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第2章 何故、わたくしを!?
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※エミリー視点
「今日から貴族院かー。ねえエミリー、この制服似合うかなー、かわいい?」
「はい、とってもお似合いですわ」
「えへへ…」
等身大の鏡の前で無邪気にポーズを決めるシェリーを見ながら、わたくしは少々心が痛んだ。彼女は王子様が留学した事を知らされておらず、貴族院中等部で毎日逢えると思ってはしゃいでいるからだ。
そこへグレース婦人とその女官ライラが、ポピーを連れて広いエントランスに現れた。ポピーは薄汚れた使用人のワーククローズという出立ちだった。
ご婦人を見るなりシェリーは顔色が変わり、はしゃぐのをやめる。お母様が怖くて苦手な様だ。でもそれだけではない。ポピーがいる事に嫌悪感を抱いていたのだ。
「シェリー、今日は入学式ですわね。おめでとう」
「はい。ありがとうございます」
「ところで、貴女は新入生代表のご挨拶をしなければなりません」
「えっ⁈ な、何も聞いてませんが…?」
シェリーは不安そうにわたくしを見た。
「オホホホホ…心配しなくても良くてよ。ポピーに仕込んでおいたから」
「そ、そうなのですね…。え、でも挨拶は王子様ではないのですか?」
「あら、貴女は首席合格したのですよ。王子よりも優秀だったのです。まあ、貴女が受験した訳ではないけどね。オホホ…。それに王子は留学なさって不在ですわ」
「ええっ⁈ 留学!! …ですか⁈」
「突然よねえー。わたくしに何の連絡もないなんて全くびっくりしましたわ。でもいいじゃない。暫く会えないけど婚約者には変わりありませんから。それにこの間、貴女も少しは淑女になれるかもしれないし…」
シェリーはグレース婦人の話を半分も聴いてない。楽しみにしていた王子様との再会が無くなったと言うのが頭から離れないでいる様だった。
「ではエミリー、頼みましたよ。わたくしも後ほど参りますから」
「かしこまりました」
グレース婦人らが去っていくと、シェリーはポピーを睨んでいた。でも直ぐに明るい表情を見せて、
「ポピー、ご苦労様だこと。わたくしの代わりにしっかりとご挨拶してよね。まあそれにしても王子様が居ないってのは気が楽でいいわー!」
と、強がりを見せていた。
わたくしは少々嫌な予感がした。シェリーと二人っきりになると面倒くさい愚痴を聞かされるのが目に見えている。今ではすっかり頼られてる存在になっていたからだ。
…まさかわたくしが宮廷から送り込まれたスパイだとは露にも思ってないでしょうしね。
でも幾ら懐いているからと言ってあまり感情に流されてはいけない。単に動向を探るだけの任務ではないのだ。わたくしはバトラー様からある指示を受けていた。
「エミリー、辛い役目かもしれないが、影武者を頻繁に使わざるを得ないくらいシェリーを駄目な人間に仕向けるのだ。いいな? シェリーに同情するな、堕落させろ!!」
「は、…ははっ」
「それとポピーを助けよ。彼女が潰れては元も子もないからな」
「はっ、かしこまりました!!」
わたくしは宮廷に忠実なスパイだ。だからこの作戦の背景など知る必要もないし、シェリーが公爵家がどうなろうと関係ない。
ただ、指示に従うのみだーー。
「今日から貴族院かー。ねえエミリー、この制服似合うかなー、かわいい?」
「はい、とってもお似合いですわ」
「えへへ…」
等身大の鏡の前で無邪気にポーズを決めるシェリーを見ながら、わたくしは少々心が痛んだ。彼女は王子様が留学した事を知らされておらず、貴族院中等部で毎日逢えると思ってはしゃいでいるからだ。
そこへグレース婦人とその女官ライラが、ポピーを連れて広いエントランスに現れた。ポピーは薄汚れた使用人のワーククローズという出立ちだった。
ご婦人を見るなりシェリーは顔色が変わり、はしゃぐのをやめる。お母様が怖くて苦手な様だ。でもそれだけではない。ポピーがいる事に嫌悪感を抱いていたのだ。
「シェリー、今日は入学式ですわね。おめでとう」
「はい。ありがとうございます」
「ところで、貴女は新入生代表のご挨拶をしなければなりません」
「えっ⁈ な、何も聞いてませんが…?」
シェリーは不安そうにわたくしを見た。
「オホホホホ…心配しなくても良くてよ。ポピーに仕込んでおいたから」
「そ、そうなのですね…。え、でも挨拶は王子様ではないのですか?」
「あら、貴女は首席合格したのですよ。王子よりも優秀だったのです。まあ、貴女が受験した訳ではないけどね。オホホ…。それに王子は留学なさって不在ですわ」
「ええっ⁈ 留学!! …ですか⁈」
「突然よねえー。わたくしに何の連絡もないなんて全くびっくりしましたわ。でもいいじゃない。暫く会えないけど婚約者には変わりありませんから。それにこの間、貴女も少しは淑女になれるかもしれないし…」
シェリーはグレース婦人の話を半分も聴いてない。楽しみにしていた王子様との再会が無くなったと言うのが頭から離れないでいる様だった。
「ではエミリー、頼みましたよ。わたくしも後ほど参りますから」
「かしこまりました」
グレース婦人らが去っていくと、シェリーはポピーを睨んでいた。でも直ぐに明るい表情を見せて、
「ポピー、ご苦労様だこと。わたくしの代わりにしっかりとご挨拶してよね。まあそれにしても王子様が居ないってのは気が楽でいいわー!」
と、強がりを見せていた。
わたくしは少々嫌な予感がした。シェリーと二人っきりになると面倒くさい愚痴を聞かされるのが目に見えている。今ではすっかり頼られてる存在になっていたからだ。
…まさかわたくしが宮廷から送り込まれたスパイだとは露にも思ってないでしょうしね。
でも幾ら懐いているからと言ってあまり感情に流されてはいけない。単に動向を探るだけの任務ではないのだ。わたくしはバトラー様からある指示を受けていた。
「エミリー、辛い役目かもしれないが、影武者を頻繁に使わざるを得ないくらいシェリーを駄目な人間に仕向けるのだ。いいな? シェリーに同情するな、堕落させろ!!」
「は、…ははっ」
「それとポピーを助けよ。彼女が潰れては元も子もないからな」
「はっ、かしこまりました!!」
わたくしは宮廷に忠実なスパイだ。だからこの作戦の背景など知る必要もないし、シェリーが公爵家がどうなろうと関係ない。
ただ、指示に従うのみだーー。
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