悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

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第1章 ざまぁがしたいっ!!

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「ご卒業おめでとうございます、シェリー様」

 会館へ連なる長い廊下で一人の紳士が片膝ついてわたくしに礼をとった。タキシード姿の彼は馬鹿女の実兄、ジャック様だ。美しいゴールドヘアーに目鼻立ちが整ったかなりのイケメンに、周りの女生徒たちから歓喜の声が聞こえてきた。

「お兄様、ありがとう…」

 彼の差し出された手をそっと握り、わたくしは会館へと入場する。何もかも予定通りだ。一方で馬鹿女の姿は見えなかった。御来賓や御父兄、それに卒業生とは別の通路から会館へ向かったのだろう。まあ、エミリーがついてるから大丈夫だと思う。と言うか、今のわたくしは影武者を演じる事で精一杯だった。

 会館へ足を踏み入れるとオーケストラがポップな音楽を演奏している。その中央ではダンスを踊るホールが七色のスポットライトに照らされていた。

 ああ、あの場所で最高のダンスを披露しなければならないのね…。緊張するわー。

「シェリー、暫く一緒に踊ってなかったけど大丈夫かい?」

「ええ、大丈夫と思いますわ。でもお兄様、お手柔らかにね」

「ああ、大会ではないから楽しんで踊ろう」

「はい。では、後ほど」

 一旦、ジャック様と離れて卒業生の集まっているダンスホールへ行った。ちょうどわたくしの取り巻きも側でスタンバイしている。準備は整った。

 続いて御父兄や教師の面々が会館へ入ってくる。
入口近くの壁側に幾つものテーブルが並んでおり、バイキング形式の豪華なお料理やお飲み物が配置されていた。そこで皆がグラスを受け取っている。

 そのドリンクお酒コーナーに!!

「ウエルカムドリンクどうぞ~」

 ええっ⁈

 遠くてよく見えないけど、アレは確かにわたくしの影武者だ。妙に愛想が良くそれなりに働いてる様だけど、とは聞いてないわよ⁈ アイツにそんなのやらせたら危険極まりないでしょー⁈ ったく、後で見に行ってやるから!

 わたくしは少々心拍数が上がった。

 やがてオーケストラの演奏が止まり、急に静かになる。その中でマイクから美声が聞こえてきた。

「御来賓、御父兄の皆様、本日はお忙しい中お集まり頂き心より感謝申し上げます。私、卒業生代表のエリオットと申します……」

 王子様の挨拶でパーティーが始まったのだ。

 その挨拶がひと段落して歓談の時間になると、お料理やお飲み物を求めてバイキングテーブルに皆が殺到して行く。

「シェリー様、わたくし共がお料理を取って参りますから」

 取り巻きにそう言われたけど、わたくしも同行する事にした。だってアイツが気になるから。

「ワイン如何ですか~」

「お水、頂けますか?」

「…あ」

 あ、じゃねぇ! つか、お化粧濃いじゃん⁈ アンタわたくしの影武者でしょう? 何やってんのよ! それにちょっとお酒臭いわ、飲んでる? 飲んでるのね⁈

「お水でございまーす。シェリー様? うふふ」

 コ、コイツー! ちゃんとやってよー! 












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