15 / 30
第二部
15. 侍女の巻⑮
しおりを挟む
キース様を目で追っていたその時です。
「ポピー?」
どこかで聞いた事のある声で呼ばれた。
あっ、貴方は麗しのジョー!
「ジ……いえ、仕立て屋さん。ご機嫌いかが?」
あー、やばい、やばい。公衆の面前でジョーって呼びそうになったわ。
「オホン。ハリエット様の行進を見ないのか?」
「うん、さっきチラッと見たから十分よ。それよりも姉の反応を探ってましたの」
「なるほど。まあまあの評判みたいだな」
「え?そうなの⁉︎」
「俺も後宮婦人の人気には興味があってね。で、ポピー、ちょっといいか?」
「うん?」
何やら内密のお話でもあるかの様に広場の片隅へ連れて行かれた。
「何よジョー?私、ミッションの最中なのよ」
「ハリエットの評判なら俺が探っといてやる」
「ホント⁉︎」
「ああ、俺の部下が貴族に紛れて密かに聞き回ってるんだ」
「何でそんな事するのよ?」
「そりゃ、お手付きされずに定年迎える御令嬢と独身官僚や貴族の仲立ちをするためさ」
「ほーう。愛のキューピットですか?そんな慈善事業みたいな事してるんだ?」
「まあな。後宮婦人って言ったら一応、箔が付く。お手つきされてないなら、このまま地方へ返すのは勿体ないからね」
ふぅぅん、ふぅぅぅん。じゃ、我が姉も皇太子様には相手されないけど、もしかしたら何処ぞの官僚や貴族に見初められるかも知れないって事か。
「そっか。姉にも良い御縁があれば、後宮へ来た甲斐があったって事なのねー」
「ああ。そうだな」
「で、何?私に御用があるんでしょう?」
「実はキース様から頼まれてな」
「えっ!キ、キース様から⁉︎」
「何だ、声が上ずってるぞ」
「だ、だって~ん」
「まあ良い……明朝、狩猟場で乗馬しようってさ。どうだ?侍女の仕事もあるけど難しい様だったら裏から手を回すが?」
「乗馬ですって⁉︎行く行くーー!姉なら何とか言いくるめるから、絶対に行きます!」
だって私の処女喪失のチャンスですもん!
そして、宮廷行列も無事終わって私はルンルン気分でお屋敷へ戻った。姉はライラ組の打ち上げに行ってる様です。特別なグレートホールなので侍女たちは呼ばれませんでした。それ幸いに私は納屋へ帰り明日に備えて寝ます。
あー、明日が待ち遠しいわ!
***
翌朝。二日酔いっぽく熟睡してる姉にお手紙を書いて、私は狩猟場へ行った。
朝日に反射する美しい湖の水面を眺めながら、キース様をお待ちしていると、木々の隙間からフィガーを連れた白馬の騎士が、ゆっくりとこちらへ向かって来るのが見えた。
「ああ、キース様だ。私のホワイトナイトよ!」
やがて、私に気がついたフィガーがちょっと興奮したかの様に走り出す。
「ブルル、ブルル」
「あら、フィガー。元気だったのー?会いたかったよお。うふふ」
「やあ、ポピー。フィガーはあれから良い子にしてたんだ。びっくりするくらいね。でも最近ソワソワしてる風だったから、もしかしてポピーに会いたいのかなって思ってね」
「そーなんだ、フィガー!嬉しいわ。よしよし」
私は早速フィガーに跨り、軽く走ってみました。やっぱり乗馬は楽しい。それに私とフィガーは息ピッタリなのです。
背後からキース様も追っ掛けて来て、私たちはゆっくりと湖畔をお散歩した。
あー、空気も美味しいし、気持ちいいし、言う事ないわー!
と、乗馬の楽しさから本来の目的を忘れかけていた。でも、ふいに思い出したのです。
そうだった。私を抱いて貰わなければ!で、でも、どう伝えれば良いの⁉︎
お父様、『抱いてください』ってストレートに告白すべきでしょうか?ジョーの時みたいに、あっさりと振られるのが怖いです。ああ、どうしましょう!
「ポピー?」
どこかで聞いた事のある声で呼ばれた。
あっ、貴方は麗しのジョー!
