悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

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第2章 何故、わたくしを!?

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 定例となったシュルケン公爵邸の訪問日となった。いつもなら憂鬱な行事だったが、今日はとても気分が良い。何故なら『ポピーがシェリーの代わりを務めている』と言う疑念を確かめる期待があったからだ。それは最早、僕の願望と化していた。

「バトラー、その彼女は信用出来るのだろうな?」

「はい、大丈夫です。ご安心ください」

 僕が一策を講じたのは、公爵邸へ一流のスパイを送り込む事だった。タイミング良く使用人として潜り込む事に成功した女性は「エミリー」と言う二十歳の諜報員らしく、バトラーの信頼も厚い様だ。

「この事は…」

「勿論、誰も存じません。陛下も王妃様も」

「よし、では手筈通りに!」

「ははっ」

 使用人なら同じ使用人のポピーの動向がよく分かるであろう。もしかしたらシェリーに扮するシーンを目撃してるかもしれない。いや、目撃してなくても普段のシェリーの姿や性格に二面性があるのか、エミリーから見てどう感したのかも知りたい。

 僕はワクワクが止まらなかった。こんなに公爵邸へ行きたいと思った事はこれまでになかった事だ。


 ***


「エリオットさまーーっ!!」

「や…やあ、シェリー。元気そうだね」

 これだ。これがいつも会っているだ。相変わらずのテンションだが、まあ今日は我慢してお相手するからな。

 後はバトラー、頼んだぞ!!


 ※バトラー視点

 やれやれ、王子様にも困ったものだ。影武者だなんてそんな訳がない。しかし、かなり思い詰めている様だから、何とか丸く収めねばならんな。お二人の結婚は陛下の命、…これは私の仕事でもある。

 さて、任務と参りますか。

 王子様とシェリー様はお絵かきを楽しんでるご様子。此処には女官も居るから少々席を外しても大丈夫だろう。

「私、忘れ物をしたので馬車まで戻っても宜しいですかな?」

「あ、どうぞ…では誰かお付け致します」

「ああ、すまない」

 部屋から出るとエミリーが控えていた。予定通りだ。先ずは彼女からの報告を聞いてみたい。

 無言で庭園を歩く。周りに人気がない事を確認して彼女に小声で問いかけた。

「ポピーは何処に居る?」

「庭園の裏側で薪の整理をしてるかと…直接お話なさいますか?」

「いや、先ずはお前の報告を聞いてから判断する」

 お屋敷から出て、少し歩いた大通り沿いに馬車を止めていた。その影に隠れてエミリーの話を聞く。

「…で、どうなんだ?」

「はい、

「なっ⁈ な、何だと!! それは本当か⁈」

「まあ、正確には演じさせられていると言うべきでしょうね。この一月で五回は代わってるかと」

「だ、誰の指示なんだ? まさか十歳の少女が命令してるとは思えないぞ⁈」

「奥方様…グレース様です。この事に関わってるのは女官のライラ様のみ。今後、頻繁に代わるとなれば、わたくしも手伝わされるかも知れません」

 ああ、何て事だ…信じられない。こ、これはマズい。非常にマズい! このまま放置して、もし明るみに出れば婚約が白紙となる。この婚約は政略結婚なのだ。皇室と公爵家の関係が悪化すれば政局にも影響するだろう。

 …いや、待て、待てよ。むしろチャンスではないのか? 悪いのは公爵家だ。台頭著しいシュルケン公爵に負い目を感じさせれば、皇室に頭が上がらなくなるっ。

「そうか。分かった」

 此処はもっと慎重に考えるべきだ…。

















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