悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

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第2章 何故、わたくしを!?

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「あー、あたくしもダンスしたいよおー!」

「シェリー様、ダンスの授業は影武者がやると決められてるでしょう?」

「うー…でもやりたいいっ。クラスの仲間と楽しく過ごしたいのー!」

「ダメです! 奥方様から厳命されてます!」

「むーん…退屈だよー。エミリー」

 貴族院へ入学して三ヶ月、院生活も慣れてきた頃、少しずつ影武者と交代する機会も増えていた。公式な行事は勿論の事、ダンス、学力照査に加えて苦手な語学、お料理など…。それ以外の授業もポピーの様な優秀さをアピール出来ず、自己嫌悪に陥ってる姿をよく見かける。シェリーの実力ではどう頑張ったって、中の下くらいなのだ。

 でも、彼女を慕う友達は多かった。王子様の婚約者・学年首席・公爵令嬢とその響きは魅力的だ。そして明るい性格(悪く言えば能天気)は人を惹きつける。いつも自然と回りに人が集まっていた。

「では、わたくしとダンスしましょう」

「うん、その言葉待ってた。よおし、やろうか!」

 やれやれ。いつもダンスの相手をして疲れるわ。

 この貴族院はシュルケン公爵が理事長を務め、実質グレース婦人が運営している。だからわたくしどもには「秘密のお部屋」と言う特別に与えられた拠点があり、ここを影武者との交代やシェリーの待機場所としてフル活用していた。

「ねえ、エミリー」

「何ですか?」

「何かねー  、理事長がお父様だからー! とかヘンな噂が流れてるって友達から聞いてねー、複雑な気分なんだよお」

 その噂、わたくしが流してますが…。

「そう。それはけしからんな! でも気にする事はありません。シェリー様には多くのお仲間がいますし、堂々と振る舞えば良いのです」

「う、うん、でもね…先生に当てられて答えられない事があってね。だからわたくしの実力を疑う人もいるんだなって思うの」

「まあ、授業受けるのが苦痛ならポピーと代わっても問題ないですよ。差し当たりのない授業とかお昼休憩や放課後だけ楽しめば、そんな不安も無くなるでしょう」

「そんなに代わって良いの? でも、それじゃ退屈過ぎる! それに授業についていけなくなるよ?」

「お勉強なら、わたくしが教えて差し上げますわ。貴族院の卒業生ではないけど、地方のまあまあのトコ出てますから。あとは退屈凌ぎですね」

 シェリーは天然なところもあるけど基本的に素直で良い子だ。信頼してるわたくしの言う事もよく聞く。

 まあ相手は十三歳の少女だからね。懐柔し易い。

「お昼ご飯を食べて、ポピーと交代したらお昼寝でもしましょうか。わたくしも事務仕事を仰せつかっておりますし、一緒にいられないので」

「うーん、どうしよっかなー、また先生に当てられるの嫌だし…それに午後からの授業って眠いんだよねー」

「だったらお昼寝が一番です。気持ち良いしスッキリしますよ。奥方様には内緒にしときますから」

「う…ん。じゃあ、今日はそうする」

 よし、それで良いよ。楽に過ごしましょう。影武者が居るから大丈夫。何も心配する事はないわ。

 わたくしは堕落の道へと誘い出した。






















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