悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

文字の大きさ
21 / 61
第1章 ざまぁがしたいっ!!

21

しおりを挟む
「シェリー? 黙ってないで言いなさい。王子の発言、場合によっては侮辱罪で訴えても構わん」

 鬼の形相で問いかける御主人様に恐怖を感じてしまった。一方で王子様は先程とは打って変わって暖かい目をわたくしに向け、「さあ、全てを暴露してごらん…」と仰ってる様な気がした。

「あ、あの…」

 ああ、一体何を言おうとしてるの? 待って、落ち着いて…よく考えるのよ!

 わたくしは目を閉じて気持ちを整理してみる。

 馬鹿女にはこれまで散々な目に遭ってきた。いつか仕返ししたくて堪らなかった。もっと言えば、「死ねばいいのに!」とさえ思った事もある。わたくしは常に優秀な成績を求められ、お屋敷で散々勉強させられたし、ジャック様から厳しくダンスを教えて貰った。全てはアイツに代わってシェリーと言う淑女を作り出す為に…。でも幾ら努力したって、あの馬鹿女は悪役令嬢だった。いつかバレないかとヒヤヒヤしながらやりたくもない悪役令嬢を演じてきたの。もう、うんざりです。もう、そんな生活から解放されても良いんじゃない? 

 そうよ、誰よりもアイツにしたいのはわたくしなの!! …よおしっ。

 静かに目を開けた。もう迷ってられない。

「お父様、いえ、御主人様…」

「はあ? 御主人様だと?」

「まだお分かりになりませんか? わたくしは使でございます」

 その瞬間、静まり返った会館が騒ついた。御父兄、教師、卒業生らが顔を見合わせ口々に「何?」
「どう言う事?」と言ってる声が聞こえてくる。

「な、何を言い出すのだ、シェリー? あの使用人なら、あそこのカウンターでドリンクを配ってるじゃないか」

「あのお方がシェリー様なのです。わたくしたちは入れ替わっております」

「は…はははは…はは…シェリー、どうしたのだ、何故そんな見えすいた嘘をつく?」

「シュルケン公爵、これは本当の事だ。彼女は十年前からご令嬢の影武者を演じていた。勿論、貴族院への入学試験も期末照査もダンスも全てポピーがシェリーの代わりに行ってきた結果だ」

「ば、馬鹿な事を…?」

「貴方の自慢する令嬢の功績は全てポピーだったのです!!」

「何を突拍子のない事を! 王子、いくら貴方でも許しませんぞ。それにシェリー、お前まで! そんな話、誰が信じると言うのかっ⁈」

 御主人様の怒鳴り声で会館はまた静寂に戻った。ーーと、その時だ。ジャック様が突如わたくしたちの前に現れたのです。

「お父上様、このジャックはとっくに気がついていましたよ」

「ジ、ジャック⁈ えっ? お前まで…⁈」

 御主人様はジャック様とわたくしと馬鹿女をキョロキョロ見ながらかなり焦っていらっしるご様子。

 つか、ジャック様までご存知だとは? いつからバレてたの⁈ 凄く気になるっ。でもこれは心強いよ。御主人様はジャック様をかなり信用なさっている筈だから。

「ま、まさか、まさか…⁈」

「はい。ポピーはシェリーの影武者です」

「ほ、本当なのか、ジャック…い、いつから知ってたんだ…いや、今そんな事どうでもよいわ。お前がそう言うのならこの娘は使用人だろうな…ああ、何てこった…信じられない」

 ジャック様の参戦でわたくしがだと強制的に理解させられた御主人様は狼狽を隠せない。それを王子様は見逃さずトドメを刺された。

「シュルケン公爵、この罪は大きいぞ。皇族である僕を騙し、世間を騙した。このまま彼女と結婚など出来る筈もない!!」

「……は…。も、申し訳…あ、ありませ…ん」

 御主人様はうなだれつつ、馬鹿女を睨みつけた。

 さあ、アイツの断罪ショーの始まりだわ!!







 


しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

婚約者を奪われるのは運命ですか?

ぽんぽこ狸
恋愛
 転生者であるエリアナは、婚約者のカイルと聖女ベルティーナが仲睦まじげに横並びで座っている様子に表情を硬くしていた。  そしてカイルは、エリアナが今までカイルに指一本触れさせなかったことを引き合いに婚約破棄を申し出てきた。  終始イチャイチャしている彼らを腹立たしく思いながらも、了承できないと伝えると「ヤれない女には意味がない」ときっぱり言われ、エリアナは産まれて十五年寄り添ってきた婚約者を失うことになった。  自身の屋敷に帰ると、転生者であるエリアナをよく思っていない兄に絡まれ、感情のままに荷物を纏めて従者たちと屋敷を出た。  頭の中には「こうなる運命だったのよ」というベルティーナの言葉が反芻される。  そう言われてしまうと、エリアナには”やはり”そうなのかと思ってしまう理由があったのだった。  こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

過去に戻った筈の王

基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。 婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。 しかし、甘い恋人の時間は終わる。 子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。 彼女だったなら、こうはならなかった。 婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。 後悔の日々だった。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

処理中です...