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第二部
11. 侍女の巻⑪
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後宮と屋舎の間くらいに幾つものお屋敷が並んでいる。ここが派閥組のお住まいです。
「同じ建物が6棟あるわね」
「ハリエット様は手前の屋舎側になります」
どうやら二大派閥が3棟づつ所有しており、1棟につき5.6人が住んでる共同生活の様です。でも屋舎よりかは随分マシです。
そのお屋敷へ足を踏み入れると……。
「ふぅぅん。……貴女が突然の新入りね。私がライラ組3号館のリーダーを務めてるリンダよ。序列は3番手ね。宜しくー」
ライラと同じ匂いがするこの女性は、パープル色のお団子ヘアが似合う、いえ団子が異様に大っきく頭のバランスがおかしいヘンテコな婦人です。
ま、また、濃いキャラが出てきたわねっ⁉︎
「お世話になります。ハリエットと申します」
「ハリエット?貴女の名前は今日から16番よ」
「16……番ですか」
「そう、ライラ組お手付き候補の序列が16番手だからね。ここでは番号で呼んでるの」
おいおい、番号ってまるで刑務所じゃん⁈
「皆を紹介するわ。4番、9番、10番、15番」
だから、ちゃんと名前で紹介してってば!
でも派閥に属してるだけあって、どなたも容姿端麗で気品のある婦人でした。……リーダーの髪型以外はね。
「ところで貴女の教育係ってシェリー様とお伺いしたけど?」
「はい、そうでございます。えーと、4番様?」
「あら、大変ねえ。オホホホホ」
婦人たちが口元に手を添えて思わせぶりな微笑をする。
「あの……何か問題でも?」
「あの御方は、『潰しのシェリー』って呼ばれてるの」
「つ、潰しの⁉︎」
「何人も辞めていったわ。貴女も気をつけてね。16番さん?」
「オーホホホホホホホホホホホホ!」
姉は驚いて立ち尽くしております。
お姉様、出世したらしたで大変です。頑張ってくださいね!でも嫌になったらさっさとお家に帰りましょう。何なら私がシェリーを殴って差し上げますから……。
***
3号館の婦人たちの挨拶が済み、エミリーに案内され姉の部屋へ行く。まあまあの広さだった。屋舎の極小部屋とは大違いです。
となると、私の住まいがとても気になる。
「ポピー様はこちらです」
エミリーについて行くと、お屋敷の外にある納屋の様なボロい建物が目に入り、唖然とした。
「…………」
う、馬小屋よりマシかな⁉︎物置?農具が入ってそうな物置小屋ね。やっぱ侍女って環境良くないわ。まあ今度は一人部屋だからお気楽だけどね……。
期待した私が甘かったと反省しております。
「それとポピー様。私、本日付けで派閥組の女官に任命されましたので何なりと仰ってください」
「そうなの?それって良い事?」
「はい。女官も婦人同様、階級があります。今回ハリエット様が異例のご出世をなさったので、私も屋舎付きから昇進しました。ありがとうございます!」
「ふーん、そうなんだ。でもエミリーが側に居ると心強いわ。ねえ、早速だけど聞いていい?」
「何でしょう?」
「ここの侍女ってさ、何するの?」
「はい。ご説明致します。ここではお食事やお掃除などは使用人が行いますので家事は不要ですが、逆に使用人を監視する必要があります」
「監視?何で?」
「お金に釣られた使用人が悪事を働く事案が時々発生するのです」
「悪事って……毒盛りとか⁉︎」
「まあ、そうですね。有毒物の混入やドレスに穴を空けてたり……特に宮廷行列の前は要注意です。実はそれを指示してるのも侍女なんですけどね」
ま、まじっすか⁉︎足の引っ張り合いなの⁉︎
「なので、お毒味も侍女のお仕事です」
お父様、どうやらこの辺から危険地帯の様です。婦人たちが疑心暗鬼になっています。たとえライバルを呪い又は毒殺してでも寵愛を勝ち取る、まさに伏魔殿です──!
