悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

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第2章 何故、わたくしを!?

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 お屋敷のホールでミニオーケストラによる演奏が始まった。流石は公爵邸だ。私的に雇った音楽隊や充分な施設が備わっている。そう言えばシェリーの兄、ジャックも相当な腕前らしい。

 僕も一応、宮廷で個人レッスンを受けているけど比じゃないだろうな。ダンスに懸ける情熱が違うからね。

「エリオット様、踊りましょう!」

「ああ…」

 彼女の肩下に手を添え、軽くステップを踏む。踊り慣れたスタンダードなワルツだ。これなら何とか形になるだろう。…だが、違和感を感じる。

 ん? 何かおかしいぞ。まるでタイミングが合ってない。態となのか? それとも僕の腕前を図ってるのか?

「うふふ」

 シェリーは満面の笑みを見せる。だが、僕たちのダンスはで全く噛み合わない。正直なところ彼女は下手としか言いようがなかった。

「新しい技って何?」

 僕は話題を提供してみた。このまま変なダンスを続けるのも辛いのだ。

「あー、アレよ。スタンディング・スピン・スペシャルね!」

「??」

 って言うのが意味不明だ。

「つまり、スピンの速い感じかな?」

「うん! 超高速回転よ!」

 スピン自体もかなり高速だよ。それをさらに? 何だかその大技について行く自信がないな。そもそもワルツとはゆっくりとした三拍子のダンスだ。滑らかに上下しながら美しく回転するもの。多少速いスピンはあるけど基本、優雅に踊るものだと認識している。

「いっくよーー!!」

「えっ⁈」

 突然、シェリーは演奏無視してスピンを始めた。高速でくるくると回りだす。

「ち、ち、ちょっと」

 その回転につられて僕の軸足もくるくると回る。だが、彼女をサポートしなければバランスが崩れてしまう。そんな僕の苦悩を楽しんでるかの様に「えへへ」と笑いながら回転するシェリーに苛立ちを感じた。

 そして僕は完全に目が回っていた。次の瞬間…、

 ーーバターンッ!!

「ぼ、坊っちゃん⁈」

 気がつくと二人は転倒していた。

 そりゃそうだ、準備も出来てないし能力もないのにあんな無謀な高速回転を続けていたらこうなるだろう。そもそも彼女は自分勝手だっ!

「いててて…」

 まあ、そうは思ってもシェリーが心配になって起き上がろうとした。彼女も倒れている。ところが、

「あーっはははははは…!!」

 仰向けになったシェリーは突然爆笑した。しかもドレスがはだけて下着が丸見えだった。

 うわっ、見てしまった! と言うか何で笑ってるんだ⁈

「あー、面白かったー!」

 シェリーは下着丸出しのまま僕に話しかける。

「回転凄かったでしょうー?」

「あ、あのね」

 僕は目を逸らす。すると、起き上がった彼女は下着が見えてるのに気がついた様だ。だが直そうとしない。

「あ、パンツ見たなー! うふふ」

「いや、見てない、見てない」

「なーんだ。見てもいいのにー!」

 この令嬢はどうかしてる。やっぱり好きになれない。こんな彼女と結婚しなければならないのか? 出来る事なら婚約破棄したい…。

 ーーそう茫然自失となっていた。















 
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