悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

文字の大きさ
40 / 61
第2章 何故、わたくしを!?

40

しおりを挟む
「あの追っかけ、編入生でしたわ」

 放課後になるといつも中庭で取り巻きとお茶会を開いていた。話題はもっぱら謎のオンナの事だ。

「何者なの?」

「ミーアって言う特待生らしいけど全く正体不明ですね」

「生徒会…かしら?」

 わたくしの王子様はこの度、生徒会長に就任された。生徒会室を拠点に様々な行事を取り仕切り活動しておられる。

「いえ、期中交代は選挙で決めるのが慣例でございますから、あの娘は関係ないと思いますよ」

「ふぅぅん。ふぅぅん。じゃ、ただの追っかけか…」

 気に食わないわね。これまで王子様に纏わり付く不届き者は大概厳しくしてきたのに、生徒会でもないただのファンが王子様に引っ付いて歩くなんて許せない。

 久々に現れた馬鹿女に腹ただしい反面、わたくしはどこか楽しんでいた。だって暇つぶしになるからね。

「シェリー様、どうなさいますか?」

「そうねー  、先ずはかな。うふふ」

 警告にも段階がある。その壱はだ。わたくしは貴族院のボス、側近の取り巻き含めて配下は院内の半数くらいは居るだろう。女生徒の半数が馬鹿女を「睨んで威圧」するのだ。これでヤバいと悟るのが殆どで大概大人しくなる。

「分かりました。威圧の御触れを回します。明日が楽しみですねー」

「そうね。わたくしの婚約者に付き纏ったらどうなるのか、思い知るがいいわ」

「オーホホホホホホホホ…」

 取り巻きも楽しんでる様だ。わたくしも楽しいよ。


 ***


「ミー…何とか様ですか?」

「そうよ、ポピー。王子に群がる馬鹿女が居るからアンタも一応、知っといてねー」

 お屋敷の大浴場に隣接するマッサージルームで、わたくしはお風呂上がりのマッサージをポピーにやらせていた。大嫌いなヤツだけど情報共有は大事だ。と言うか、エミリーの勧めで仕方なく一緒に居る時間を作っている。まあ、今では殆ど影武者を使ってるからどちらかと言えば、わたくしが情報を聞きたかったのが本音だけどね。

「どうなされるのですか?」

「先ずは威圧してビビらせてやる」

「そんな…」

「ん? なに? 王子が迷惑してるのよ?」

「王子様が? それは大変です」

「そうでしょ、うん。…あ、言っとくけどね、わたくしは彼の事、何とも想ってないからね。婚約者だから気にかけてるだけ。わたくしが憧れてるのはロイヤルファミリーになって贅沢三昧な暮らしがしたいだけだから」

「王子様の事、お好きではないのですか? それと、今でも充分なお暮らしかと思いますが…?」

「馬鹿ねー、あんなカエルにびくびくする様な男、どうでもいいわよー。全くお坊ちゃんなんだから。それとね、皇室と公爵じゃ天と地くらいの差があるの! 分かってないわね、アンタ~」

 ふふん。子供の頃が懐かしいわ。あの頃が一番楽しかった気がする。月一回逢えるのがどれだけ嬉しかった事か。…王子様とたくさんお話ししたよね。一緒にダンスしたよね。もう一度、彼と踊りたいなー。

 結婚したら今まで我慢した分、全力で甘えてやるからねっ。














しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

処理中です...