「同じ建物が6棟あるわね」
「ハリエット様は手前の屋舎側になります」
どうやら二大派閥が3棟づつ所有しており、1棟につき5.6人が住んでる共同生活の様です。でも屋舎よりかは随分マシです。
そのお屋敷へ足を踏み入れると……。
「ふぅぅん。……貴女が突然の新入りね。私がライラ組3号館のリーダーを務めてるリンダよ。序列は3番手ね。宜しくー」
ライラと同じ匂いがするこの女性は、パープル色のお団子ヘアが似合う、いえ団子が異様に大っきく頭のバランスがおかしいヘンテコな婦人です。
ま、また、濃いキャラが出てきたわねっ⁉︎
「お世話になります。ハリエットと申します」
「ハリエット?貴女の名前は今日から16番よ」
「16……番ですか」
「そう、ライラ組お手付き候補の序列が16番手だからね。ここでは番号で呼んでるの」
おいおい、番号ってまるで刑務所じゃん⁈
「皆を紹介するわ。4番、9番、10番、15番」
だから、ちゃんと名前で紹介してってば!
でも派閥に属してるだけあって、どなたも容姿端麗で気品のある婦人でした。……リーダーの髪型以外はね。
「ところで貴女の教育係ってシェリー様とお伺いしたけど?」
「はい、そうでございます。えーと、4番様?」
「あら、大変ねえ。オホホホホ」
婦人たちが口元に手を添えて思わせぶりな微笑をする。
「あの……何か問題でも?」
「あの御方は、『潰しのシェリー』って呼ばれてるの」
「つ、潰しの⁉︎」
「何人も辞めていったわ。貴女も気をつけてね。16番さん?」
「オーホホホホホホホホホホホホ!」
姉は驚いて立ち尽くしております。
お姉様、出世したらしたで大変です。頑張ってくださいね!でも嫌になったらさっさとお家に帰りましょう。何なら私がシェリーを殴って差し上げますから……。
***
3号館の婦人たちの挨拶が済み、エミリーに案内され姉の部屋へ行く。まあまあの広さだった。屋舎の極小部屋とは大違いです。
となると、私の住まいがとても気になる。
「ポピー様はこちらです」
エミリーについて行くと、お屋敷の外にある納屋の様なボロい建物が目に入り、唖然とした。
「…………」
う、馬小屋よりマシかな⁉︎物置?農具が入ってそうな物置小屋ね。やっぱ侍女って環境良くないわ。まあ今度は一人部屋だからお気楽だけどね……。
期待した私が甘かったと反省しております。
「それとポピー様。私、本日付けで派閥組の女官に任命されましたので何なりと仰ってください」
「そうなの?それって良い事?」
「はい。女官も婦人同様、階級があります。今回ハリエット様が異例のご出世をなさったので、私も屋舎付きから昇進しました。ありがとうございます!」
「ふーん、そうなんだ。でもエミリーが側に居ると心強いわ。ねえ、早速だけど聞いていい?」
「何でしょう?」
「ここの侍女ってさ、何するの?」
「はい。ご説明致します。ここではお食事やお掃除などは使用人が行いますので家事は不要ですが、逆に使用人を監視する必要があります」
「監視?何で?」
「お金に釣られた使用人が悪事を働く事案が時々発生するのです」
「悪事って……毒盛りとか⁉︎」
「まあ、そうですね。有毒物の混入やドレスに穴を空けてたり……特に宮廷行列の前は要注意です。実はそれを指示してるのも侍女なんですけどね」
ま、まじっすか⁉︎足の引っ張り合いなの⁉︎
「なので、お毒味も侍女のお仕事です」
お父様、どうやらこの辺から危険地帯の様です。婦人たちが疑心暗鬼になっています。たとえライバルを呪い又は毒殺してでも寵愛を勝ち取る、まさに伏魔殿です──!
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