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第2章 何故、わたくしを!?
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母は機嫌が良かった。シェリーが噂と違って、とてもしっかりしていたからだ。これでは僕が嘘をついてる様に思われても仕方ない。
「ねえ、シェリー。ダンスしようよ」
最早この歓談に意味は無かった。ボロが出るより益々母の印象を良くするだけだ。早々に切り上げ、次なる作戦を実行しよう。
「あら、よっぽどダンスがしたいのね」
「そうだよ、お母様」
「シェリーのダンスは評判らしいから、わたくしも楽しみだわ」
「いえいえ、とんでもございません。わたくしのダンスなど、お見苦しいだけです」
「まあ、謙遜しちゃって。さあ、踊ってらっしゃい」
皇室専用のオーケストラが軽やかなリズムで向かえてくれた。僕らはミニホールの中央へ立ち、お互い手を合わせる。そして静かに演奏が始まった。
お母様。よーく見ててね。
ーーだが、…だが、だが、またしても、
僕は違和感を感じた。以前とは全く違う感覚だった。軽やかなステップ、そして優雅に舞うシェリーに驚きを隠せない。彼女はスタンダードなワルツを完璧に踊っていた。
じ、上手だ! 凄いぞ!
シェリーにリードされてる自分が情けなく思う。
何故だ、何故だ? これがシェリーの実力なのか? とても信じられない。僕は揶揄われていただけなのか⁈
「ね、ねえ、スタンディング・スピン・スペシャルはやらないの?」
「スペシャル…ですか?」
「ほら、公爵邸でやったじゃない。高速回転の!」
「何の事だか記憶にございませんわ」
え? いやいや、あの滅茶苦茶で自分勝手なスピンだよ。忘れたとは言わせないぞ。パンツ丸出しで転んだじゃないか⁈
だが、今日のシェリーは素敵なナチュラル・スピンターンやリバースターンを繰り広げ、見るものを魅了する美しいダンスしかやらない。
やがて曲が終わり、ホールに居た全員から拍手喝采を浴びた。彼女はドレスの裾を軽く持ち上げ、可愛いらしく礼を取る。
「素晴らしいわ、シェリー!!」
母も感動している。今の彼女は誰が見ても、僅か十歳の少女とは思えない気品溢れたお嬢様だった。
「エリオット、貴方も練習しないとついて行けなくなるわよ!」
「あ、ああ、そうだね…」
ダンス作戦も失敗した。それどころかシェリーの評判は増すばかりだ。
この後、庭園を散策するものの僕などそっち退けで母とシェリーが仲良く秋の紅葉を満喫していた。時折笑い声が聞こえてくる。カエルは現れないし、現れてもこの雰囲気なら無視するだろう。
そして何事もなく、この日が終わってしまった。単に母とシェリーの親睦を深めたに過ぎない結果だった。
***
「バトラー、今日のシェリーをどう思った?」
その晩、バトラーと反省会を行う事にした。公爵邸でのおてんばなシェリーを見てるのは彼だけだし、僕の味方だと信じている。
「素晴らしいお嬢様かと」
「そうではない。公爵邸の彼女とは思えないだろう」
「は、左様でございますね。まあ、王妃様の御前ですから猫を被ってらっしゃたのでは?」
「本性を隠したと言うのか? いや、それにしても変わり過ぎだ。あれは二面性を持った病的な人格だと思う。それとも…」
ふと、ポピーの顔が浮かんだ。
「あっ⁈ ま、まさか…いや、幾らなんでも」
「お坊ちゃん、如何なされました?」
僕はとんでもない推測をしてしまった。
あ、あれはシェリーではなく、ポピーだったとしたら…???
それなら納得がいく。だってそっくりだから誰も気づきはしないだろう。
そうだ、そうかもしれない。幾ら母の前だからって、あんなに人格が変わるのも可笑しな話だ。普通ありえない。
これは確かめたいぞ。何としても見破りたい!!
