後、私たちは急いで屋舎に戻った。次は引っ越しの準備があるのです。
「あ、そう言えば、大浴場のお掃除忘れてたあ!」
「ポピー様、もう階級が上がりましたので、免除されてますよ」
「そうなの?でもボスには報告しておかないと」
お酒に酔った私はよろよろしながらも大浴場へ行った。ボスは相変わらず侍女たちを指揮している。
「ボス、お世話になりました。派閥に入ったので引っ越しします!」
「まあ、ポピー、信じられないわね。羨ましい!でも本当におめでとう。良かったわね!」
「はい、短い間でしたが、ありがとうございました!」
「頑張ってね。私もがんばるわ!」
お父様、派閥に入り新たな日常が始まります。果たしてどんな生活が待っているのでしょう?あ、馬小屋からも脱出ですね。少しはまともな住まいを期待しています!
媚薬のライラが薄笑いを浮かべながら姉を迎えた。甘ったるい香水の匂いが漂ってくる。
ここは側妃の住むフロア。豪華なシャンデリアや高価な絵画などの装飾品が鮮やかに輝き、見事な空間が広がっている。中央には大きなテーブルがあり、ライラを上座に据え、左右に4人の美しい婦人が座っていた。おそらく、お手付きの方々でしょう。
──それにしてもライラって。
なんと厚化粧な!まつ毛が小指ほどあるじゃん!怖いよ!それに、何歳?結構オバさんじゃないの?
「お目にかかれて光栄でございます。ご挨拶にワインをお持ち致しました。宜しければ、お召し上がりください」
「ふーん、ワインね」
ライラは4人の婦人と目を合わせ、微笑んでいる。すると、下座の婦人がワインを乱暴に取り上げ、瓶の先を姉に向けた。
「お毒味して頂こうかしら?」
「えっ⁉︎」
「ハリエット。私はまだ貴女を信用しておりませんの。グレースの刺客かもしれませんから」
あのね、そんなことありえないでしょう。それにグレースは黒魔術師なんだから、毒殺は貴女だってば!
「かしこまりました。ポピー、開けて」
「はいはい」
──ったく!面倒くさい!
コルクを抜いた後、私は差し出されたグラスにワインを注ぎ、姉に渡さずに自分でゴクゴクと一気飲みした。
「うーん、とっても美味しいですわ!」
私の行動に婦人たちは驚きながらも、お互いに顔を見合わせ笑みを浮かべ始めた。
「ホホホホホホ……中々面白い侍女だこと!」
「そうですわね、オーホホホホホホホホホ!」
と、他の婦人も嘲笑う。そして、お酒に弱い私は次第にふらふらとしてしまった。
「どうやら毒ワインではないようね。ハリエット、貴女を正式に認めます」
「あ、ありがとうございます!」
「それにしても、新人の貴女がよくここまでたどり着いたわね。麗しのジョーに会ったとか?」
「いえ、お会いしておりません」
「ホホホ、貴女じゃないわ。そこの酔っ払いよ」と、ライラが指さして言う。
「え?私ですかあ?そんなこと言えましぇん!」
「まっ!ホホホホ……いいでしょう。奇跡の侍女を持って幸せだこと」
立ち上がったライラは姉に近づき、怪しげな小瓶を手渡した。
「これは?」
「私の派閥であることを証明する香水よ。常に持ち歩くこと」
「かしこまりました、ライラ様」
「それと、半月後に宮廷行列があるわ。貴女のデビューよ。このシェリーに聞いてしっかりと練習しときなさい」
シェリーは先程ワインを奪った下座の婦人で、姉の教育係に任命されたようです。つか、彼女は姉を凄く睨みつけています。
今、威圧するとこお⁉︎やな感じのお手付きさんねえ。大丈夫かしら?
「ご指導とご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。では、失礼いたします」
媚薬のライラの挨拶が無事に終わった後、私たちは急いで屋舎に戻った。次は引っ越しの準備があるのです。
「あ、そう言えば、大浴場のお掃除忘れてたあ!」
「ポピー様、もう階級が上がりましたので、免除されてますよ」
「そうなの?でもボスには報告しておかないと」
お酒に酔った私はよろよろしながらも大浴場へ行った。ボスは相変わらず侍女たちを指揮している。
「ボス、お世話になりました。派閥に入ったので引っ越しします!」
「まあ、ポピー、信じられないわね。羨ましい!でも本当におめでとう。良かったわね!」
「はい、短い間でしたが、ありがとうございました!」
「頑張ってね。私もがんばるわ!」
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