悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

文字の大きさ
45 / 61
第2章 何故、わたくしを!?

45

しおりを挟む
 ※エリオット視点(物語は少し前に遡る)

「あの娘を貴族院へ?」
 
「はい、女ながら柔術・剣術共に優れた兵士です。是非お側に…」

 十七歳になった僕は久しぶりに元付き人のバトラーと宮廷の武道館で会っていた。今の彼は諜報機関に身を寄せ、陛下から特命任務を指示されてるみたいだ。

「僕の周りは騎士で固めてるが?」

 騎士団の演練を共に眺めながら疑問を呈した。

「女性ならではの活躍もあります。それにゆくゆくは王子様のお側に仕えさせたいと思っています。ならば早い方が宜しいかと存じまして」

「そうか…。彼女の名は?」

「ミーアと申します…あ、平民ですが強さは勿論、学力も私が保証致ます。是非…」

「分かった。バトラーが言うのなら間違いない」

「ははっ、ありがたいお言葉」

「ところで…」

 僕は彼に聞きたい事があった。今日はその為に会っている様なものだ。

「エミリーの事…ですかな?」

「う、うむ。あれからどうなったのかなと」

「彼女を潜伏させて六年、王子様が留学なさる前にもご報告しましたが、シュルケン公爵の不正など、足元をすくうネタを探らせております」

「そうではなくて。ほら、僕が昔言ってた…」

 恥ずかしくて言い難いけど、影武者の事を聞かずして帰るわけにはいかない。僕はまだどこかで希望を持っていたんだ。

「王子様、それを回答する前に正直なお気持ちを聞かせてください」

「何の気持ちをだ?」

「お覚悟です。もし、ポピーが影武者を演じていたとすればどうなさいますか?」

「そ、それは…⁈ えっ⁈ まさか…?」

「シェリー様との婚約を破棄なさいますか? いや破棄したいですか?」

 な、何故そんな事を聞く? 彼女は影武者だったと言うのか? そうなのか? そうなんだな⁈

「答えないと教えてくれないのか?」

「申し訳ございません。王子様の事を思えばこその判断でございます」

「ならば言おう。本音は婚約破棄したい。出来ればポピーと結ばれたい。僕は彼女が影武者であってほしいと子供の頃から願っていたからね。だが…、」

 そんな我儘が簡単に許されるとは思っていない。これは政略結婚だ。皇室と力のある公爵家との絆を深める為だと、十歳の頃から散々言い聞かされてきた。だからシェリーを好きになろうとした経緯がある。

「現実的には難しいと?」

「そうだろうな。例え彼女が影武者であったとしても陛下がお決めになられた縁談だ。僕の我儘は通らないだろう」

 ああ、だが僕はポピーが好きだ。あれほど公爵邸で探しても逢えなかった君が、今では用務員として働いている。毎日眺められる日が来るなんて思ってもみなかったよ。とても嬉しい。シェリーには悪いけど僕はポピーと生きていきたい。

 その想いは益々強くなっている。だから苦しいんだ。

「私に…としたら? まあ全ては王子様のお考え次第ですが」

「バトラー、もういいだろう。いい加減教えてくれ。彼女が影武者なんだな⁈ 宮廷で会っていたのはポピーだったんだな⁈」

「…はい。黙っていて申し訳ございませんでした。直ぐに報告出来る状況ではなかったのです」

 それは余りにも衝撃的で僕は愕然としたーー。











しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

処理中です...