「バトラー、頼みがある!」
僕は一策を講じた。
「ねえ、シェリー。ダンスしようよ」
最早この歓談に意味は無かった。ボロが出るより益々母の印象を良くするだけだ。早々に切り上げ、次なる作戦を実行しよう。
「あら、よっぽどダンスがしたいのね」
「そうだよ、お母様」
「シェリーのダンスは評判らしいから、わたくしも楽しみだわ」
「いえいえ、とんでもございません。わたくしのダンスなど、お見苦しいだけです」
「まあ、謙遜しちゃって。さあ、踊ってらっしゃい」
皇室専用のオーケストラが軽やかなリズムで向かえてくれた。僕らはミニホールの中央へ立ち、お互い手を合わせる。そして静かに演奏が始まった。
お母様。よーく見ててね。
ーーだが、…だが、だが、またしても、
僕は違和感を感じた。以前とは全く違う感覚だった。軽やかなステップ、そして優雅に舞うシェリーに驚きを隠せない。彼女はスタンダードなワルツを完璧に踊っていた。
じ、上手だ! 凄いぞ!
シェリーにリードされてる自分が情けなく思う。
何故だ、何故だ? これがシェリーの実力なのか? とても信じられない。僕は揶揄われていただけなのか⁈
「ね、ねえ、スタンディング・スピン・スペシャルはやらないの?」
「スペシャル…ですか?」
「ほら、公爵邸でやったじゃない。高速回転の!」
「何の事だか記憶にございませんわ」
え? いやいや、あの滅茶苦茶で自分勝手なスピンだよ。忘れたとは言わせないぞ。パンツ丸出しで転んだじゃないか⁈
だが、今日のシェリーは素敵なナチュラル・スピンターンやリバースターンを繰り広げ、見るものを魅了する美しいダンスしかやらない。
やがて曲が終わり、ホールに居た全員から拍手喝采を浴びた。彼女はドレスの裾を軽く持ち上げ、可愛いらしく礼を取る。
「素晴らしいわ、シェリー!!」
母も感動している。今の彼女は誰が見ても、僅か十歳の少女とは思えない気品溢れたお嬢様だった。
「エリオット、貴方も練習しないとついて行けなくなるわよ!」
「あ、ああ、そうだね…」
ダンス作戦も失敗した。それどころかシェリーの評判は増すばかりだ。
この後、庭園を散策するものの僕などそっち退けで母とシェリーが仲良く秋の紅葉を満喫していた。時折笑い声が聞こえてくる。カエルは現れないし、現れてもこの雰囲気なら無視するだろう。
そして何事もなく、この日が終わってしまった。単に母とシェリーの親睦を深めたに過ぎない結果だった。
***
「バトラー、今日のシェリーをどう思った?」
その晩、バトラーと反省会を行う事にした。公爵邸でのおてんばなシェリーを見てるのは彼だけだし、僕の味方だと信じている。
「素晴らしいお嬢様かと」
「そうではない。公爵邸の彼女とは思えないだろう」
「は、左様でございますね。まあ、王妃様の御前ですから猫を被ってらっしゃたのでは?」
「本性を隠したと言うのか? いや、それにしても変わり過ぎだ。あれは二面性を持った病的な人格だと思う。それとも…」
ふと、ポピーの顔が浮かんだ。
「あっ⁈ ま、まさか…いや、幾らなんでも」
「お坊ちゃん、如何なされました?」
僕はとんでもない推測をしてしまった。
あ、あれはシェリーではなく、ポピーだったとしたら…???
それなら納得がいく。だってそっくりだから誰も気づきはしないだろう。
そうだ、そうかもしれない。幾ら母の前だからって、あんなに人格が変わるのも可笑しな話だ。普通ありえない。
これは確かめたいぞ。何としても見破りたい!!
「バトラー、頼みがある!」
僕は一策を講じた。
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