「ジ……いえ、仕立て屋さん。ご機嫌いかが?」
あー、やばい、やばい。公衆の面前でジョーって呼びそうになったわ。
「オホン。ハリエット様の行進を見ないのか?」
「うん、さっきチラッと見たから十分よ。それよりも姉の反応を探ってましたの」
「なるほど。まあまあの評判みたいだな」
「え?そうなの⁉︎」
「俺も後宮婦人の人気には興味があってね。で、ポピー、ちょっといいか?」
「うん?」
何やら内密のお話でもあるかの様に広場の片隅へ連れて行かれた。
「何よジョー?私、ミッションの最中なのよ」
「ハリエットの評判なら俺が探っといてやる」
「ホント⁉︎」
「ああ、俺の部下が貴族に紛れて密かに聞き回ってるんだ」
「何でそんな事するのよ?」
「そりゃ、お手付きされずに定年迎える御令嬢と独身官僚や貴族の仲立ちをするためさ」
「ほーう。愛のキューピットですか?そんな慈善事業みたいな事してるんだ?」
「まあな。後宮婦人って言ったら一応、箔が付く。お手つきされてないなら、このまま地方へ返すのは勿体ないからね」
ふぅぅん、ふぅぅぅん。じゃ、我が姉も皇太子様には相手されないけど、もしかしたら何処ぞの官僚や貴族に見初められるかも知れないって事か。
「そっか。姉にも良い御縁があれば、後宮へ来た甲斐があったって事なのねー」
「ああ。そうだな」
「で、何?私に御用があるんでしょう?」
「実はキース様から頼まれてな」
「えっ!キ、キース様から⁉︎」
「何だ、声が上ずってるぞ」
「だ、だって~ん」
「まあ良い……明朝、狩猟場で乗馬しようってさ。どうだ?侍女の仕事もあるけど難しい様だったら裏から手を回すが?」
「乗馬ですって⁉︎行く行くーー!姉なら何とか言いくるめるから、絶対に行きます!」
だって私の処女喪失のチャンスですもん!
そして、宮廷行列も無事終わって私はルンルン気分でお屋敷へ戻った。姉はライラ組の打ち上げに行ってる様です。特別なグレートホールなので侍女たちは呼ばれませんでした。それ幸いに私は納屋へ帰り明日に備えて寝ます。
あー、明日が待ち遠しいわ!
***
翌朝。二日酔いっぽく熟睡してる姉にお手紙を書いて、私は狩猟場へ行った。
朝日に反射する美しい湖の水面を眺めながら、キース様をお待ちしていると、木々の隙間からフィガーを連れた白馬の騎士が、ゆっくりとこちらへ向かって来るのが見えた。
「ああ、キース様だ。私のホワイトナイトよ!」
やがて、私に気がついたフィガーがちょっと興奮したかの様に走り出す。
「ブルル、ブルル」
「あら、フィガー。元気だったのー?会いたかったよお。うふふ」
「やあ、ポピー。フィガーはあれから良い子にしてたんだ。びっくりするくらいね。でも最近ソワソワしてる風だったから、もしかしてポピーに会いたいのかなって思ってね」
「そーなんだ、フィガー!嬉しいわ。よしよし」
私は早速フィガーに跨り、軽く走ってみました。やっぱり乗馬は楽しい。それに私とフィガーは息ピッタリなのです。
背後からキース様も追っ掛けて来て、私たちはゆっくりと湖畔をお散歩した。
あー、空気も美味しいし、気持ちいいし、言う事ないわー!
と、乗馬の楽しさから本来の目的を忘れかけていた。でも、ふいに思い出したのです。
そうだった。私を抱いて貰わなければ!で、でも、どう伝えれば良いの⁉︎
お父様、『抱いてください』ってストレートに告白すべきでしょうか?ジョーの時みたいに、あっさりと振られるのが怖いです。ああ、どうしましょう!
0
あなたにおすすめの小説
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした
柚木ゆず
恋愛
行き倒れていた3人の男女を介抱したら、その人達は8年前にわたしをお屋敷から追い出した実父と継母と腹違いの妹でした。
お父様達は貴族なのに3人だけで行動していて、しかも当時の面影がなくなるほどに全員が老けてやつれていたんです。わたしが追い出されてから今日までの間に、なにがあったのでしょうか……?
※体調の影響で一時的に感想欄を閉じております。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる