56 / 61
第3章 逆転ざまぁだーー!!
56
しおりを挟む
「お父様? お話というのは…?」
私は屋敷の執務室へ呼ばれた。父は何やら深刻な面持ちだ。
「今日な、宮廷で陛下の謁見を受けてな…」
「処分が下ったのですか?」
「まあ…」
父の話では、
一、貴族院理事長の解任
二、領地の半分没収
三、エリオット王子御成婚の後に引退
と言う厳しいものだった。確か王子はシェリーの貴族院卒業取り消しとポピーの卒業認定、それに公爵家の養女にして改めて結婚する事で罪は不問にすると言ってた筈…。陛下はそれをお認めにならなかったと言う訳か? 納得しかねる。
「仕方ない…あとはお前に任せた。お前は幸い皇室の評判が良い。王子にも信頼されている。どうか落ち込んだシュルケン家を繁栄されてくれ」
「私には荷が重すぎます。それに…」
皇室の陰謀を父に言おうとしたがやめた。まだ推測の段階だ。混乱するだけだろう。
「何かあるのか?」
「いえ、ところでエミリーですが、此処を辞める意思が強い様で…あ、シェリーが寂しがるので」
「ああ、彼女はポピーについて行くらしい」
「は?」
「どう言うやり取りしたのか知らんが、皇室に引っ張られたのだ」
「で、では女官か何かに?」
「そうだろうな…随分と出世した様だ」
これは益々怪しい。私は彼女に尋問しようか迷っていた。聞いたところで諜報員が簡単に口を割るとは思えない。しかし何とかして尻尾を掴みたいのだ。
そう考えるうちに数日が経過し、私は王子から宮廷へ呼ばれてしまった。会いたくはないが探りを入れるチャンスでもある。
「ジャック、明日公爵邸へ行こうと思ってる。同行して貰いたい。あ、今は屋敷に住んでるのか…だったら…」
「いえ、王子様。お迎えに上がります」
「うむ、そうか、ありがとう。ところでポピーとあれから何か話したか?」
「挨拶程度で特には…と言うか王子様、私は彼女を避けておりました」
「それは?」
「ポピーからの質問に怯えていました。『何故、影武者を知ったの?』と聞かれれば、どう答えるのが正解なのか分からなかったのです」
「そうだな。だから今日は打ち合わせをする必要があってお前を呼んだんだ」
「打ち合わせ…ですか?」
「僕はお前を信用している。シュルケン公爵と違って身分を弁えた行動を取る人物だ。我々に逆らうなんて無茶な事は考えないだろう。だから言うがエミリーは皇室と通じていた。もう言わなくても分かるだろう?」
な、何と⁈…王子の口からあっさり真相を言うとは…。それほど私をコケにしてるのか⁈ 私が刃向かわないとでも思ってるのか⁈
「ポピーにはエミリーから聞いたと言うんだ。但し、皇室のスパイだったとは絶対に言うな。分かったな?」
「はい、かしこまりました」
「うん、それからお前が影武者の事を僕に進言したからこそ、卒業パーティーで婚約破棄する決心がついたと言う話にしよう。もし、聞かれたらな」
「はい」
「まあ、ポピーと面談する目的は、僕の気持ちをはっきりと伝える為だ。彼女は何故自分が選ばれたのか不思議に思ってるだろうからね」
…それから間もなく王子と私はポピーと面談した。やはり彼女は影武者が露呈した経緯や自分が選ばれた理由を聞いてきたが、打ち合わせ通りに話を合わせた。最も、王子の気持ちはあまり理解された様では無かったが。
そして結婚披露宴が迫っていた。私は最後の賭けに出る事にする。
私は屋敷の執務室へ呼ばれた。父は何やら深刻な面持ちだ。
「今日な、宮廷で陛下の謁見を受けてな…」
「処分が下ったのですか?」
「まあ…」
父の話では、
一、貴族院理事長の解任
二、領地の半分没収
三、エリオット王子御成婚の後に引退
と言う厳しいものだった。確か王子はシェリーの貴族院卒業取り消しとポピーの卒業認定、それに公爵家の養女にして改めて結婚する事で罪は不問にすると言ってた筈…。陛下はそれをお認めにならなかったと言う訳か? 納得しかねる。
「仕方ない…あとはお前に任せた。お前は幸い皇室の評判が良い。王子にも信頼されている。どうか落ち込んだシュルケン家を繁栄されてくれ」
「私には荷が重すぎます。それに…」
皇室の陰謀を父に言おうとしたがやめた。まだ推測の段階だ。混乱するだけだろう。
「何かあるのか?」
「いえ、ところでエミリーですが、此処を辞める意思が強い様で…あ、シェリーが寂しがるので」
「ああ、彼女はポピーについて行くらしい」
「は?」
「どう言うやり取りしたのか知らんが、皇室に引っ張られたのだ」
「で、では女官か何かに?」
「そうだろうな…随分と出世した様だ」
これは益々怪しい。私は彼女に尋問しようか迷っていた。聞いたところで諜報員が簡単に口を割るとは思えない。しかし何とかして尻尾を掴みたいのだ。
そう考えるうちに数日が経過し、私は王子から宮廷へ呼ばれてしまった。会いたくはないが探りを入れるチャンスでもある。
「ジャック、明日公爵邸へ行こうと思ってる。同行して貰いたい。あ、今は屋敷に住んでるのか…だったら…」
「いえ、王子様。お迎えに上がります」
「うむ、そうか、ありがとう。ところでポピーとあれから何か話したか?」
「挨拶程度で特には…と言うか王子様、私は彼女を避けておりました」
「それは?」
「ポピーからの質問に怯えていました。『何故、影武者を知ったの?』と聞かれれば、どう答えるのが正解なのか分からなかったのです」
「そうだな。だから今日は打ち合わせをする必要があってお前を呼んだんだ」
「打ち合わせ…ですか?」
「僕はお前を信用している。シュルケン公爵と違って身分を弁えた行動を取る人物だ。我々に逆らうなんて無茶な事は考えないだろう。だから言うがエミリーは皇室と通じていた。もう言わなくても分かるだろう?」
な、何と⁈…王子の口からあっさり真相を言うとは…。それほど私をコケにしてるのか⁈ 私が刃向かわないとでも思ってるのか⁈
「ポピーにはエミリーから聞いたと言うんだ。但し、皇室のスパイだったとは絶対に言うな。分かったな?」
「はい、かしこまりました」
「うん、それからお前が影武者の事を僕に進言したからこそ、卒業パーティーで婚約破棄する決心がついたと言う話にしよう。もし、聞かれたらな」
「はい」
「まあ、ポピーと面談する目的は、僕の気持ちをはっきりと伝える為だ。彼女は何故自分が選ばれたのか不思議に思ってるだろうからね」
…それから間もなく王子と私はポピーと面談した。やはり彼女は影武者が露呈した経緯や自分が選ばれた理由を聞いてきたが、打ち合わせ通りに話を合わせた。最も、王子の気持ちはあまり理解された様では無かったが。
そして結婚披露宴が迫っていた。私は最後の賭けに出る事にする。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる