悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

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第1章 ざまぁがしたいっ!!

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「ポピー、これはかなりの高級ワインね。流石は貴族院の卒業パーティーだわ。こんなの見せられたらシェリー様も我慢出来ないの分かる気がするなあ」

「エミリー、だからと言ってシェリー様がガバガバ飲まない様にちゃーんと見張っといてよ!」

「うん、分かった。コキ使ってやるから!」

「頼んだからね。…あ、ちょうど今、卒業式が始まったわ」

 わたくし共は貴族院の会館の控え室から、そっとホールを覗いて見た。厳かな式典らしく、御来賓や御父兄が見守る中で卒業生が神妙な面持ちで理事長の挨拶を聴き入っている。

 馬鹿女も目を閉じて真剣に聞いてる様だ。でも、何だか様子がおかしい。コックリコックリしながらカラダがふらついているのだ。

 あっ、アイツ立ったまま寝てる! ったく馬鹿なんじゃない? どういう神経してるのよ!

 背後の取り巻きが上手くカラダを支えているから、倒れる事はないだろうと少し安心したものの、馬鹿女には改めて呆れてしまう。

 まあ、珍しく朝早く起きたからね。…いえいえ、アイツをかばうつもりは毛頭ございませんわよ。普段からだらしないのがいけないのです。

 そんな馬鹿女を気にしている内に理事長や御来賓の挨拶などが終わり、卒業証書が授与される。ここはエリオット様が代表でお受け取りなされた。さらに代表の挨拶を流暢なスピーチで完璧にお話され、無事式典は終了した。

「さあ、ここからが忙しくなるわよー」

 卒業生退場と共にパーティー会場づくりが始まる。椅子など片付けて、丸テーブルを配置、お花を飾り垂れ幕をセットするなど職員総出で行われた。

 ある程度形が整うと厨房からお料理、お飲み物などを運んでひと段落ついた。でもわたくしはそこからエミリーと秘密のお部屋に戻り、ヘアーを整えお化粧を施し予め準備していたパーティー用のドレスを着飾る。忙しいったらありゃしない。

「あー、しんどいわー。つか、シェリー様はまだ来ないの?」

「御主人様やジャック様と馬車にお乗りになられるでしょうから、遅刻することはないと思いますよ」

「んー、でもメイド服に着替えるのにギリギリになっちゃうわ」

 全く、ヤキモキさせるわね。それに皆さんの前でジャック様とダンスを披露しなければならないなんてプレッシャーだわ。あー、早く今日が終わらないかなー。…まあ、でも婚約破棄もないし嫌な心配もしなくて良いから、まだマシなのかなー。

 ーーと、ここで馬鹿女が登場した。

「お・待・た・せ」

 その言い方が妙に腹が立つ。

「シェリー様、早速お着替えを!」

「ええ、楽しみね、パーティー」

 馬鹿女は機嫌が良かった。これからお給仕と言う労働が始まるというのにルンルンな気分の様だ。恐らく高級ワインの事で頭が一杯なのだろう。

 それにしてもメイド姿のアイツを見たら自分を見てる様でゾッとする。わたくしにそっくりだった。これでは誰一人として代わった事を見抜けないだろう。それだけに心配でもあった。

「シェリー様、しっかりとお給仕してください」

「何よ、分かってるわ。それよりアンタそこしっかりと踊りなさい。会場を大いに沸かせるのよ!」

「…はい。全力を尽くします」

 わたくしは握り拳に力を入れた。

 さあ、いよいよパーティーが始まる!! いざ、出陣よ!!

 




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