悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

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第2章 何故、わたくしを!?

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 今日で何回目の訪問だろうか。もう半年が経つ。

 今、僕は馬車に乗って通い慣れた公爵邸へと向かっている。そこで付き人のバトラーから思いもよらない情報を手に入れた。

「お坊ちゃん、シェリー様に似た使用人の身元が分かりました」

「おお、そうか!」

 それは吉報だ。彼女の事が知りたい。僕はシェリーに会いに行ってるんじゃない。あの使用人を一目見るために通ってるんだ。ああ、こんなにワクワクしたのは久しぶりだぞ。早く知りたい! 知りたーいっ!

「えー、実はシュルケン公爵の遠い親戚でございまして、地方の小さな領地を治めている伯爵家のご令嬢でした」

「な、何だって? 伯爵だと?」

「はい。間違いありません」

「どうして伯爵令嬢が使用人をやってるんだ⁈」

「どうやら財政が困窮されていて、その資金をシュルケン公爵家が肩代わりしたとか。…正に没落寸前だったのを救われた様です。で、その借財のカタに公爵家へ売られたのではないかと思われます。まあ、シェリー様と同い年なのでお相手をなさってるのでしょう」

「そんな風ではなかったけどな。彼女は単なる使用人だった。…なあ、彼女の名を教えてくれ」
 
「ポピー・パーキーです」

 ポピーか。あの慎ましさは伯爵家で培われたものだったんだ。今日、逢えれば良いな…。

 だが、彼女は僕を避けている様だ。何故か分からないけど、たぶんシェリーに何か言われたのだろうな。さりげなく彼女の話題をすると途端に嫌な顔をするから、きっとそうに違いない。

「お坊ちゃん?」

「どうした?」

「あの使用人の事より、本日はシェリー様とダンスをご一緒されるとか?」

「うん、そうだったね。あまり気が進まないが」

「シェリー様のダンスは素晴らしいと評判です。是非、彼女の素敵な一面をご覧になられて下さい」

「あ、ああ…」

 ダンスなどどうでもよい。…と言いかけてやめた。残念だが婚約者はシェリーなのだ。ポピーではない。そっくりな二人は性格も立場もかけ離れている。とても残念だ。…だが、僕の気持ちは変えられない。


 ***


 やがて公爵邸へ到着した。僕は庭園を眺めながら密かにポピーを探す。時々、花を摘む姿が見られたから…。だがその期待も虚しく玄関口までたどり着いてしまった。

 今日も逢えないのかな…。

 そんながっかりした気分のまま、ハイテンションのシェリーがお迎えしてくれる。

「エリオット様ー! 今日はわたくしとダンスしましょうね! 新しい技を魅せてやるからー!」

「…それは楽しみだな」

「なーに? お元気ないですよー?」

 いやいや、元気なわけないだろ。…だがまあ、我慢するしかない。シェリーは婚約者だからな。きっと評判のダンスで彼女の良いところを発見出来るかもしれない。

 ポピーの事を想いながらも、僕は自分に無理をした。シェリーを好きにならなければ!







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